メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『のんのんばあとオレ』水木しげる/著

2011-04-16 15:25:29 | マンガ&アニメ
のんのんばあとオレ(講談社コミックス)水木しげる/著
1巻「わんばく大戦争の巻」
2巻「妖怪に好かれた落第王の巻」

サイトには漫画文庫のほうしか載っていないが、わたしが借りたのはハードカバーのほう。
『昭和史』と並行して読んでいるので、さらに少年時代が詳しく分かって面白い。
貧しいながらも生き生きと毎日を子どもらしく遊んでいたこの少年時代が、どれほど幸福な時間だったか、
そしてどれほどその後の人生の糧となったか、読んでいてもとても豊かな時間が体感できた

さまざまな妖怪話を聞かせてくれるのんのんばあ、
文化人で働くことには消極的だが、いつも家族のココロの支えであった父、
名字帯刀が誇りだった母、勉強で忙しい兄、子分のような弟、近所の悪ガキ集団とのケンカの毎日、
初恋の相手?で幼くして病死してしまった松っちゃん、
遠縁で肺病だった千草と十万億土の世界の話、
妖怪が出るので噂の家に引っ越してきたフシギな力を持つ少女・美和が神戸に売られてしまうまでの交流etc・・・


勉強は大の苦手だけれども、ガキ大将として頼られる存在だった茂は、夢想の大好きな少年で、
妖怪話を聞きながら、人間界と異次元世界を行き来しながら、いろんな話を創ってゆく。

中でも、人を驚かす「小豆ばかり」は何度も登場してきて、講釈じみたセリフも語ったりして、
なんだかとっても親しみが湧いてしまった

「長い時が理解を深めるとは限らない。一瞬は永遠であり、永遠は一瞬である」


父のセリフもよかった。
「人を感動させるものは、ありのままの形だけじゃない。こんなことがあってもええんじゃないかなーと思う夢なんだよ」


こんなあったかい家族に囲まれて育ったから、妖怪研究家、漫画家としてだけじゃなく、
大きなココロの持ち主として、みんなを楽しませてくれる人になったんだなあ!

ドラマも気になる。

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山手西洋館巡り@元町・中華街 その1

2011-04-15 23:55:55 | 町歩き
山手西洋館@元町・中華街

国立新美術館のアートライブラリーで見つけた『洋館さんぽ EAST』(インク・インコーポレーション)という本の中にあった横浜の西洋館を、イギリス大好きなF氏(有給をとったv)と一緒に訪ねてみた。
渋谷から東横線特急に乗らなければいけなかったのに、なぜか各停に乗ってしまい、待ち合わせに大幅に遅れて申し訳なす
「元町・中華街」5番出口から出てすぐに港の見える丘公園があるけれども、
まずは腹ごしらえってことで「谷戸坂」を登る。
どこもかしこも高低差が激しくて、坂道の傾斜もけっこうキツイ!


ローズガーデンえの木てい
2人とも可愛い「ローズガーデンセット」とキャラメルティーを注文。
2段のスタンドの上にホットサンド、スコーン、クレームブリュレ、イチゴがのっかってる!
気分はすでにイギリスのお屋敷でのブランチ♪
サクラはもう散ってしまっていたけど、庭の眺めもステキ。花壇にはチューリップが咲いていた。
ついつい、また長話になってしまうのを途中で切り上げて、西洋館巡りへGO!

と思ったら、キジトラのにゃんこが寄ってきて人懐こくご挨拶をしてくれた
ゴハン皿があったから、ここの看板にゃんこかな。ちゃんとお客様に丁寧な接待ありがとう~!!!

横浜市イギリス館
もう今となっては、どこがどうだったって詳しくは区別できないけど、どこもステキすぎっ!
なにが1番よかったかってゆうと、ちゃんとした木材で手づくりした重厚な家具類。
椅子、テーブル、鏡台、書棚、ちょっとしたナイトテーブルにいたっても、落ち着いた、豊かな暮らしが感じられる。
高台の窓からは、緑と花がキレイに植えられた庭が見えて、椅子に腰掛けて日がな一日、読書でもしていたくなる


大佛次郎(おさらぎじろう)記念館


日本文学の作家は全然分からないけど、映画で観た『鞍馬天狗』を書いた人らしい。
アラカンとの2ショット写真も飾ってある。
とにかく猫好きだったらしく、寝室(にしては、やたら書棚やテーブルが置いてあったけど)にも、
壁にも、天井、ランプシェードにも、いたるところすべてに猫のモチーフが溢れてて思わず微笑んでしまう。
児童書「スイッチョねこ」は改めてゆっくり読んでみたい1冊。

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山手西洋館巡り@元町・中華街 その2

2011-04-15 23:55:54 | 町歩き
山手111番館
地階がえの木ていで、上の洋館を公開している。
吹き抜けの2階もとても気になったけど、階段上は立ち入り禁止になってた。残念。
庭にさり気なく置かれている郵便受けも可愛いすぎ


岩崎ミュージアム(山手ゲーテ座)





古代エジプト~現代迄の衣裳シルエット (1/2) や、ガレ、ドームのガラス工芸品、
ミュシャのグラフィック等の作品のコレクションが展示中。
F氏の好きなアールヌーヴォー、デコがいろいろ観れた。1階の「ドレス撮影コーナー」では、中世のドレスを着て記念写真が撮れる
2000円クラスはメイド風だけど、4000円クラスともなると、エリザベス女王ちっく!
窓際は喫茶店になってた。


山手資料館
震災の影響か今日は休館。残念。ちょっと庭を回るように作られた小道の先に建つ爽やかな薄緑色の壁が可愛かった。

また坂を上がると、「横浜インターナショナルスクール」がある。どうりで途中、いろんな国籍風の学童がグループで歩いていたな。
「山手聖公会」は教会か?とくに観光マップに書いてなくても、ふつーの民家が全部洋館風でステキv

山手234番館
どこの洋館にも立派な造りの暖炉がしつらえてあって、一応薪も置いてあったけど、使ってるのかなあ???
中に入るにはスリッパに履き替えなきゃならないところも多かったのでちょい面倒
キッチンもよかったなあ!IHになってて、普段使いのところもあったけど、
食器棚に並べられたワイン瓶やティーカップも美しい
浴室も広々としていて、水道の蛇口がなにやら複雑でかっちょイイ!


エリスマン邸
ピアノが置いてあったりしてコンサートを催しているところも多かった。
1階の喫茶室がとっても雰囲気よかったのだけど時間がなくて次回持ち越し!


ベーリック・ホール
スパニッシュスタイルってことで、土を塗ったような外観は南国の雰囲気が出ていて、これまたステキ。
大きくとられたガラス窓と、子ども部屋が可愛かった! 壁がネイビーブルーってけっこう斬新。
ウォークインクローゼットとかも広い!そして、庭に張り出したテラスにはライオンのミニ噴水もあり/驚

西洋館はほとんど17時で閉まってしまうので、このへんにして、最後はこちらへ。


ヨコハマ猫の美術館
民家の軒先に猫のオブジェと花壇があって、看板がないと通り過ぎてしまいそうな素朴な美術館。
入館料300円と書いてあるけど、人影がなく、勝手に見ていたら、おじいさんが2階から降りてきました
入り口付近は猫グッズの販売(趣味で創られたものが多い)、その他は展示品とのこと。
有名画家の描いた絵画、置物、人形、民芸品風のものにいたるまで、とにかく全部が猫、猫、猫!
「すごいコレクションですね!」といったら、「ええ、集まっちゃったんです」てw

その後もぽつりぽつりといろんなお話をしてくれて、「西洋館に実際に住んでいる知人は、広くて、吹きぬけだから、エアコンも効かず、冬は寒いし、夏は暑いし、とても住めたものじゃないってゆってましたよ」とのこと。そっか、なるほど~

でも、「暖炉の火は温かく、造りが良いと煙たくもならないし、周りは緑が多いから毎日が森林浴みたいなものだ」とも。うらやま~!
以前飼っていたにゃんこの写真をコラージュした作品もあって、全員20歳ほども生きていたんだそう/驚
今は子猫がいたが、どこかに行っちゃったとか

そのうち、2階から奥様と思われる「なにしてるの~?」て声がして、「お客さんが来てるんだ」て可笑しかったw
にゃんこ、動物好きにはたまらない美術館でした~。

坂をちょっと戻って、何軒か気になるステキカフェがある中で、こちらで早めの夕食。


山手ROCHE
道なりにテーブルが置いてあって、落ち着いた店内。
メニューはどれも美味しそうな正統派洋食屋さんといったところ。
F氏はオムライス&エビフライセット、わたしはシナモン味で煮たリンゴの乗ったクレープ&紅茶を注文。どちらも美味しかったあ!
ちょうどわんこのお散歩の時間帯になって、まるでドッグショーのように、いろんなわんこが見れたし♪
黒ラブさんと白いグレート・ピレニーズっぽいわんこの遭遇は面白かったな(ぽっ


石川町駅のほうにも「ブラフ18番館」、「外交官の家」があるんだけど、1日じゃ周りきれないのでまた今度~!
風が強くて、雨になるんじゃないかと気にしてたけど、結局降らずによかった。
帰りはちゃんと特急に乗って、それほど混まなかったしv

また、出掛けようね~♪♪♪
その他の写真は、フォト一覧でどうぞ。

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『Project BLUE 地球SOS』(全6話)

2011-04-14 20:04:22 | マンガ&アニメ
Project BLUE 地球SOS(全6話)
原作:小松崎茂 監督:岡村天斎 音楽:大島ミチル
2006年7月2日~12月2日まで月1回放送していたSFアニメ。

trailer

op theme:♪ProjectBLUE 地球SOSのテーマ(作曲・編曲:大島ミチル)
ed theme:♪風の産声(作詞:稲葉エミ 作曲・編曲:セキタヒロシ 歌:solua)

時々、小耳に挟んでいた小松崎茂という名前。松戸に関連した資料館?もあるようだし気になっていた。
昭和20~30年代に思い描いた「2000年」という未来都市という設定なため、
SFといっても、どこかうっすら昭和な郷愁感が漂っているのが魅力的=レトロフューチャー

ストーリー的にも「火星人来襲」みたいなドキドキ&ワクワク感たっぷりなエンターテイメント要素が強く、
ヴェルヌ好きとしては堪らない。メカ好きにも見逃せないことだろう。
「謎の少女」って設定がいかにも昭和SFっぽいもんね
弁士風予告の「刮目(かつもく)して待てっ!」の刮目とは、目をこすって、よく見ること。だそうな。

音楽は、大島ミチルさん。どこかで見た人だと思ったら、『わんこ THE MOVIE』の映像特典で見たんだった!

▼disc 1
いきなりカワイイUFO(ヘルメットワーム)出てくるし、それをやっつける戦闘機、防衛機能バッチリの地下施設、巨大なメトロポリタンてのもスゴイ
でも、未来の施設は大抵、密閉された建物で、自然の空と空気が遮断されているよね・・・閉所恐怖症には住めません/涙

特典映像は、ビリー役の声優さんのインタビュー。自分のことを「ボク」てゆってるw
その他、プレス相手の挨拶、プロモ用&TV用CMなど。
次回予告は、なぜかビリー×ベニーのエセ関西弁による掛け合い漫才風(なぜ・・・???

▼disc 2
特典映像は、ベニー役の声優さんのインタビュー。舞台挨拶の時は、中性的な男性と思っていたけど、中性的な女性だった/驚×300

▼disc 3-6
全6話だから、あっという間に見てしまった。
マッドドクターが宇宙へ放った生命体が、わずか10年足らずで独自の進化をなし、地球へ帰還、支配しようとする。
ドクターの娘・マーガレットは、そのオリジナルとしてバグア遊星人に迎えられるが、ニンゲンのココロとの葛藤に苦しむ。
天候を変えられ氷河期のようにされたり、ラジオによって洗脳されたり、さまざまな危機も人類の科学の力によって乗り越え、
ついに本拠地を突き止め、博士が開発したDNAを改造するカプセルをセットするが・・・

映像特典のメカデザインは、タチコマくんを担当した人だった!
鬼太郎っぽいヘアスタイル。みんな濃いキャラばっかりだなあ!
高性能なCGを、逆に昭和の特撮映画風に仕上げたって面白い。


ボックスアート
プラモデルなどのパッケージに描かれる内容物を表す絵のこと。箱絵、パッケージアートとも呼ばれる。


昭和ロマン館


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『パリのおばあさんの物語』(千倉書房)

2011-04-14 20:04:21 | 
パリのおばあさんの物語(千倉書房)
スージー・モルゲンステルヌ/著 セルジュ・ブロック/イラスト 岸惠子/訳

先日、部長が訳した『ボクの穴、彼の穴。』を読んだ際、同じ千倉書房から出ている本書も気になって借りてみた。

朝ぼらけのようなパリの絵が気に入ったからだけど、『ボクの穴~』と同じ画家さんだったんだな/驚
表紙とは違って、中の挿画は親しみやすいコミック風。

1人で暮らす年老いたおばあちゃんの語り口調は明るくて、ほのぼのとしているけど、
彼女の歩んできた人生は過酷なものだった。
ナチス統制下のパリ。ユダヤ系である彼女と家族は、時にちりぢりとなり、
息を潜めてギリギリの生活を強いられた。

それも過去となり、今では夫も亡くなり、子どもはたまに電話をくれて、孫が遊びに来てくれる。
物忘れが多くなり、カラダの自由もきかなくなって、たくさんあった趣味もできなくなったけど、
若返りたいとは思わない。なぜなら・・・

「もういちど、同じ道をたどってどうするの?
 だってわたしに用意された道は、今通ってきたこの道ひとつなのよ」

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『チムとゆうかんなせんちょうさん』(福音館書店)

2011-04-14 20:04:20 | 
チムとゆうかんなせんちょうさん(福音館書店)
エドワード・アーディゾーニ/作 せたていじ/訳

エドワード・ゴーリーが影響された画家とのことで借りてみた。

船乗りに憧れる少年チムは、ある日、友だちの船乗りのおじさんにボートに乗っけてもらい、汽船に乗り込む。
そのまま隠れていて、船は出港。すぐ見つかってしまい、船長から「タダ乗りはダメ。働け」と言われる。
いろんな仕事をイヤがらずやっていたら役に立つ子だと褒められる。
が来て、船は転覆。救命ボートに助けられ、無事に家族のもとに帰る。というお話。

温かみのある手描きのタッチ、色づけ、ドキドキわくわくする少年の冒険物語は、ゴーリーの異色さとは真逆w
チムの物語りは、ほかにもどんどん続いている人気シリーズのようだから、全部読んでみたいなあ!


エドワード・アーディゾーニの作品一覧

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『沖縄文化論―忘れられた日本』岡本太郎/著

2011-04-13 16:58:23 | 
『沖縄文化論―忘れられた日本』(中公文庫)
岡本太郎/著

願わくば初版で、書いた当時(1961年)、売り出された当時の空気感で味わいたかったが叶わず、読んだのは1996年版。
でも、それすら気にならなくなるくらいの文章の濃さ!
久々手元に置いて、ことあるごとに読み返したいと思わせる本に出会えた。

どんな旅行本にもない沖縄の本来の姿。
どんな歴史書にもない生々しい記録の数々。
あらゆる迷いに対してズバッと明解な答えが書いてあり、
ここ最近のモヤモヤした疑問が吹っ飛んで明らかになった思いがした。
1人でも多くの人にこの本を読んで欲しい。
沖縄の原初にこそ、日本の本来あるべき姿がある。

本書の前に『縄文土器論』や『日本再発見』などが書かれて、沖縄への旅はむしろ息抜きのはずだったとのこと。
それが実は、こちらこそ本家本元だったと気づかされることになるとは、運命の導きの面白さ。
まだまだ戦争の爪痕が生々しい頃の沖縄。許可証がなければ入ることも許されなかった。
マラリアで何度も村民が全滅したり、究極的な貧しさ故に、妊婦が絶壁の割れ目を跨ぐ儀式などが行われていたという事実に唖然とした。


本書の中で、太郎はどんなに些細なことも、無意識に受け流されていることにも、根源的意味をズパッと提示している。
あらゆることの「初源的な感動」を示している。
だから、世間的に素晴らしいとされていることに対する批評もハンパない切れ味!
p.131の日本舞踊など痛烈!p.169では、神社を酷くこき下ろしている/驚

画家の冷静で鋭い視線、学んだ民俗学の知識、そして持ち前のがっぷりよつの情熱と好奇心、正直な感動をもって、
沖縄および日本を表も裏もひっぺがして体験し、分析し、消化した上で紹介している。

ゆったりした悠久の「沖縄時間」に対しては、自分のことを「超せっかち」と自覚しているのが面白いw
正直で可愛い人なんだな


でも、これほど本質的なことをわかりやすく著して、著作もかなり売れたにも関わらず、
世の中が当時の価値観からまったく変わっていないのはどうゆうわけなんだろう???

ラストはとても詩的。浜辺で遊んでいた子猫2匹は太郎と敏子の比喩だろうか?


本文抜粋メモ
ほぼ毎ページにココロに響く文章があったので、今後もちょっとずつ書いていきたい。
今回は、ここ最近のこととのリンクについて。

p.70
この世界では物として残ることが永遠ではない。その日その日、その時その時を、平気で、そのまま生きている。風にたえ、飢えにたえ、滅びるときは滅びるままに。生きつぎ生きながらえる、その生命の流れのようなものが永劫なのだ。

p.72
俗にマスコミ禍なんてことがいわれているが、どんなに矛盾を感じても、現代人はこの巨大な雑音なしには生きられない。私のように、好きなこと以外は絶対にやらず、気ままに生きているものだって、それに無関心ではいられないし、時にやりきれなくなる。
 この目まぐるしさはどうしたものだろう。文明開化以来、西欧から入ってきて頭からすっぽりはめ込まれた近代、その時計の針に一生けんめい追いつこうとした後進国意識、その焦りが身についてしまったのではないか。どうも本当の生き方ではない。
 しかし勿論日本にかぎらない。世界じゅうのオーガニゼーション・マンが、自覚するしないにかかわらず落ち込んでいる絶望的なシチュエーションである。生命のリズムと時計との違和感。というよりも生命自体が画一化しているということだ。ただ空しく一方的時間にのまれてしまっては、生きてる甲斐がない。

p.73
考えてみれば、あまり栄養にもならないこの紙束(新聞、週刊誌、雑誌など)をよくまあ、せっせと、毎日のみ下していたものだと、われながら奇妙な気がした。

p.74
強いものは無限にずれてゆく時代にたえ、その虚無をのりこえるべきである。
つまり悠久の時間に生きようなんて、とぼけた決心をしたって、現代社会では許されない。
どうしたら二つの矛盾する時間をそのまま捉え、生命の充実をとりもどすことができるか。問題は組織された社会の、組織された時間の中に、この初源的な感動の持続をいかにもり込み、生かすかということだ。

p.184
狭さ、ひろさということからいえば、今日、日本も沖縄もともに、素直に外に向かってひらかれている。むしろ大国といわれるアメリカやソ連、広大な大陸を占取する人々の考え方の方がはるかに狭量のようだ。われわれの負い目はむしろそれに対するコンプレックスではないか。頑なに己れの基準だけで他を律する閉ざされた精神、ああいう無神経なほどの自己主張、自足は、とうていもちえない。いったい、われわれは立場を忘れて引きずり廻されるお人好しなのだろうか。

p.186
多くの沖縄人の、あのやわらかい表情、運命的力に対して恭順に、無抵抗に見える態度の底には、チュラカサの伝統、災いをいんぎんに扱って送り出してしまうという、辛抱強い護身術が働いているのではないか。

p.196
われわれは自己主張、自己発見のポイントとして、あまりにも「東洋」という観念、そしてそれを土台とした「日本文化」というレッテル、お体裁にこだわりすぎたようだ。東洋文化圏をかざしたり、「アジアは一つなり」なんて根拠のない迷文句が、われわれの根源にあるエネルギーを見誤らせてしまった。それをまた裏返しにした、近頃の欧米式民主主義、ヒューマニズム一辺倒にもその危険はある。(中略)私は極論したい。沖縄・日本をひっくるめて、この文化は東洋文化ではないということだ。地理的にはアジアだが、アジア大陸の運命はしょっていない。

p.197
この自然の中で、生活感情もまったく同質である。雨につけ風につけ、人々の顔も心も、同じように曇り、また晴れる。そこに致命的な喰いちがい、理解をこえる影はない。だからお互いにひどく解りがいい。声荒々しく説得したり、矛盾をのりこえるためのシチメンドクサイ思想が生まれる余地はない。

p.199
このような生活感情を土台にした文化は、逆にひどく無邪気である。悔いとか恨みの、しめっぽい影はない。素朴のようだが、鋭くたくましい。切実な生命力を端的に伝えている。物に対する執念、物として永らえようなんて考えはない。考えようがなかったのだ。サバサバした人生観である。

p.200
この間にあわせのやり方を他人事のように慨嘆する。日本人の非論理性、無計画性、非近代性だ、などと解ったようなコウシャクをする人もいあるが、そんなのをひっくるめてその中で住んでいる。何という平気さ。およそオウヨウではないのに、不思議に物にこだわらない。これは伝統である。別な言い方をすれば、物の重さに耐える粘り強さがない。物を土台とした文明に対して、何か違和感がある。

p.202
もしこれから逞しい日本文化を押し出して行くのに、体系が必要だというなら、もう一ぺんバラバラにもどしてしまって、こちらの生き方の土台、その実体の上から、再構築すべきである。

p.206
(わびさびの)湿っぽさはピープルのものではない。中間層の優越と劣等のコンプレックスのからみあった暗さだ。民衆はどんなに苦しくとも、その本質において明朗であり、透明なのだ。(中略)今日、歴史は急速に前進だけだ。世界はますます合理的に組織され、近代的にステレオタイプ化されるだろう。そいう拡大にともなって、一方にパティキュラーな条件、われわれのうちにある生活の初源的な感動は抑圧されてしまう。しかしそれは一種の孤独感として、われわれの内部に逆に深まり強まって行くにちがいない。


分からなかった単語の意味メモ

ユンタ=沖縄県八重山地方に伝承される歌謡の一群。多くは長編の叙事詩で、労働の際に男女掛け合いで歌われる。

ユングトゥ=沖縄県八重山列島の歌謡。種子取祭(たにどうりい)や結願祭(きついがん)などの祭祀で,あるいは新築や婚礼など各家々での祝席で,個人によって演じられる。唱えるものと歌うものがあり,歌うものも旋律が比較的単純で歌詞の1音節を装飾をつけずに1音で歌うものが多い。

アヨウ=三線を用いない古い歌謡

メタフィジック=形而上学

人頭税=担税能力の差に関係なく、各個人に対して一律に同額を課する租税。

ヴァニティ=虚栄。虚栄心。虚飾。

生後生(いきぐしょう)

スポンテニエティー=自発性。自発的行動。

イコノグラフィ(iconography)=図像(体系);肖像画集

ミディアム=媒介するもの。媒体。また、仲介者。

アドミレーション(admiration)= (…に対する)賞賛(の気持ち),感嘆,感服,感心

モノトニー(monotony)=単調さ,変化のなさ;(話し方などの)一本調子

デスポティズム(despotism)=専制政治。また、独裁政治。



谷茶前節
親の新婚旅行は沖縄で、ウチにこのSPがある。小さい頃から聴いていてふしぎに感動したのを覚えている。


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余震はつづく

2011-04-12 19:50:09 | 日記
SMJ 全日本スキマ音楽(2011年4月8日OA)

SMJ第2回も聴きました~!面白かった~!!!
♪東京FM~東京FM~ てジングルを聴くと、ピチカートファイブver.を思い出す。

電話の保留音楽がコワいって/爆
こうゆうスネークマン・ショーみたいなショートコント大好き
この番組の構成・脚本さんが気になってきたなあ!

まさかの「前回のあらすじ」紹介。
「ハマケン」で検索したら、「婚前特急」のコメントばかりw
なんか、このラジオではハマケンが絶対的に優勢なんだね。
「オレたち大丈夫だから!」てw 角田さんの人の良さが分かってきた。

前回作った曲を聞き返してから、今回のお題へ。
「酒飲みの曲が多いけど、下戸も多いんだ」ってホント角田さん鋭いっ!ノンサケロックw
♪酒は飲めないけど、テンションを上げる歌 は、日本全国酒飲み音頭のパクリですか?

「これ侮辱だよ。フォーキー大嫌い」てハマケンの容赦ないダメ出し。
マイケル寂聴風に思いっきりアレンジ!出たっ!ハマケンのファンク
ピタゴラスの定理はピタゴラスが発見者じゃないんだ/驚
「魂で暗記しろ!」だそうです。

前回のブログのコメントはたった2件。今回はもうちょっと増えたかな?w
第3回も聞き逃せません!



毎日、毎日、余震がつづく。震度4とかけっこう強いし。
図書館に出掛けた際も揺れて、職員さんに「書棚から離れてください」って指示された
不安感がつづくと無気力につながって、なんだかいろんな気力がそがれる。

それでも、こないだサケ友と今回の地震を精神世界において分析することでちょっと納得したことがあった。
江原さんも似たようなことをゆっていたみたいだし→here
人心の乱れが原因であるなら、日本中が一体となって、これまでのさまざまな価値観を根底から考え直すことで、世界中にも大切なことがなにかを発信できる。
震災がもし、そんなキッカケなのだとしたら、恐怖は恐怖のままに、悲しみも悲しみとしてきちんと受け止め、そこから新たなスタートを切る。そんな時なのだと思いたい。


近所のサクラはまだまだ満開。季節は春なのです


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『グレート・ビギン』(GENESIS)(2004)

2011-04-12 19:42:35 | 映画
『グレート・ビギン』(GENESIS)(2004)
監督・脚本:クロード・ニュリザニー&マリー・プレンヌー 音楽:ブリューノ・クーレ
出演:ソティギ・クヤテ

「生命は時間に逆らって生きる」

オシャレな俳優でなく、マサイ族の酋長みたいなオジサンが語ることでより説得力200%増
壺や、水、砂、泡など、シンプルな道具を使って、生命の起源を紐解いてゆく。
それは、とてつもなく壮大で、繊細で、エネルギッシュで、美しく、グロテスクな物語だった!

ビッグバンからスタートして、火の球だった地球に海が生まれ、単細胞生物が生まれる。
まだ見ぬ楽園、地上に這い上がった生物が、あらゆるバリエーションに変化してゆく。
いろんな爬虫類が出てきたなあ!
ヘビの卵丸飲み芸はスゴイ!!! 最後に殻だけ「ケッ」て出してるし/驚

1+1が3になる生命のフシギ。そこに愛が生まれる。
蜘蛛の愛のダンスが意外と激しくてビックリ!!!
仲睦まじい鳥のカップルもステキ
ワニの赤ちゃんと、ヒトの赤ちゃんが胎内で動いている映像は、ブキミで美しい!

川と血の流れる映像の対比も感動した。

死=自然に還るということ。また次の生命の糧となるために。
「わたしは歌を残そう。みんなが歌えるように」

ラストの曲もステキだった。

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『男はつらいよ 純情篇』(1971)

2011-04-11 17:18:45 | 映画
男はつらいよ 純情篇(1971)
監督 :山田洋次脚本 :山田洋次 宮崎晃原作 :山田洋次撮影 :高羽哲夫音楽 :山本直純美術 :佐藤公信
マドンナ:若尾文子 ゲスト:森繁久彌 ロケ地:長崎県五島列島福江島

たまたまテレビをつけたら、寅さん放送ってことでつい観てしまった
わたしの母も兄も今シリーズの大ファンで、つられて観るうちに、昭和の人情溢れるストーリーに笑ったり、泣いたり。

水戸黄門と同じで、展開やネタは大体どれも似たりよったりなんだけど、その「お決まりごと」がイイんだよねv
「こうゆうタイミングにかぎって来るんだよ、あいつは!」ってゆってるそばから、寅さんが登場したり、
マドンナに真剣に恋をして周りの見えない寅さんに、おじちゃんとおばちゃんが困った顔をするたびに笑ってしまうw
たった1人の妹・さくらとのやりとりは毎回涙を誘うし/涙

「けっこう毛だらけ、猫灰だらけ~」でお馴染みの叩き売りの口上も、今では聞かれなくなった風情だけに貴重。
今作はまだ6作目とのことで、寅さんも若いなあ!40手前って設定だったみたいだけど。
よくよく見たら・・・なんだかハマケンを思い出してしまった!「平成の寅さん」で演ってみたらハマるかも?!

あらすじ
TVで柴又と団子屋が紹介されて、すっかり懐かしくなった寅さんは電話をする。
その後、小さな赤ん坊を連れて、船を待つ若い女の身の上に同情し、女の故郷・五島列島へ一緒についてゆく。

たった一人の身内の父(森繁さんがまたイイ!)は、「反対を押し切って出て行ったんだ。オレは先長くない。オレがいなくなったら戻るところなんてないんだぞ。一度惚れた男だ。長所を伸ばしてやることも妻の役目だろう」と説得。
それを聞いた寅さん「いつでも帰るところがあるから、いつまでたっても一人前になれないんだな」と激しく納得。
柴又が懐かしくなってすっ飛んで帰ってゆく。

だが、寅さんの部屋は、遠縁の美人・夕子に貸してしまっていて、
寅さんがまた恋わずらいにかからないようヒヤヒヤする家族の心配は的中!
寅さんの気持ちを知った夕子は、「困っているんです」と遠まわしに断るが、
ヘボ医者のことだと勘違いして注意しに行く寅さんw

博は、印刷工場を辞めて独立を考えている。
それを知ったタコ社長は「博くんに辞められたら工場は潰れて、家族は路頭に迷っちまう!」と大慌て!
博とタコ社長の両方から相談された寅さんは、いい加減な態度でうやむやにしていたせいで、さらに問題が悪化してしまう
そのうち、夕子の旦那が突然迎えにやって来て・・・

やっぱイイなあ!ココロがほっこりした♪
いつも思うけど、寅さんみたくカバンひとつで日本中を旅してみたい。理想ですv
帰る場所、待っている温かい家族がいてこその旅情だけどね。



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