伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

エヴリブレス

2008-08-07 21:50:49 | 小説
 金融工学を専攻し証券会社での商品開発から研究者への道を歩んだ杏子とその子どもたちの人生を軸に、サイバーワールドで参加者の情報を取り込んで分身が自律的に行動するパラレルワールドを形成する「BRT」の開発に携わった杏子の先輩・知人との過去・現在・未来の関係を語る近未来小説。
 パソコンから携帯、そしてウェアラブルを通じて脳からとサイバーワールドへのアクセスが進み、サイバーワールドの広がりと深まりも進んでいく様子と、それに自然と対応していく子ども世代が描かれ、他方開発者から知っているけど先輩への思いを分身に自律的に展開・変化させられることへの違和感から敢えてアクセス(共鳴)することをやめた杏子が対比的に描かれることでサイバーワールドの進化のあり方を少し考えさせられます。現実世界の時間軸とサイバーワールド内の展開が錯綜し、少し読みにくい。
 ラジオ小説の原作ということもあり、サイバーワールドがいかに進化してもラジオはなくならず旧式の鉱石ラジオがいつまでもシンボルの役割を果たしたり、サイバーワールドでは杏子も先輩もラジオのパーソナリティだったりと、ラジオ局に絡むところだけ近未来じゃなかったりするのがご都合主義的に感じます。
 BRTは参加者のパソコンのデスクトップの情報をスキャンして分身のキャラクター・行動を形作っていくということですが、公共の端末から共鳴してるのに参加者の情報を深めていく様子なのはちょっと不思議でした。


瀬名秀明 TOKYO FM出版 2008年3月25日発行
コメント
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