鹿児島の自然と食

鹿児島の豊かな自然(風景、植物等)、食べ物、史跡を紹介します。

バイトの思い出(1)

2012-01-18 | エッセイ

学生時代、鹿児島市の繁華街天文館で、キャバレーのボーイのアルバイトをしたことがある。

当時、天文館には二つの大きなキャバレーがあり、そのうちのひとつだった。

ネオン輝く天文館のキャバレーは、華やかな夜の社交場だった。

正面に舞台があり、生バンドが演奏していた。

その下のフロアでは、客とホステスがダンスをしていた。

テーブルには、ローソクを灯したランプ(キャンドルといっていた)があり、客の注文があると、ホステスがキャンドルを持ち上げてボーイを呼び、伝票の切れ端を渡した。

 

ホステスには指名制度があった。指名されると何百円かの指名料が入り、人気ホステスほど収入が高いわけである。

週ごとに指名回数のランクが張り出された。

人気ホステスは必ずしも美人というわけではなかった。

いわゆる座持ちのいいホステスが上位だった。客を笑わせ、楽しませることの上手なホステスである。

「しのぶさん。5番テーブルへお願いします」

などという放送が流れ、人気ホステスはテーブルからテーブルへ蝶のように舞っていた。

 

時々、ドサ回りの芸能人が来てショーがあった。

ある日、ブルーボーイショーというのがあった。おかまショーである。

歌や踊りの間におしゃべりを入れる。酔客相手に毒舌やエロ話をして笑わせるのである。

ショーが終わり、楽屋にジュースを持っていくように言われた。

楽屋に入ると、4人のおかまが着替えの最中で、上半身裸だった。

そのうちの何人かは、胸が大きかった。

思わずおっぱいに見とれていると、何かにつまずいてジュースをこぼしてしまった。

「ホホホ、ボーイさん純情なのね」

おかまに笑われてしまった。

 

閉店後、交代で火の元の点検があった。

テーブルの下にタバコの吸殻が落ちていないか、楽屋に火の気は残っていないか、点検して回るのである。

ある日、私の当番だった。

隅から隅まで点検して回ったが異常はなかった。

12時過ぎに帰宅したが、その時、あのような大事件になろうとは予想もしなかった。

 

次の日の夕方、店に行くと唖然とした。

店の入っていたビルが完全に焼け落ちていたのである。

火元は私の勤めていたキャバレーだった。

私たちが帰った後、キャバレーから出火し、ビル全体が燃えたのである。

同じフロアの隣に、まだ営業しているバーがあり、ここの従業員4人が行方不明になった。

 

翌日、招集がかかり遺体収容の作業を行った。

しばらく作業していると、誰かの

「あったぞー」

という声がして、駆けつけると真っ黒に焦げた人間の形があった。

それは、人間というより物体という感じだった。

4人とも焼死体で見つかった。

葬式にも出席したが、棺に取りすがって泣いている家族がいて哀れだった。

それから何日かして、警察から呼び出しがあった。事情聴取である。

(次回へ続く)

コメント (8)
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