★地ずり萩紆余曲折は口にせず 林 香稟
★白萩の一叢号泣の代り 恩田侑布子
萩の花というと、乱れる・こぼれる・露・風の連想が圧倒的である。「乱れる」から艶のある句にしたりと連想が固定してしまう。そこから自由な句が欲しいと思ってもなかなか見つからない。
そんなことを考えながら二つの句を選んでみた。いい句なのか、というと自信はない。
第1句、地ずり萩、というのは地面まで垂れ下がった萩なのだろう。現実過程での紆余曲折、苦労は云わぬがいい。相手に恩着せがましいから。その紆余曲折は地面を這いずり回るような苦労だったのであろう。地面を撫でるようでは花も可哀そうかもしれないが、それが逆に美しさを際立たせるものであると納得すれば、いいのである。
第2句、「号泣」とは萩のイメージからは対極にある激しい感情ではないか。萩はつつましやかで、派手ではない。強く、大きな存在感のある花ではない。号泣したい強い感情を一束の萩に閉じ込めて抱えてみたのであろうか。誰かに渡したのであろうか。それもひときわ清楚な白萩である。激しい恋の気分であろうか。
萩があちこちで咲き始めました。