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伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

ユーラシアの双子 上下

2011-06-19 20:42:48 | 小説
 19歳の娘香織に自殺され妻とも離婚して50歳で早期退職した51歳の元システムエンジニア石井隆平が、ウラジオストックからリスボンまでユーラシア大陸の端から端まで列車で旅をするという思いつきを実行するうちに、同じ行程を5日早く進んでいる自殺予定の19歳女性エリカの存在を知り、思い惑いながらその自殺を食い止めるべく試行錯誤する小説。
 パパッ子だった娘が友人との関係から鬱になり、父親との交流を続けていったんは回復しながら、恋人との関係でまた鬱になったあげく父親の不倫を知った後首つり自殺という設定は、同年齢の父親には切ないというより胸を突き刺される思い(あ・あの・・・娘の年齢は違いますし、不倫もしてませんけど)。その設定の巧みさというか、ちょうどターゲットに当たったせいで、隆平の思い、戸惑い、ためらい、後悔が身に染みます。同時に姉の自殺、両親の離婚に翻弄された次女里子の思いと成長にもしんみりとさせられます。
 ストーリーは、エリカの隆平に対する感情の揺れと、シベリア鉄道と各国の交通・通信環境の下でのインターネットと携帯電話を駆使した情報収集と説得とその限界が交錯して展開していきます。
 作者自身がその行程を体験しているとのことで、紀行文としても、特にシベリア鉄道とロシアへの怨嗟の念と各国のアルコール事情が味わえます。


大崎善生 講談社 2010年11月15日発行
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ヴァンパイレーツ9 眠る秘密

2011-06-19 16:21:03 | 物語・ファンタジー・SF
 海賊船(海賊アカデミー側)と吸血海賊船ヴァンパイレーツ(ノクターン号)とそれらに命を救われた双子の兄弟コナーとグレースの運命で展開するファンタジー。
 9巻は原書の4巻を小分けして翻訳した2冊目ですが、最後の中途半端さから考えて原書3巻と同様日本語訳では3分冊にしたみたい。
 日本語版9巻も8巻と同様に、母サリーの霊と共にノクターン号に戻ったグレース、8巻からの新たな登場人物ローラ・ロックウッドら女性ヴァンパイレーツグループの襲撃とシドリオの悪役グループの合流・集結、海賊アカデミーで新たに新造船タイガー号の船長と認定された門出に海賊アカデミーの幹部クオ提督を殺害されて憤ると共に海賊アカデミーから重大な任務を課せられるチェン・リーとその乗組員となったコナーの3グループで話が展開します。9巻の読みどころは、8巻に続きサリーの霊の話でグレースとコナーの両親の過去が明らかにされることと、チェン・リーとコナーが海賊アカデミーからヴァンパイレーツ暗殺の任務を課せられたことからコナーがグレースと行動を共にするノクターン号との敵対に思い悩みチェン・リーとの思惑のずれを生じていくあたりにあります。
 例によって原書1冊を小分けにして数ヶ月おきに出版する販売政策のおかげで読み終わっても中途半端ですっきりしませんから、8月刊行予定の10巻が出てからまとめ読みした方がいいかと思います。


原題:VAMPIRATES:BLACK HEART
ジャスティン・ソンパー 訳:海後礼子
岩崎書店 2011年5月10日発行 (原書は2009年)

8巻は2011年1月23日の記事で紹介しています
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