雨の合間に出かけていつもの喫茶店で読書タイムとコーヒータイム。横浜駅は年金支給日ということらしく、銀行ではATМコーナーの前に長い列が出来ていた。関係のない私は素通り。夕方からは本降り、その中をバスにて帰宅。
久しぶりに古井由吉の晩年の短編集「この道」を開いた。本日は二つ目の「その日のうちに」を読み終え、「野の末」を読み始めた。
少しずつ難解な文章に馴れてきている。短編集というよりも、死を巡る断章、死の影を引きずった病や老いとの親和性、というのがあたっているような連作短編に思える。
「いよいよ老耄のおとづれか。老耄というのは、時間にせよ空間にせよすべての差異が、隔たったものがたやすく融合する、そんな境に入ることではないのか。まわりの者はそれを不気味な分裂と見て驚き、怖れさえするが、本人にとっては平明な実相であり、ただ人に伝えるすべもない。」(その日のうちに)
「人の生涯は所詮、死者から死者へのつらなりの、その先端にしばしあるだけのことであり、域ながら年々その列へ組みこまれているのではないか、‥。」(野の末)