使用者側で労務屋として労働組合と対峙してきた著者が、その立場から労働組合法の規定、解釈、判例などを解説した本。
法律の解説書としては読みやすい文章であり、また紹介されている判例等もオーソドックスなものです。
使用者(会社)側には組合嫌いになるな、健全な労働組合の存在はむしろ会社のためになると教え諭す論調の部分が多く見られますが、それは労働組合が会社の言いなりになって労働協約や労使協定を締結すれば会社は好き放題に労働条件を切り下げられる(御用組合はむしろ労働者の敵)ということが背景にあることを、労働者側としては見逃してはなりません。闘う労働組合に対しては、著者は「労働組合の側にも、誠実交渉義務があってもよい」(137ページ)とか、自分の聞くところでは「ストライキを実施したことで会社が競合他社にシェアを奪われる等、労使ともに得るものが全く無かったどころか失ったものが多かった」(173ページ)とか、「ストライキを行うものですから、取引先からは納期や品質に関する不安から発注を手控えるところが増えて、当然会社の業績は悪化していきます。そのうちに組合指導部に反対する者のなかから、『毎日まじめに仕事がしたい。夏季の一時金のときには夏季の一時金が世間並みに支給されるような普通の生活をしたい』という意見が出始めて来たのです」(179ページ)などの否定的見解を示しています。
初版に比べ、憲法的な視点を入れるなど、労働組合側の権利を強調する場面も増えているように見受けられますが、それが著者のバランス感から見て労働組合側の弱体化が進みすぎていることに起因するのだとすれば、使用者側にそこまで見くびられないよう、労働組合側が一層奮起すべきものと考えます。
※初版について2017年11月5日付で書いた記事を読んで「酷評」をいただいたと感じた著者から改訂版の献本を受けました。初版は今手許にない(改めて借りてきて比較検討するまでする気力は無い)ので違いを論ずることはできませんが、前の記事でなぜ紹介しないのかと書いた日本鋼管事件最高裁判決は紹介され(86ページでは判決日の記載を間違えていますが)、挑発的な印象があった記述が丸くなったり、労働組合の権利性を強調する記述が増えた印象はあります。しかし、著者の基本的なスタンスが変わったということではないと感じます。それはある意味で当然のことですが。
小西義博 公益財団法人日本生産性本部生産性労働情報センター 2023年9月15日発行(初版は2017年5月31日)
法律の解説書としては読みやすい文章であり、また紹介されている判例等もオーソドックスなものです。
使用者(会社)側には組合嫌いになるな、健全な労働組合の存在はむしろ会社のためになると教え諭す論調の部分が多く見られますが、それは労働組合が会社の言いなりになって労働協約や労使協定を締結すれば会社は好き放題に労働条件を切り下げられる(御用組合はむしろ労働者の敵)ということが背景にあることを、労働者側としては見逃してはなりません。闘う労働組合に対しては、著者は「労働組合の側にも、誠実交渉義務があってもよい」(137ページ)とか、自分の聞くところでは「ストライキを実施したことで会社が競合他社にシェアを奪われる等、労使ともに得るものが全く無かったどころか失ったものが多かった」(173ページ)とか、「ストライキを行うものですから、取引先からは納期や品質に関する不安から発注を手控えるところが増えて、当然会社の業績は悪化していきます。そのうちに組合指導部に反対する者のなかから、『毎日まじめに仕事がしたい。夏季の一時金のときには夏季の一時金が世間並みに支給されるような普通の生活をしたい』という意見が出始めて来たのです」(179ページ)などの否定的見解を示しています。
初版に比べ、憲法的な視点を入れるなど、労働組合側の権利を強調する場面も増えているように見受けられますが、それが著者のバランス感から見て労働組合側の弱体化が進みすぎていることに起因するのだとすれば、使用者側にそこまで見くびられないよう、労働組合側が一層奮起すべきものと考えます。
※初版について2017年11月5日付で書いた記事を読んで「酷評」をいただいたと感じた著者から改訂版の献本を受けました。初版は今手許にない(改めて借りてきて比較検討するまでする気力は無い)ので違いを論ずることはできませんが、前の記事でなぜ紹介しないのかと書いた日本鋼管事件最高裁判決は紹介され(86ページでは判決日の記載を間違えていますが)、挑発的な印象があった記述が丸くなったり、労働組合の権利性を強調する記述が増えた印象はあります。しかし、著者の基本的なスタンスが変わったということではないと感じます。それはある意味で当然のことですが。
小西義博 公益財団法人日本生産性本部生産性労働情報センター 2023年9月15日発行(初版は2017年5月31日)
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