宮入さんと佐藤さんとは、
ここ何年か同じ場所で、
毎週定刻に顔を合わせる研究仲間だ。
落語の世界で言えば、
師匠、渡辺先生を仰ぐ我々は同門の弟子だ。
三遊亭○○、林家○△、・・。
これはクラシック音楽や社交ダンスなどの高級文化と言われるものではなく、
ライブハウス、ディスコ、クラブ、フェス等のポピュラー文化に光をあてている作品。
これらが書籍になって、ライブカルチャーの実態が多くの人びとに知られる意義は大きいはずである。
筆者たちが愛する「歌」や「ダンス」をアカデミズムの世界で表現した作品である。
言葉を変えれば、
筆者が冒頭で語るように
「愛」や「夢」を言葉につづった作品になっているとも言えるのかもしれない。
以下に抜き書いたのは印象に残った記述である。
「ライブハウスがノルマ制を導入したのは、1980年代半ばになってからのことだ。ノルマ制の導入によって、ライブハウスはビジネスとしてのリスクを回避するという利点を手に入れたと同時に、みずからの求心力を失うことになった。」p.48
「差異化が均一化をもたらすという女たちのダンスは、その後もバブル崩壊後のジュリアナ。ブームから90年代末のパラパラブームまで続いていた。そして哀れな男たちは、ナンパ待ちをするか、踊る女たちの下着をこっそりと覗き見るにすぎなかった。」p.68
「フェスが売り物にするのは、形式張った資本主義には見られないクールという意識なのだ。大規模なフェスは、クール資本主義―差異化を図り、消費者の声に耳を傾け、ときには社会的良心を訴える」p.84
「ライブハウスやクラブといった日常に連続したライブシーンにあるのは音楽だけで、フェスが用意してくれるような、人びととのやりとりをうながすお膳立てがない」p.89
「日本のポップカルチャーとして海外で求められているのは、日本のポピュラー音楽そのものではなく、クールをまとった日本のポップミュージックなのだ。」p.132
所謂「ライブカルチャー」に興味がある方々には一読してほしい。
今月初頭から大手書店店頭に並べられている。
ぜひとも現物を手に取って見てほしい。
クールな表紙に読書欲をそそられるはずである。
この本はアカデミズムに対抗している雰囲気もかもしだしながら、
各章がしっかり仕上がった論文から構成されている。
しかも、注釈にも読んで為になることがしっかり書かれている。
大学の卒業論文作成で
ライブハウス、ディスコ、クラブ、フェス等のライブカルチャーに興味を持ち、
それを卒業論文にまとめてみたい大学生にとっては必読の書である。
全国の大学図書館にも、ぜひとも購入して配架していただきたい。
内容についての感想だが
2章と3章が論文としての完成度も高く、内容豊富だ。
内容が凝縮されていて深化した物となっているので、
心地良く読み進めることができた。
たぶん、
「2章 搾取されるミュージシャン」を宮入さん、
「3章 ディスクとライブのせめぎ合い」は佐藤さんが書いたのであろう。
ちなみに4章の場合は前半は佐藤さん、後半は宮入さんではないだろうか。
この「ライブシーンはどこに行く」は筆者二人での「コラボレーション」との記載が前書きにあったが、筆者それぞれの責任著作とコラボレーションの混合作品としても良かったのではないかという感想をもったこともお伝えしておこう。
その他の細かな疑問点は、
今後に予定されている合評会で質問させていただきたい。