伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。今年も目標達成!

死刑

2011-06-27 23:36:10 | 人文・社会科学系
 2008年10月~2009年6月に読売新聞に掲載された死刑についての連載をまとめた本。
 執行を命じる法務大臣、執行に立ち会う刑務官、教誨師、死刑囚、弁護人、被害者の遺族、死刑囚の家族、死刑判決を言い渡した裁判官等の死刑に関わる人々の発言が、重みと問題の難しさを感じさせます。
 一般予防効果を期待する死刑存続派の意見と、反省の色を見せない死刑になりたかったという動機の無差別殺人犯の発言の噛み合わなさ加減にはやるせない思いをします。
 死刑事件に関与した弁護士の立場からは、死刑執行に当たってどれだけの検討がなされるのかは強い関心を持ちますが、記録を直接検討するのは局付き検事(若手エリート検事)だけ。それ自体は知っていますが、「裁判に出された証拠の評価は裁判所がすでにやったことだから、改めては行わない。」(66ページ)って。そう言われると、本当に裁判記録全部をきちんと精査してるのか疑問に思えてしまいます。ましてや、ベルトコンベア発言の鳩山法相の下りで「裁判記録のすべてに目を通した」(18ページ)って、誤解を招く記事を書くのはどんなものかと思います。大臣に渡されるのは判決文と説明資料で厚さ5~6cm程度のもの(67~69ページ)。1冊で厚さ10cm程度のものが200~300冊になることも珍しくない死刑事件の裁判記録のほんの一部に過ぎません。それを裁判記録のすべてに目を通したなんて記述は誇大表現もいいところ。


読売新聞社会部 中央公論新社 2009年10月10日発行
コメント
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