実に久しぶりピアノ連弾によるブラームスの「ハンガリー舞曲集」を聴いている。1981年の録音だから多分その2~3年後に購入したものだと思う。購入した当時にたぶん1~2回位しか聞いていない。
この当時は管弦楽曲に親しんでいたから、このCDを購入した時の心境はわからない。ブラームス自身がオーケストレーションしたのは第1、第3、第10番だけである。有名な第5番も他の作曲家の編曲とのことである。
第1巻・第2巻の前半10曲は1869年ブラームス36歳の時に出版され、後半の11曲1880年47歳の時に出版となっている。
またヨーゼフ・ヨアヒムがバイオリンとピアノの二重奏曲に仕立て上げたものを友人のCDで聞いたような気がするが、詳しいことはまったく記憶にない。できればこのバイオリン版を手に入れたいと思っている。
1869年はブラームスはあまり曲を作っておらず、1880年は極めて充実した作曲活動をしている最中である。しかし曲は後半の11曲は渋さゆえに前半の曲ほど演奏される機会はあまりないとのことである。
オーケストレーションされた曲はブラームスの曲も含めて煌びやかである。テンポは軽快で激しい舞曲のイメージとともに、都会生活の喧騒も含めて明るい側面を私は想像してしまう。しかしジプシーの生活、異郷の都会の底辺の生活者の音楽という私が勝手に作り上げたイメージにはこのピアノ連弾という出版当時の演奏形態が似つかわしい。
大編成のオーケストラ曲のイメージでこのCDを聴くと、どちらかという内に籠った情念のようなものを感じる。特に第11番などはこんな秋の雨の夜にふさわしい内省的な曲である。もっとも次の第12曲は一転して無窮動のような激しいうねりから明るい曲調になるなど変化も楽しめる。第11、14、16曲は完全にブラームスの創作によるとのことである。確かにブラームス好きはこの3曲を聴くとホッとするかもしれない。後期の11番から21番がこの曲集のもっとも変化にとんだ聴きどころだと思う。17番、20番などはブラームスの編曲と云われているがこれなどは哀歌の雰囲気もある出だしである。
一音一音が確実に響いてくる丁寧な演奏に思われるラベック姉妹の演奏は、私には好ましい演奏に思える。ただし他の演奏者の演奏を聞いたことがないので、あくまでも私の思い込みでしかないかもしれない。