野村さんとは神楽坂の喫茶店「すーぱーみるく」で行われていた勉強会で何度かお会い、お酒をともに飲んだことがある関係です。
そんな野村さんは活動的な方で勉強会が終わると夜行バスで名古屋に帰ることもあるような活動的な人物です。
数年前まで、野村さんは名古屋大学で内田良先生の指導を受けている院生でした。
彼が書いた博士論文を加筆、修正して最近発行されたのがこの本です。
売れることを夢見るバンドマンの夢追い、バンドを続けていくことの葛藤、ライブハウスで演奏するバンドの実態、そしてバンドの解散。
それらが複数のバンドや複数のバンドマンへの長年の聞き取り調査をもとにバンドマンたちのメンバー間の繋がりや葛藤が会話分析から描き出されている作品となっています。
とても時間のかかる地道な作業であったことを感じさせてくれます。
バンドマンの実態を知りたい人はもとより、グループを作る、グループを解散する際の明らかにされた心理は、インタビューが例示された社会心理学の教科書を読んでいるようでもありました。
ぜひとも、そのような分野に興味をもっている方にはおすすめの一冊です。
野村さんがこの本を書くにあたって「夢追い」を定義されています。
「多くの子ども・若者が生業にしたいと考えながら、学歴に担保されるような制度かされた職業達成経路を持たないために、実現可能性が低いとみなされている職業に就くことを目指して行われる行為の総体」。
夢追い型進路形成が「正規のルート」から逸脱した人生経路であり、フリーターなどの不安定な移行を伴うと。
私はあと残り2年間となる勤め人です。
「夢追い」をすることもなく、ひたすら勤めてきた「夢老い」からすると考えされられることが多々ある作品でした。