「たかくらかずき展「有無ヴェルト」」を見てきた。
会期:2017.7.11(火)-8.4(金)、時間:11:00a.m.-7:00p.m.、日曜・祝日休館 入場無料、
会場:東京・銀座ギャラリーガーディアン・ガーデン。
公募展入選者の中から各界で活躍する作家のその後を伝える展覧会「The Second Stage at GG」シリーズの第45回目として、たかくらかずき展『有無ヴェルト』が開催されている。
私にはまったく接点のないゲームの世界のドット絵ということで、恐る恐る古い友人と一緒に覗いてみた。
描かれているものの精緻さと、そして現実の遠近感の不思議な放棄と再構築、そして原色の溢れるような配置に目が眩むのだが、思った以上に引き込まれて見入っていた。遠近感は非常に詰まっている。例えば奥行き1メートルのものの感覚が1センチの縮尺に押し込めたような感覚になる。また交差する図柄によってかろうじて遠近感が出ているもののどこかで破たんしているところもあり、一筋縄では全体を追うことはできないし、それを求めてもいないようだ。
素材は意外と仏教的なもので、それをパソコンの世界の中で再構成している。今回の展示では曼荼羅図や興福寺の阿修羅像などが使われている。また風神雷神図なども思い浮かべてしまう作品もある。拡大していくとドット絵らしくピントはあったまま点の集合となる。また、虫や動物、植物などを繰り返し使い、複雑な絡み合いと単純な繰り返しのようでいて少しずつ変化してやまない。この変化がある意味個性なのであろうと推察した。
バーチャル空間の作品もあるが、これは視力が衰えている私はあえて鑑賞は拒否をした。それは生理的に受け付けないし、三半規管が悲鳴を上げる。ここまではついて行けない。
いくつかの作品は、見る角度で動いていくのであるが、現実の世界では動かないビルなどを「動かし」て、現実には動く動物などを「固定」するという仕掛けなどもある。それがどのような意味づけなのか、なかなか理解できなかった。
さらに個別の平面作品は、画面のどこの場所をとっても全体の中で等価に配置されている。これが私などにはまた目がまわってしまう仕掛けなのでもある。パソコンの中の世界では主題と副主題、中心と周辺、主と従の区別の境界は喪失して、どこをとっても等価であり、時間という軸を挿入してもそれに変化がない。色の配置も含めて構成は対称性が強い理由はそこにありそうだ。
私のこれまでの体験でこだわってきた「この世界を作り上げるときの作者の思いは、果たして世界の先端のどこに位置を占めようとしているのか、そのような自覚が有効なのか、無効と理解されているのか、そして世界の先端に位置することと、普遍性ということの折り合いをどこでつけようとしているのか」という視点はもはや有効ではないのか、という思いも湧いてきた。そういった意味では、なかなか理解が難しいと思った。
個としてのこだわりが、作品として自立して独り歩きしていくための、普遍性との兼ね合い、言い換えれば世界との折り合いのつけ方の葛藤が、作品からどのように読み取れるかが、これまでの「芸術」の課題であった。そのことに自覚的であるか、もうひとつ聞いてみたかったことであった。またの機会に譲ってみよう。
いろいろと考えさせてもらった展示であった。
なお、解説と本人の言が以下のように記されている。
★たかくらかずきはドット絵を用いた平面作品で第7回グラフィック「1_WALL」のファイナリストに選出されました。その後も画像を構成する最小単位である「ピクセル」をテーマに、イラストレーター、アーティストとして多岐に渡る作品を発表し、2016年「スタジオ常世」を設立、ゲーム開発をスタート、2017年には演劇の脚本を手掛けるなど、近年ますます表現の場を広げています。
本展では、ドット絵や絵文字といったデジタル表現を使いながら、見る角度によって絵柄が変化するレンチキュラー作品や、バーチャルリアリティ(VR)作品を中心に展示します。
人間の知覚を問うことに焦点を当てた本展では、鑑賞者の位置により見えるものが変化するVRやレンチキュラーと、その作品に動かされる鑑賞者を、別の鑑賞者が見るという二重の構造をつくり、作品と向き合う身体を再認識させます。
ヘッドマウントディスプレイを装着して360°の映像を見るVR作品では、メディアアーティストのゴッドスコーピオンとコラボレーションし、「視点」をテーマにした作品を制作しました。VR作品を体験している鑑賞者が見ている画面はプロジェクションされ、見ることが見せることになる状況がライブで展開します。
★【umwelt(ウムヴェルト)=環世界
すべての生物は種特有の知覚世界をもって生きており、
その主体として行動している。】
増やすことは 正しいことですか?
作ることは 正しいですか?
死んだ後もやっぱり つなげてゆきたいですか?
消えたくないですか
あなたは気づいてしまっている ここが虚無であることに
き01001011010010でしょう?
この虚無を乗り越えるためには
誰よりも早く広がるか
とどまって積み重なるしかない
あとひとつ、方法があるけど
いまはまだ、10010ね。
ここからが本番です
あなたの名前は100101011
立派な0100000100000000001001001なんですから
【今見ているものは、なにか?】
たかくらかずき