伊東良徳の超乱読読書日記

雑食・雑読宣言:専門書からHな小説まで、手当たり次第。目標は年間300冊。2022年から3年連続目標達成!

マンション管理法律相談201問 弁護士が答えるマンション管理会社・管理組合からの質問

2024-05-07 22:06:51 | 実用書・ビジネス書
 マンション管理を専門的に扱っている弁護士が、マンション管理会社、管理組合からよく受ける相談について、区分所有法、標準管理規約、裁判例や過去の経験等に照らした回答を示した本。
 「はしがき」で、「マンション管理問題に5名以上もの弁護士で組織的に対応している事務所はおそらく日本初ではないかと自負しています」「弊所には少なくとも月間100件以上、累計で数千件の相談件数が集積されています。その中で繰り返し問われる問題や、学ぶところの多い問題を厳選し、201問にまとめています」と書かれています。本を書くのになかなかここまでの自信は示せないものですが、さすがに実務的な相談事例が少なからずあり、弁護士にとっては読みでがあります。サブタイトルにもあるように、またマンション問題を専門的に取り扱う(それで食っていく)ためには顧客は当然に管理会社が第1、次いで管理組合で、個人である区分所有者(マンションの各戸のオーナー)は相手方というか敵という視点が強く、相談を受ける場合は区分所有者側ばかりの私には、そこまで言う?と思う場面も少なからずありましたが。まぁマンションでの紛争では、裁判所も管理組合側に理解を示す傾向が強いので、裁判になったときの説明として間違ってはいないと思いますが。
 区分所有者と管理組合の関係が続く第8章までは、基本、管理組合側の視線で書かれているのが、管理会社が当事者として出てくる第9章になると俄然管理会社側の姿勢が顕著になります(むしろ管理会社に刃向かう管理組合はけしからんという論調)。第9章は「管理会社の問題」という表題ですが、管理会社に問題があるという視点ではなく、管理会社にとっての問題、管理会社が遭遇する問題というべきでしょう。


香川希理編著 日本加除出版 2024年2月21日発行

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日本のコミュニケーションを診る 遠慮・建前・気疲れ社会

2024-05-06 22:23:47 | 人文・社会科学系
 イタリア人精神科医の著者が日本社会のコミュニケーションの特徴やその背景について論じた本。
 外国人の立場で日本社会・文化の西洋諸国との違いを論じるよくある類いの本です。その手の本は、基本的に著者が外国人であることを基礎として著者が育ってきた西欧社会ではというものの見方を売りにするはずですが、この本では核心をなす日本社会の特徴に関する記述の多くが、誰々の研究によれば…という自分以外の権威をベースに、しかも折々にステレオタイプの2分論に与するものではないがという趣旨のエクスキューズを置きながら、自分もこう思うというような書き方をしています。類書とは違うということを示したいとか、読者への忖度で自分は単純に決めつけるわけではないという姿勢を示したいとかの思惑があるのでしょうけど、私にはただペダンティックな文章が頭に入りにくく、また中途半端な印象が残りました。
 一番最後によりよいコミュニケーションのための五つのモットーとして、①他者に嫌われてもいい、②人に落ち込んでいる姿を見せてもいい、③自分の意見を言ってみよう、④目上の相手でも断っていい、⑤自分のユニークさに自信を持って、自分を苦しませない行動をとってみようを列挙しています(188~191ページ)。他人の研究等に依拠した(あるいは権威を借りた)文化論よりは、精神科医としての著者の経験をベースに日本の患者・若者の生きづらさを考察してそういった提言に結びつけた方がより実りのある説得的な本になったのではないかと、私は感じました。


パントー・フランチェスコ 光文社新書 2023年9月30日発行
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ルポ歌舞伎町の路上売春 それでも「立ちんぼ」を続ける彼女たち

2024-05-05 20:08:19 | ノンフィクション
 毎日新聞社会部記者の著者が歌舞伎町の路上売春に興味を持ち、路上売春者の支援活動をするNPOの相談室を訪れた者らに取材を続けて書いたノンフィクション。
 登場し紹介されている売春者の行き場のなさにまず胸が痛みます。虐待の連鎖みたいな話でなくても、なにか受け止められる場がないものかと思います(ふと、昔はやった麻丘めぐみの「芽ばえ」を思い起こし、日本社会は昔からそういう危うさを孕んでいたのかと思ってしまいました)。
 掛けでホストクラブに通わせて多額の料金請求をして払えなくなると売春を勧めるホストなど、若い女性を食い物にする連中に対する怒りをかき立てられます。ホストや、売春者の弱みにつけ込む買春客などもまた、さまざまに追いつめられた被害者である(より弱い者にさらにしわ寄せしている)という側面もあるとは思いますが。
 そういった構造を捉えて悲しみがなくなる/減るように社会をよくしていきたいという考えが摩耗してあまり語られなくなる(この本もそういった大きな話はなし)中、ボランティアで支援活動を続ける人たちの姿にはただ頭が下がります。


春増翔太 ちくま新書 2023年11月10日発行
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愛され続ける会社から学ぶ応援ブランディング

2024-05-04 07:17:54 | 実用書・ビジネス書
 中小企業や小規模な会社が応援されるブランドを作るための考え方、手法を説明した本。
 著者はブランドづくりの第1歩は、外部には見せない経営戦略としてのミッション(使命:なぜそのビジネスをしているのか)、ビジョン(目標:ミッション実現のために何を目指すのか)、バリュー(価値観:どのようにすればミッションの実現やビジョンに到達するのか)の決定だとしています。そして第2段階では環境や自社の強み・弱み、競合、ターゲットとすべき顧客層などを分析した上でで、顧客からの期待と自社ができることと自社がやりたいことを明確にし、お客さまに約束すること(ブランド・プロミス)を決定し、その上でマーケティング戦略、顧客との接点の設定などを考えていくとされています。
 企業向けの戦略を個人自営業者が応用するのは難しいですが、私の場合、それを考えると、
ミッション:庶民/弱者が正当な権利を実現し紛争を満足に解決すること
ビジョン:自分が対応可能な範囲で庶民/弱者の事件を安定して受任する態勢
バリュー:誠実な仕事とフェアな訴訟対応
ブランド・プロミス:庶民の側で仕事をする(弱い者いじめの事件は受任しない、原則として企業の事業のための事件は受任しない)
といったところでしょうか。
サイトで「私のセールスポイント(伊東を選ぶ5つのメリット)」を公開しています (^^;)


渡部直樹 同文舘出版 2024年2月22日発行
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画材で印象を変える キャラクターイラストの描き方

2024-05-03 21:04:14 | 趣味の本・暇つぶし本
 2つの画材の組み合わせ6種(水彩色鉛筆・水性マーカー、アルコールマーカー・色鉛筆、ボールペン・万年筆インク、鉛筆・不透明水彩、透明水彩・筆ペン、アクリルガッシュ・パステル)を用いた美少女イラストの作例6つの作成(主として着色)過程を詳細に解説し、画材の特性等について論じた本。
 それぞれのパーツごとに効果を与える技法を解説してくれているのですが、かなり手先が器用で丁寧な仕事ができ、工程の順序をきちんと計画する能力とアイディア・センスがないとマネできないなぁということを実感します。単純にプロの仕事に感心する本で、これを読んだから自分も描いてみようとは思えない本だと思います。
 画材の説明で、水彩系のプロの解説でふつうに出てくるマスキング液の話がまったく出てこないのでハイライト(一番明るいところ:たいていの水彩画の技法解説ではマスキング液を塗ってその上から別の色を塗り、乾いたあとに剥がすことで白のまま残すように書かれています)どうするのかと思っていたら、別の色を塗った上に白絵の具を載せるって。プロの技法はやはり一様ではないのだと再認識しました。


古島紺 グラフィック社 2024年3月25日発行
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アメリカから見た3・11 日米両政府中枢の証言から

2024-05-02 23:30:00 | ノンフィクション
 福島原発事故直後の数日間の日本政府の内情と混乱、アメリカ政府の対応と困惑ぶりを事故後12年を経てNHK記者である著者が関係者にインタビューした本。
 アメリカから見たというタイトルながら、アメリカ側の見方等の話は3割くらいで、日本の官邸でのやりとりが中心のおおかたこれまでに聞いたことが再確認されている本という印象を持ちました。
 事故後12年を経てこそようやく明らかにできる真実、なんてことならいいのですが、むしろ12年経ってもなお現在の政権や当時の政権関係者の立場を気遣い忖度した発言に終始するのだなと感じました。
 私には、アメリカ政府の方よりも、3月15日未明に撤退を口にしていた東電に菅首相らが乗り込んで撤退はあり得ないと演説した後、小部屋で菅首相が東電の勝俣副社長に改めて「絶対に撤退はない。何が何でもやってくれ」と言ったところ、勝俣副社長は「はい。子会社にやらせます」と答えたと同行していた寺田首相補佐官が証言した(140~141ページ)というのが興味深く思えました。


増田剛 論創社 2024年2月20日発行
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魅せる!ふるさと納税 返礼品でPRせよ

2024-05-01 22:17:08 | 実用書・ビジネス書
 自社の商品をふるさと納税の返礼品に登録することで商品の認知度を労せずに高め利益を上げようと勧める経営者向けのビジネス書。
 著者自身が鉄筋コンクリート製の防災シェルターを開発したが高額商品であり認知度も低くまったく売れなかったが、自治体職員からふるさと納税の返礼品にしてみたらどうかを声をかけられて1億円の納税の返礼品として登録したら、マスコミが飛びついて話題にし、実際に成約したという成功体験を基にした本です。要は、商品を売りたい/PRしたい事業者と、税金を集める材料探しに苦心する自治体、世間の目を引く話題に飢えているマスコミの利害が一致して、売れなかった商品が売れた、これをビジネスにしない手はないというものです。
 何ごとも初期には他人が思いつかないところで成功することがあっても、競合がいない一人勝ちのブルーオーシャンは長く続かず、すぐに激しい競争が行われるレッドオーシャンになってしまうものですから、この本を読んで思い立った経営者がうまく行くかは、お手並み拝見というところでしょうけれども。


川口篤史 みらいパブリッシング 2024年2月27日発行
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