鹿児島の自然と食

鹿児島の豊かな自然(風景、植物等)、食べ物、史跡を紹介します。

歌の背景

2010-05-28 | エッセイ
赤い靴
♪赤い靴はいてた 女の子 
 異人さんに つれられて 行っちゃった

何となく謎めいて、ちょっと怖い歌である。
この歌は、実話に基づいたものだそうだ。
女の子は、静岡県日本平生まれの岩崎きみちゃん。
お母さんは、きみちゃんのお父さんを亡くして再婚していたが、北海道留寿都へ入植することになった。
当時3歳の幼いきみちゃんを、厳しい北海道の開拓へ連れて行けないので、宣教師夫婦に養子に出した。
その後、開拓に失敗し札幌の新聞社に勤めていたご主人と親交のあった野口雨情が、この話を聞いて詩を書いた。
「お子さんは、宣教師と外国へ行き、幸せに暮らしていますよ」との思いを込めて・・・

ところが、きみちゃんは外国へ行っていなかった。
結核にかかり外国へ行く体力がないため、宣教師は東京麻生のキリスト教の孤児院にきみちゃんを預けて帰国した。
きみちゃんは、生みの親とも育ての親とも生き別れ、9歳の生涯を閉じていたのだった。
幸せ薄い少女だが、こうやって歌になり、皆に愛唱されていることがせめてもの救いだろうか。
日本平、留寿都、麻生、横浜港に銅像があるという。
(注:この話には、異議も唱えられている)


叱られて
♪叱られて 叱られて 
 あの子は町まで お使いに
 この子は坊やを ねんねしな・・・

私はこの歌を、子供が親に叱られる場面だと思っていた。
そうではなく、叱られるのは、子守奉公に出された年端もいかない姐やなのである。
それは2番の歌詞でわかる。

♪叱られて 叱られて
 口には出さねど 目になみだ
 二人のお里は あの山を
 超えてあなたの 花の村
 ほんに花見は いつのこと
雇い主に叱られ、泣きながら山の向こうの実家を懐かしく思う歌なのである。


里の秋
♪静かな静かな 里の秋
 お背戸に木の実の 落ちる夜は・・・

静かで、平和で、穏やかな日本の秋を思わせる、しみじみとした歌である。
だが、この歌の背景は、平和でも穏やかでもない。
お父さんは南の島へ戦争に行っているのである。
銃後の守りの家庭である。
♪ああ父さんよ ご無事でと・・・
との祈りもむなしく、お父さんは戦死したかもしれないのである。


北帰行
♪窓は夜露に濡れて
 都すでに遠のく
 北へ帰る旅人ひとり
 涙流れてやまず

私は、都とは東京、北とは北海道のことで、東北地方あたりを走る夜汽車の光景だと思っていた。
この歌の原曲は、満州の旅順高校寮歌で、舞台は中国大陸である。
作詞者の宇田博は、当時旅順高校の生徒で、高校を退学となり奉天の親元へ帰る光景を歌にしたものである。
そういえば、「さらば祖国 愛しき人よ」などという大陸的な歌詞もある。

これらの背景を理解して、歌ったり聴いたりしたら、歌に深みが出るかもしれない。
コメント (8)
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