人類の大半が死滅したアメリカで子どもを連れて飢えや盗賊と闘いながら旅を続ける父親のサバイバルを描いた近未来SF小説。
人類の大半が死滅した原因が核戦争なのか疫病なのか、そういった設定はまったく説明されず、人気のない焼かれた灰の降り積もった街や平原や道路を親子が食料や燃料を求め、見知らぬ人物との遭遇を避けながらさすらう様子が最初からずっと続きます。母親との別離もごくサラッと触れられているだけで、そこに至る経緯はあまり関心なく、とにかくわずかな人類が残された世界での親子2人のサバイバルというシチュエーションを描くこと自体に目的があると感じられる作品です。
ライフラインが崩壊した状態では、飢えと寒さが、とりわけ子連れ旅にはいかに脅威かが描き続けられます。父親の子どもを守る決意、子どもを守るために自分は倒れられないという責任感に貫かれていて、さほど劇的な事件は起こらないのですが、物語に緊張感・緊迫感が持続します。極限的な状況の中での父親と少年のやりとり、少年の心の純真さとやさしさとその摩耗・諦めが、読んでいて切ない。
読んで面白いわけでもなく、ドキドキするストーリー展開もありませんが、子を持つ父親の立場からは、考えさせられるというか、染みる1冊です。
原題:The Road
コーマック・マッカーシー 訳:黒原敏行
早川書房 2008年6月25日発行 (原書は2006年)
人類の大半が死滅した原因が核戦争なのか疫病なのか、そういった設定はまったく説明されず、人気のない焼かれた灰の降り積もった街や平原や道路を親子が食料や燃料を求め、見知らぬ人物との遭遇を避けながらさすらう様子が最初からずっと続きます。母親との別離もごくサラッと触れられているだけで、そこに至る経緯はあまり関心なく、とにかくわずかな人類が残された世界での親子2人のサバイバルというシチュエーションを描くこと自体に目的があると感じられる作品です。
ライフラインが崩壊した状態では、飢えと寒さが、とりわけ子連れ旅にはいかに脅威かが描き続けられます。父親の子どもを守る決意、子どもを守るために自分は倒れられないという責任感に貫かれていて、さほど劇的な事件は起こらないのですが、物語に緊張感・緊迫感が持続します。極限的な状況の中での父親と少年のやりとり、少年の心の純真さとやさしさとその摩耗・諦めが、読んでいて切ない。
読んで面白いわけでもなく、ドキドキするストーリー展開もありませんが、子を持つ父親の立場からは、考えさせられるというか、染みる1冊です。
原題:The Road
コーマック・マッカーシー 訳:黒原敏行
早川書房 2008年6月25日発行 (原書は2006年)