太宰治、宮沢賢治、小林多喜二……。文学史に大きな足跡を残す東北ゆかりの作家を教科書以外でも取り上げる学校が目立つようになった。授業で生涯を学んだり、作品を鑑賞したりするほか、ゆかりの地を訪ね、地域活性化に生かそうとする例もある。職業意識の育成や読書離れへの対策にもつながっている。(江川慎太郎)
●高校で教材に
秋田県にかかわりのある作家の作品をまとめた「秋田―ふるさとの文学」(無明舎出版)が今年度、県内のいくつかの高校の授業で使われ始める。明治から現代まで54人が登場。小林多喜二の「蟹工船」、石川達三の「蒼氓(そうぼう)」、高井有一の「北の河」といった作品を生涯とともに紹介している。 高校教師らでつくる県高校教育研究会国語部会が教材にしてもらおうと編集した。部会長で、秋田県立大館国際情報学院中学校・高校(www.okj-h.akita-pref.ed.jp) の三浦基校長は「生徒にふるさとの心を伝えていきたい」と話す。 同学院高校の吉原彩教諭は「蟹工船」を授業で取り上げる。多喜二を「弱い人、貧しい人を救いたいと、言葉の力を信じて命がけで闘った人」と受け止めており、「生徒たちもやがて社会に出る。自分とかかわる点が出てくるだろう。そういう視点で『蟹工船』を読んで欲しい」と力を込めた。 秋田高専(www.ipc.akita-nct.ac.jp)で日本文学を教えている工藤一紘・非常勤講師は、「蟹工船」の読書感想文の執筆を生徒たちに呼びかけたことがある。生徒たちは社会の矛盾への怒りなどを素直に書いていた。「地元の目から見ることで得られる発見が必ずある。秋田に生まれた人間の感性で作品をとらえ、風土とのかかわりを掘り下げていって欲しい」 宮城県では約30年前、教員らが冊子を作成。その後、大きな改訂を重ね、現行の副読本「高校生のための みやぎの文学」が編集された。井上ひさしの「青葉繁(しげ)れる」や北杜夫の「どくとるマンボウ青春期」などを紹介している。学校現場からは「生徒と文学作品との距離を縮めるのに役に立っている」との感想が聞かれる。 太宰治の生家「斜陽館」がある青森県五所川原市(旧金木町五所川原市 太宰治記念館【斜陽館】館内案内、展示室紹介、利用案内等。 ... 太宰治記念館「斜陽館」入館料. 種別. 個人. 団体. 一般. 500円. 400円. 高・大学生. 300円 ... 太宰治記念館「斜陽館」 tel 0173-53-2020 fax 0173-53-2055 ..www.goshogawara.net.pref.aomori.jp/<wbr></wbr>16_kanko/dazai/syayoukan.html )の秋田県立金木高校(www.seihoku.asn.ed.jp/~kanagi )は、「太宰治学習会」の授業を続けている。太宰ゆかりの地を訪ね、太宰を通して地域の歴史や文化を学ぶ。 授業は毎年秋、総合学習の時間を使って1年生を対象に開く。生徒たちには、夏休み期間中に小説「津軽」や「斜陽」を読んでおくように伝えておく。 去年は10月にあり、約70人が参加。斜陽館見学の後、中泊町小泊の「小説『津軽』の像記念館」で学習した。生徒たちは、太宰の子守を務めたタケと太宰との深いつながりに心を動かされていた。 2年前の授業で訪れた3年生の田中可南子さん(18)は「授業がきっかけで太宰を好きになった。読み込むほど深い味わいが感じられる。太宰の生まれ故郷で学べることを誇りに思う」と話した。 生徒たちはさらに、太宰ゆかりの場所をとっかかりに北津軽地域の観光を調査・研究し、地域活性化を目指す活動にも取り組んでいる。観光客に聞き取りをしながら観光マップを作ったり、新商品の開発を提案したりするものだ。 石戸谷繁校長は「生徒たちには、地域とともに生きていく、地域作りに自分たちも積極的に参加していくという姿勢が生まれた」と話している。
●短大でも授業
山形県天童市の羽陽学園短期大学(www.uyo.ac.jp )では、柏倉弘和准教授(国語教育)が一般教養の授業で岩手県花巻市生まれの宮沢賢治を取り上げている。「東北の作家で教科書にも登場し、学生も親しみを感じている」との考えからだ。 「よだかの星」や「どんぐりと山猫」のほか、柏倉准教授がとりわけ思い入れを強くしているのが「虔十公園林(けんじゅうこうえんりん)」だ。 主人公の「虔十」という少年が馬鹿呼ばわりされながらも野原に杉の苗を植える。育った杉林は子どもたちの遊び場となり、虔十が若くして死んだ後も人々の安らぎの場であり続ける物語。登場人物の「まったくたれがかしこくたれがかしこくないかはわかりません」という発言が象徴的だ。 柏倉准教授は学生たちに「お笑い番組を見て笑うことはあるけれど、虔十のように、風景の美しさを見てうれしくなり、笑う機会はありますか」などと問いかける。 初めて読んだという学生も多く、「自分が幸せと感じることができれば、それが幸せなんだ。心から分かりました」「季節の変化や美しい風景に敏感な、虔十のような人間になりたい」という感想が寄せられている。もっと賢治の作品を読みたいとの声も届く。 柏倉准教授が強調するのが、杉林で遊ぶ子どもたちが喜んでいる様子を見て虔十もうれしそうにしている場面だ。同短大は幼稚園教諭や保育士、介護福祉士を生み出している。柏倉准教授は「人の喜びを自分の喜びと感じている虔十の姿は、保育や介護の現場で働く人間の理想像だ」と考えている。
◆東京・江戸川区、読書科を導入へ
授業に読書を本格的に取り入れる動きがある。東京都江戸川区教育委員会(www.city.edogawa.tokyo.jp/kurashi/<wbr></wbr>kyoiku/index.html )は、全国でも珍しい独自科目「読書科」を区立の全小中学校に導入する。 今年度は学習指導要領に基づく教科とは別に、朝の時間を中心に年間千分程度の読書時間を確保。どんな本を取り上げるか、どんな授業の進め方になるか、課題を探りつつ、2012年度の創設を目指す。 「感受性豊かな時期に多くの本を読んで、生きる力を養って欲しい」と区教委。読み聞かせや学校図書館の整理も実施、読書環境の充実を合わせて行う。 難題は、教科となれば「成績評価」の対象となること。創設までの2年間で検証する方針だ。
地元の輩出した有名作家の作品を読み、教科書には書かれていない小説の楽しさやその文学作品に書かれている時代の歴史もその時代を生き抜いて来た人々の暮らしやその地域の生活ぶりが理解出来読書の楽しみ身に付けることが出来るのではないでしょうか。 地元の日本を代表する作家の作品から地元地域の伝統や文化を知り、実際社会科見学として、作家の生誕の地や小説の書かれている場所を訪れ学ぶことは、地域のその時代の歴史や文化を知り、今問題になっている読書離れを防ぎ、地元有名作家の作品を読み、作品を通じて人間性や人間の人生とは何か考察出来るのではないでしょうか。東京都江戸川区教育委員会は、全国でも珍しい独自科目「読書科」を区立の全小中学校に導入しょうとしていますが、本読むと言うことは費用か出来ない事であり、点数で評価する者ではないと思います。試験第一主義、直ぐに成績や国語教育の学力向上に結びつけたのでも、子供達はせつかく読書の習慣が身についても楽しくなくなります。子供達が強制されることなく自由に自分の思いついたことや本を読みたいと思った時に好きな本を読める読書の環境作りの方が大切では有りませんか。点数評価、国語の学力向上、学力テストの成績アツプばかりを子供達に押し付けたのでは、楽しい読書の習慣を身に付けられないばかりか、本を読むのが嫌になる読書離れに又繫がり兼ねません。読書科設け大人の目線で子供達の読書教育を進めるのは間違いでは有りませんか。この記事に取り上げられている有名作家は、点数中心のぺーパテスト盲信者ではないので、作家経歴や人生が、本を読む人の人生にも参考になり、心の糧にもなるのでは有りませんか。文学作品を読むことによって、生まれていなかったその地方の時代や風土、習慣、その作品の書かれていた歴史や社会状況を本を読むことによって自ら学び、今学校教育で忘れられている人間の心の大切さや人間の命の貴さも分かるのでは無いでしょうか。郷土の代表的有名作家の作品に出会い郷土の伝統、文化を継承し、郷土の良さ再認識し誇りと自信を持って地域の活性化が目指せるのではないでしょうか。