伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

粒子線治療がしっかりわかる本

2023-11-23 21:56:32 | 自然科学・工学系
 癌の放射線治療のうち電磁波(X線)以外の粒子線による治療、現実には、陽子線(水素原子核)治療、重粒子線(炭素原子核)治療、ホウ素中性子捕捉療法について説明し、積極的利用を促す本。
 粒子線治療は精度の高い照射により癌を根治する一方で周囲の正常細胞に影響を与えず臓器を維持でき体への負担も少ないとされますが、癌が局所的で遠隔転移がない場合に行われ、その場合は手術の方が癌の制御の点で有効性が高いため、結局は癌が局所的で遠隔転移がなく手術が困難な場合か術後に取り残した癌の治療に利用され、保険適用がそのような場合や一部の癌に限定されているということのようです。消化管が放射線感受性が高いため腹部等での実施は慎重に行う必要があるようでもあります(66~67ページ)。
 保険が適用されない場合は、先進医療となる場合で「300万円前後」とさらっと書かれています(19ページ)。先進医療にもならない場合はさらにかかるということです。106ページから、日本で粒子線治療が受けられる26施設の紹介があり、各施設ごとに治療実績と治療費について書かれています(書いていない施設もあります)が、やはり先進医療の適用がある場合に300万円前後の数字が書かれています。治療実績が書かれている施設では、それぞれの施設により違いはありますが、前立腺癌が多くを占めている傾向にあります。前立腺癌では「限局性、及び局所進行性前立腺がんへの根治照射」に保険が適用される(72~75ページ)ことからでしょう。
 この治療に従事している人が積極利用を呼びかけたいという気持ちはわかりますが、現状では進行が遅く死亡率も低い前立腺癌で威力を発揮しているというのでは、そう言われてもねえと思ってしまいます。いくら癌だと言われても保険適用されなければ300万円以上と言われては庶民には手も届きません。保険の方、なんとかしてもらえないと…


公益社団法人日本放射線腫瘍学会広報委員会/粒子線治療委員会編著 法研 2023年9月26日発行


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