Fsの独り言・つぶやき

1951年生。2012年3月定年、仕事を退く。俳句、写真、美術館巡り、クラシック音楽等自由気儘に綴る。労組退職者会役員。

「一つのメルヘン」(中原中也)

2019年06月04日 23時29分11秒 | 俳句・短歌・詩等関連
 夜になってふと、こんな詩を思い出した。全部は覚えていないので、詩集をひも解いてみた。

  一つのメルヘン      中原中也

秋の夜は、はるかの彼方に、
小石ばかりの、河原があつて
それに陽は、さらさらと
さらさらと射してゐるのでありました。

陽といつても、まるで珪石か何かのやうで、
非常な個体の粉末のやうで、
さればこそ、さらさらと
かすかな音を立ててもゐるのでした。

さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
淡い、それてゐてくつきりとした
影を落としてゐるのでした。

やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、
今迄流れてもゐなかつた川床に、水は
さらさらと、さらさらと流れてゐるのでありました‥‥‥



 「さらさらと、さらさらと」の繰り返しのリズム、各連の末尾に出てくる「ゐるので」という韻を踏むような余韻、小石→陽、珪石→陽、蝶→影という三つの繰り返し、蝶の出現と音の喪失、蝶が消えて音が復活‥単純なようでいて複雑な光と音の繰り返し、こんな構造が不思議とすらすらと、それこそさらさらと繋がっていく。
 起承転結のはっきりした4つの連ではあるものの、どこかで永遠に繰り返し続いていく雰囲気も漂う。

 私はこの不思議な詩が中学生の頃以来、頭から離れない。


タチアオイ(立葵)

2019年06月04日 20時54分41秒 | 俳句・短歌・詩等関連


 横浜の大通公園は毎年タチアオイが見事に咲く。今年もたくさん咲いている。
 タチアオイはトルコ原産種と東ヨーロッパ原産種との雑種といわれる。日本では胃腸薬・利尿剤として渡来したといわれる。
 草丈は1~3mで茎は直立する。花期は6~8月、花は垂直の茎の下から上に咲き上る。梅雨入りの頃に咲き始め、梅雨明けと共に花期が終了するので「ツユアオイ(梅雨葵)」ともいう。花は八重もある。色は赤、ピンク、白、紫、黄など多彩。花の直径は大きなものでは10cmほど。宿根性の多年草。

★立葵いま少年の姿して    岩田由美
★立葵天香具山隠しけり    八木林之助


 第1句、立葵が幻視なのか、少年が幻視なのか、不意に少年のはつらつとした汗の匂いを完治したのであろう。目の前を過ぎった少年なのかもしれない。それが生気溢れる立葵のように感じたのか、或いはすぐ傍の立葵の前を通過したのだろうか。少年が作者にとってどのような存在なのかまで想像を膨らましてしまいたくなるような、夏の風景である。
 第2句、何の変哲もないーく、面白味のない句かもしれない。だが高く咲いている立葵が天香具山を隠すほどに勢いよく咲いたのであろう。その高さにあらためて感動した句として、私には新鮮に思えた。

蜥蜴(とかげ)

2019年06月04日 18時08分31秒 | 俳句・短歌・詩等関連
 蒸し暑い、というほどではなが、それなりに湿度が高いと感じる空気。例年の梅雨の時期の鬱陶しさはまだ感じない。湿度は昼前で50%となっている。

 いつものとおり外に出たのだが、左足の第4指にマメが出来たようで歩くと痛い。マメをつぶさないと歩けない。夜に自分で治療してみることにした。

 朝出かけるときに団地の中でトカゲを観た。道路の真ん中で止まっていた。初めはわからなかった。スマホのカメラで撮影しようとしたが、茂みの中に逃げられた。

★走り来て波打つ腹や瑠璃蜥蜴      早川暢雪
★白亜紀を恋ふる貌して蜥蜴かな     徳田秀昭


 まだ少し休養が必要かもしれない。