メイン州プレソラ(架空の市のようです)市長であるDV男を父に持ち、高校の時に近隣の廃屋に住み着いたホームレス青年アトラスに恋したが引き離され、大学入学時にボストンに移り勤務先を辞めて花屋を起業することにした23歳のリリー・ブルームが、父の葬儀後に気分転換のために忍び込んだ高級マンションの屋上で偶然出会い一夜の関係を迫ってきたイケメンの脳神経外科医ライル・キンケイドと恋に陥ってという設定で展開する小説。
作者の問題提起が典型的に示されているのは、リリーが元彼のアトラスと再会したことに疑念を持ち嫉妬するライルに対して「そうよ。わたしは昔、アトラスからもらったマグネットをずっと捨てずにいた。彼との出来事を書いた日記も捨てなかった。タトゥーのことも秘密にしていた。そうよね、話すべきだった。自分がまだアトラスを愛していることを、そして死ぬまできっと彼を愛し続けるだろうってことも。なぜなら彼はわたしの人生の大切な一部だから。それをきいたら、きっとあなたは傷つくと思う。でも、だからといって、手をあげていいはずがない。たとえ寝室で、わたしとアトラスがベッドにいるところを見つけたとしても、それがわたしを殴る理由にはならない」(384~385ページ)と言い放つところです。確かに、殴ることを正当化する理由にはならないでしょう。しかし、このリリーの振る舞い、開き直りに共感できるか…作者は読者にその点で踏み絵を迫っているように思えます。
原題:IT ENDS WITH US
コリーン・フーヴァー 訳:相山夏奏
二見書房 2023年4月20日発行(2020年発行のものを改訳・改題、原書は2016年)
作者の問題提起が典型的に示されているのは、リリーが元彼のアトラスと再会したことに疑念を持ち嫉妬するライルに対して「そうよ。わたしは昔、アトラスからもらったマグネットをずっと捨てずにいた。彼との出来事を書いた日記も捨てなかった。タトゥーのことも秘密にしていた。そうよね、話すべきだった。自分がまだアトラスを愛していることを、そして死ぬまできっと彼を愛し続けるだろうってことも。なぜなら彼はわたしの人生の大切な一部だから。それをきいたら、きっとあなたは傷つくと思う。でも、だからといって、手をあげていいはずがない。たとえ寝室で、わたしとアトラスがベッドにいるところを見つけたとしても、それがわたしを殴る理由にはならない」(384~385ページ)と言い放つところです。確かに、殴ることを正当化する理由にはならないでしょう。しかし、このリリーの振る舞い、開き直りに共感できるか…作者は読者にその点で踏み絵を迫っているように思えます。
原題:IT ENDS WITH US
コリーン・フーヴァー 訳:相山夏奏
二見書房 2023年4月20日発行(2020年発行のものを改訳・改題、原書は2016年)