昔、薩摩の武士は、芋侍といわれて馬鹿にされた。
田舎くさい若い男女は、いもにいちゃん、いもねえちゃんとからかわれた。
芋焼酎は、安い、くさいものと決まっており、貧乏人の飲むものだった。
山谷ブルースでも、労働者階級が飲むものと歌われる。
♪今日の仕事はつらかった
あとは焼酎をあおるだけ
おならが出るというので、若い女性が堂々と石焼芋を食べることはできなかった。
子供の頃、種子島の実家でからいも(さつまいも)を作っており、収穫の手伝いで根をむしると、手が真っ黒に汚れてなかなか落ちなかった。
このように、さつまいもには、田舎者、垢抜けしない、不細工、安い、くさい、という印象がつきまとっていた。
だが、さつまいもには実力はあるのだ。
江戸時代、飢饉から民衆を救ったのはさつまいもだった。
若い女性が、こっそりと石焼芋を買うこともあった。
臥薪嘗胆、さつまいもは、逆襲のときをじっと伺っていた。
それが今はどうだ。
芋焼酎は、おいしい、二日酔いをしないということで、全国的なブームになり、若い女性が飲んでもサマになる酒になった。
さつまいもは、さまざまなお菓子にも使われ、スイーツなどとおしゃれな名前で呼ばれる。
種子島の安納芋は、その甘さから全国的に人気が出ている。
子供の頃、からいも畑の草取りをし、手を真っ黒にして根をむしった自分としては、その復権を祝福したい。
今日の絵手紙。仙台の友へ。