大学時代に薫陶を受けた文化人類学者の河島から、パリのデパートが販促用に作成して配布した1888年版のダイアリーと広告ページからなる Vincent van Gogh という署名のある家計簿にぎっしりと手書きでなされた書き込みの翻訳を依頼された小椋弥也が、河島から送られてくる大部の「送り状」の解説を読みつつ、その家計簿の出自を調査し、真相を追うというミステリー仕立ての小説。
当初は、なされている書き込みを翻訳しながら時代の背景や書き込み者の状況を推理判断していくものと思いながら読みましたが、いつまで経ってもそちらには行かず、その点が予想外でした。
長々しく続く河島の語りでゴッホに関する蘊蓄、当時の時代背景、美術や製本等に関する技術が語られ、そこが楽しめるかが、この作品をどう評価するかの大きなポイントになると思います。
登場する関係者が、出てくる端から実は小椋や河島の親族・知人とわかっていくという展開が、とても異様というか都合良すぎという印象を持ちます。最終的にはそれもある種の必然かと思えるようになりますけれど。
長野まゆみ 講談社 2022年11月22日発行
「群像」連載
当初は、なされている書き込みを翻訳しながら時代の背景や書き込み者の状況を推理判断していくものと思いながら読みましたが、いつまで経ってもそちらには行かず、その点が予想外でした。
長々しく続く河島の語りでゴッホに関する蘊蓄、当時の時代背景、美術や製本等に関する技術が語られ、そこが楽しめるかが、この作品をどう評価するかの大きなポイントになると思います。
登場する関係者が、出てくる端から実は小椋や河島の親族・知人とわかっていくという展開が、とても異様というか都合良すぎという印象を持ちます。最終的にはそれもある種の必然かと思えるようになりますけれど。
長野まゆみ 講談社 2022年11月22日発行
「群像」連載
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