山里に生きる道草日記

過密な「まち」から過疎の村に不時着し、そのまま住み込んでしまった、たそがれ武兵衛と好女・皇女!?和宮様とのあたふた日記

小三治・圓楽の「芝浜」

2023-07-15 10:06:01 | アート・文化

古典落語の世界が面白くなってきた。車の運転をしながら幾度となく聴くと、わかりにくい言い回しもわかってくる。江戸庶民を主人公にした心意気が暖かく伝わってくる。

 十代目の柳家小三治(1939.12生~2021.10没)は人間国宝(重要無形文化財、2014年)にもなった逸材だ。本題に入る前の「まくら」の絶妙な話術には定評がある。今回のCDには残念ながら早めに本題に入ってしまって受け取れなかった。派手さはないが寄席では立ち見ができるほどの名人だ。

             (以下のイラストは、stock adobe.comから) 

  この録音は、1988年10月に行われた独演会のもの。脂がのってきた48歳のときの独演会で、完成度が高い人情噺となっている。拾った金は52両。肩の力を抜いたさりげない語りに、すでに哲学者らしい風格が漂ってくる。孤高の存在と言われた小三治は「落語って面白くて楽しいんだけどね、哀しいんですよ。が、それを楽しく、力強く、くだらなく、生きていくっていう、その凄さ」にこだわる師匠でもある。

           

 一方、五代目三遊亭圓楽(1933.1生~2009.10没)の語りは、アナウンサーにしてもいいほどに歯切れがいい。勝五郎が拾った金は42両。スタートからすぐ夢に始まる出だしは斬新、その意外性がまさに名人級。また、酒の風呂で溺れたいという勝五郎の発想もスケールがでかい。昭和41年(1966年)に開始された「笑点」の第1期生でもある。名人五人の「芝浜」を聴いたが、個人的には五代目圓楽のさわやかな語りがオラには一番フィットした。ちなみに、六代目圓楽は元楽太郎だが彼も冥途への旅に出てしまった。

           

 「釜の蓋が開かない」ほどの貧乏暮らし。大晦日に飲んだ「福茶」は健康長寿・無病息災。研いだ包丁が錆びないようそば殻に入れておく等々、古典落語から初めて知った江戸庶民の暮らしぶりは、きわめて心意気が高い。マイノリティーを取り込む寛容さ、殿様をコケにする反骨精神、洒脱な文化を愛する粋なふるまい、貧乏暮らしにも忘れない心の余裕等、今日のマスコミを跋扈しているお笑い芸人の底の浅さを穿って止まない。それだけに、絶滅危惧種の古典落語が世界文化遺産になることを強く推奨したいものだ。

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