2023年時点のChatGPTをはじめとする文書生成AIの実情と法律実務での使いで、学習系AIが本質的に持つ技術的制約、2023年時点でのChatGPT使用に関する法律問題(個人情報保護、著作権、秘密保護、名誉毀損、使用結果の責任等)、2040年頃のChatGPTの使いでと法律実務、弁護士や企業法務のありようなどを論じた本。
生のChatGPTは基本的にインターネット上の情報を多数読み込んで要求(コマンド、プロンプト)に応じたキーワード検索等で関連する情報を選択して多数派となるそれらしい回答を生成するので、その信用性はネット上の情報の質に依存し、その信頼性に問題があり間違えなくなることは将来的にも期待できず、回答の根拠も明示・説明できず、また一般的な回答しかできないことから、2040年頃を想定しても、リサーチ(情報収集)、アイディア出し、たたき台・ドラフト作成、文書校正、翻訳等には使えるけれども、ChatGPTの回答が間違っていないかのチェックや、当該事案でそれをどう使うか、どうするかの判断はやはり人(弁護士)が行わなければならず、法律実務の支援には用いられる/なしではやっていけなくなる(今どきパソコンやメールなしに法律実務が回らないのと同様に)けれどもChatGPTが弁護士に代替することはできないというのが著者の見通しです。AI活用が支援にとどまるのは「そのAIを利用して実施する業務が自分自身ができること」である場合に限られる、「自分自身ができないこと」をやらせる(能力拡張型の利用)と「AIが間違えれば、弁護士が提供する成果物も間違ったものとなる」(259~262ページ)、どこかで専門知識のある法務担当者の目を入れて確認・検証する必要があり、法務知識のない現場の人たちにAIを利用させて本来法務部門の実施するべき業務を最初から最後までやってもらうということは通常は許容できないリスクを発生させかねないだろう(340~342ページ)という指摘はもっともだと思います。にもかかわらず、ChatGPTの力量を過大評価し、というよりも幻想を持って、ChatGPTを使えば素人が弁護士並みのことができると思い込む人が増えそうなのは頭が痛いところです(弁護士の商売としてもですが、そういう誤解をして敗訴するケースが増えるのは残念です)。
私のようなふつうの弁護士には、自ら生のChatGPTを業務に使うということよりは、弁護士向けにインターネット情報ではなく判例データベースや法律書を学習させたAI製品が普及したところで(判例データベースが普及して価格が下がったような状態に近づいて)リサーチが今より大幅に簡単迅速になるという利益を享受する、弁護士としての仕事はその上での個別事件での事案の個性に応じた主張の組立や証拠検討に集中するという形になっていくというあたりが、今後のChatGPT・AIの影響ということになりそうです。
松尾剛行 弘文堂 2023年8月15日発行
生のChatGPTは基本的にインターネット上の情報を多数読み込んで要求(コマンド、プロンプト)に応じたキーワード検索等で関連する情報を選択して多数派となるそれらしい回答を生成するので、その信用性はネット上の情報の質に依存し、その信頼性に問題があり間違えなくなることは将来的にも期待できず、回答の根拠も明示・説明できず、また一般的な回答しかできないことから、2040年頃を想定しても、リサーチ(情報収集)、アイディア出し、たたき台・ドラフト作成、文書校正、翻訳等には使えるけれども、ChatGPTの回答が間違っていないかのチェックや、当該事案でそれをどう使うか、どうするかの判断はやはり人(弁護士)が行わなければならず、法律実務の支援には用いられる/なしではやっていけなくなる(今どきパソコンやメールなしに法律実務が回らないのと同様に)けれどもChatGPTが弁護士に代替することはできないというのが著者の見通しです。AI活用が支援にとどまるのは「そのAIを利用して実施する業務が自分自身ができること」である場合に限られる、「自分自身ができないこと」をやらせる(能力拡張型の利用)と「AIが間違えれば、弁護士が提供する成果物も間違ったものとなる」(259~262ページ)、どこかで専門知識のある法務担当者の目を入れて確認・検証する必要があり、法務知識のない現場の人たちにAIを利用させて本来法務部門の実施するべき業務を最初から最後までやってもらうということは通常は許容できないリスクを発生させかねないだろう(340~342ページ)という指摘はもっともだと思います。にもかかわらず、ChatGPTの力量を過大評価し、というよりも幻想を持って、ChatGPTを使えば素人が弁護士並みのことができると思い込む人が増えそうなのは頭が痛いところです(弁護士の商売としてもですが、そういう誤解をして敗訴するケースが増えるのは残念です)。
私のようなふつうの弁護士には、自ら生のChatGPTを業務に使うということよりは、弁護士向けにインターネット情報ではなく判例データベースや法律書を学習させたAI製品が普及したところで(判例データベースが普及して価格が下がったような状態に近づいて)リサーチが今より大幅に簡単迅速になるという利益を享受する、弁護士としての仕事はその上での個別事件での事案の個性に応じた主張の組立や証拠検討に集中するという形になっていくというあたりが、今後のChatGPT・AIの影響ということになりそうです。
松尾剛行 弘文堂 2023年8月15日発行