憲法学者の立場から、基本的人権に関わる裁判の事例を採り上げて、論評した本。
採り上げられている判決は著名事件や近年報道されたものが多いので概ね知っているものでしたが、事例の紹介や問題意識が憲法学者の視点だとこうなるのだなという点で勉強になりました。
主張されている権利を認めるべきだ、認めなかった裁判所の姿勢はおかしいと明言するものから、やや及び腰に疑問を呈するものなど程度の差はあれ、大半は権利主張をしている側に同調する見解が示されている中で、剣道受講拒否事件(エホバの証人信者による格闘技拒否:212~221ページ)と退職者の同業他社への就職問題(241~249ページ)については双方の意見を紹介して中立的な姿勢で「考えよう」「なかなか難しい」とし、検索結果削除請求事件(100~111ページ)だけは、権利主張に対して否定的な見解が示されています。それは共著なので執筆担当者の見解の問題なのか、問題の性質によるものなのか。労働者の退職・職業選択の自由と企業の営業の自由、忘れられる権利と検索事業者(Google)で、前者を擁護・支持するのではなく後者に忖度するというのでは憲法学者としてはどうよという気がしますが。
棟居快行、松井茂記、赤坂正浩、笹田栄司、常本照樹、市川正人
有斐閣選書 2024年1月30日発行(初版は1997年3月10日)
採り上げられている判決は著名事件や近年報道されたものが多いので概ね知っているものでしたが、事例の紹介や問題意識が憲法学者の視点だとこうなるのだなという点で勉強になりました。
主張されている権利を認めるべきだ、認めなかった裁判所の姿勢はおかしいと明言するものから、やや及び腰に疑問を呈するものなど程度の差はあれ、大半は権利主張をしている側に同調する見解が示されている中で、剣道受講拒否事件(エホバの証人信者による格闘技拒否:212~221ページ)と退職者の同業他社への就職問題(241~249ページ)については双方の意見を紹介して中立的な姿勢で「考えよう」「なかなか難しい」とし、検索結果削除請求事件(100~111ページ)だけは、権利主張に対して否定的な見解が示されています。それは共著なので執筆担当者の見解の問題なのか、問題の性質によるものなのか。労働者の退職・職業選択の自由と企業の営業の自由、忘れられる権利と検索事業者(Google)で、前者を擁護・支持するのではなく後者に忖度するというのでは憲法学者としてはどうよという気がしますが。
棟居快行、松井茂記、赤坂正浩、笹田栄司、常本照樹、市川正人
有斐閣選書 2024年1月30日発行(初版は1997年3月10日)
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