イラクで米兵に父と兄を殺されイスラム原理主義者に母と妹と親友を殺されたアブドゥル、父母が死に兄は出稼ぎに出ていなくなりおじに売られたロマの少女ロザリア、父が炭鉱事故で死に母に捨てられ孤児院で持て余されてロシアの軍隊に入隊しトランペットの才能を発揮したが妬まれ先輩にいじめられ共にジャズに打ち込んだ親友たちを激戦地に送られて失ったチェスラブの3人の孤児が、自由の国イギリスに憧れてフランスのカレーにたどり着きイギリスに密入国を図って、密輸業者にこき使われていた少年ヨナも含め4人で嵐のドーバー海峡を漂流するうちに反発し合いながら協力するようになり、何とかイギリスに流れ着いたが・・・というストーリーの小説。
4人の孤児たちの境遇の過酷さ、それも外部の敵のみならず、原理主義者・拝外主義者たちのいびつで卑劣な暴力によって、アブドゥルは母と妹と親友を殺され、ロザリアはレイプされる、そして自由の国と憧れたイギリスでも些細なことで外国人に暴力をふるう連中がいるという具合に、どこにでも卑劣な暴力をふるういやなやつはいるという現実をこれでもかというほど突きつけられます。児童文学でここまでと思うほどの容赦のなさが、今の世界の現実を再認識させてくれます。
過酷な境遇の中で家族を失い、親友を失い、人間への信頼を失った子どもたちが、甘い期待を持たずにそれでも仲間意識を培っていくところに救いと感動を覚えます。
“NO SAFE PLACE”という原題と「きみ、ひとりじゃない」という邦題はほぼ真逆ですが、どちらも成り立ちうるところにこの作品の深さがあるといえるでしょう。
原題:NO SAFE PLACE
デボラ・エリス 訳:森内寿美子
さ・え・ら書房 2011年4月発行 (原書は2010年)
4人の孤児たちの境遇の過酷さ、それも外部の敵のみならず、原理主義者・拝外主義者たちのいびつで卑劣な暴力によって、アブドゥルは母と妹と親友を殺され、ロザリアはレイプされる、そして自由の国と憧れたイギリスでも些細なことで外国人に暴力をふるう連中がいるという具合に、どこにでも卑劣な暴力をふるういやなやつはいるという現実をこれでもかというほど突きつけられます。児童文学でここまでと思うほどの容赦のなさが、今の世界の現実を再認識させてくれます。
過酷な境遇の中で家族を失い、親友を失い、人間への信頼を失った子どもたちが、甘い期待を持たずにそれでも仲間意識を培っていくところに救いと感動を覚えます。
“NO SAFE PLACE”という原題と「きみ、ひとりじゃない」という邦題はほぼ真逆ですが、どちらも成り立ちうるところにこの作品の深さがあるといえるでしょう。
原題:NO SAFE PLACE
デボラ・エリス 訳:森内寿美子
さ・え・ら書房 2011年4月発行 (原書は2010年)