伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年に続き2023年も目標達成!

借地借家法の適用の有無と土地・建物の明渡しをめぐる100の重要裁判例

2022-07-25 21:48:09 | 実用書・ビジネス書
 タイトルどおり、土地・建物の賃貸借契約の成立とその契約関係に借地借家法の適用(主として契約期間の認定と期間満了時の更新拒絶に正当事由が必要か)があるか、明渡請求が認められるかに関する裁判例の傾向を論じ、関連する100の裁判例を挙げて解説した本。
 土地について、借地借家法の適用の要件となる「建物所有目的」の成否、建物所有目的であっても対象外となる「一時使用目的」の成否、更新がない「定期借地権」成立の認定、賃貸借でなく使用貸借である(無償利用)場合にその明渡を左右する「目的」と「使用及び収益をするのに足りる期間」をどう考えるか、建物について、借家法の適用の前提となる「建物」賃借と言えるか、土地同様に「一時使用目的」「定期借家権」が認められるか、使用貸借の場合の「使用及び収益をするのに足りる期間」、賃貸借でない契約形式を取った場合の評価、駐車場の賃貸を特に建物利用との関係でどう評価するか、明渡請求が権利濫用とされる場合に分けて、裁判例が整理されており、まとめて読むといろいろと勉強になります。裁判所の判断が、契約書の文言、規定をどの程度重視しているか、契約・貸借に至る経緯、客観的な利用状況、明渡しをめぐる双方の利害状況をどの程度考慮し重視しているかは、ケースにより微妙です。私の専門の労働法の分野ほどではありませんが、この分野でも裁判所が他の分野ではかなり重視する契約書の文言にとらわれずに当事者の真意や利用関係の実態等を重視する判断をしている場合が少なくないことがわかります。
 掲載されている裁判例は、著者の好みで選択しているものですので、各章冒頭で認めているものが多い少ないと説明しているのはあまり意味がないと思います。また事案の概要の説明がこなれていないというのか一読してストンと頭に入りにくく、誤植と思われるところも目につきます。
 裁判業界関係者以外には読みこなすのはしんどいかとは思いますが、多数の裁判例がまとめて読める点で、弁護士としては、主張立証の組立を検討するときのアイディアを拡げるのに役立つ本だと思います。


宮崎裕二 プログレス 2022年5月31日発行
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