世はゴールデンウイークだが、わが家は相変わらず畑仕事に追われている。と言っても、昼寝が長くて労働時間が短くなっているだけでもあるが。そんなとき、コウカアブに似た昆虫がコンクリートに止まっていた。羽が2枚なのでアブかハエか蚊か。複眼が小さく、よく見るとカマキリの顔を思い出す。
全身が黒ずくめというのも怪しい。調べてみたら「ハグロケバエ」(ケバエ科)だった。幼虫が大量発生するときがあるというが、生ごみにときどき大量発生する幼虫は、ひょっとするとコイツかもしれない。ザザムシの塊のような不快感をもたらす輩だ。
そのうちに、物干し竿に似たような黒い忍者がいた。こちらは複眼が蠅のようにでかい。違うものと思ってもう一度調べてみたら、同じ仲間であることがわかった。つまり、最初に見た、頭の小さいのはメスで、次に見た頭のでかいのはオスだったということだ。名前は「ハエ」がついているが、原始的な「蚊」に近い種類らしい。
幼虫は落葉を食べて、有機物を分解して林や森を豊かにしてくれる。成虫は花の蜜を食べる平和主義者だ。飛ぶのが緩慢なのでほかの昆虫の餌になってしまうし、寿命は10日前後だからはかない命なのだ。「地獄虫」なんて呼ぶのはやめにして、地球や森を豊かにする益虫として暖かく見ることにしよう。アブかハエか、それとも「蚊」か。あいまいな日本に住むあいまいな昆虫にブラボーを。