畑の隣に「ハナトラノオ」の花が咲き出している。その花に囲まれるように蝉の抜け殻がいくつかついていた。蝉の最後の脱皮にふさわしい場所がこのハナトラノオだったかもしれない。芭蕉の「静かさや岩に染み入る蝉の声」そのものの世界がそこにあった。ただし、岩ではなく里山の風景の中だ。
この蝉は誰なのだろうか、これが意外にむづかしい。候補としてはアブラゼミかミンミンゼミだった。ミンミンゼミの声はあまり聞こえないのでやはりアブラゼミが有力だ。触覚の3番目が長いのが特徴ということ以外、並べて比較しないとわからない。とりあえず、アブラゼミとする。
外倉庫の屋根から垂れ下がっていたクモの巣に「ヒグラシ」が引っかかっていた。揺らしてみると少しバタバタしたので生きているが体力はかなり消耗しているようだ。このところ、オイラの顔がクモの巣にぶつかることが多い。それほどに、昆虫が多いともいえるわが農園だが、家の中も例外ではない。内緒だけど、年に2回ぐらいは家の中で顔をクモの巣に捕らえられてしまうことがあるくらいだ。台風一過の青空のもと、ヒグラシはきょうも山里に強力な電磁波を送信していた。