Ⅲ. より優れた組織編成
迫害される宣教師たちを勇気づけながら
ルフェーブル大司教の総長時代、聖霊司祭修道会の司祭たちが働いていた多くの国で、教会に対する新たな迫害が起きていた。1964年9月発行の“月の言葉”(Avis du mois)誌の中で、共産主義者の陰謀のもとにあるアフリカの誕生間もない諸共和国が独立する前に予見した状況について大司教は言及した。
彼はこのように書いた。
「親愛なる同僚の皆様、
ミュレリスト(Mulélistes)たちにより占領された地方にとどまっているベルギーの同僚たちは、迫害に苦しんでいる。これはコンゴロ(Kongolo)にいた同僚たちを襲った虐殺が髣髴としてよみがえらせる状況である。しばらくしてポーランドにいる同僚たちは、科学的に計画されていると言ってもいい絶え間ない迫害を受けている。多くの国で、宣教師たちは、屈辱を忍び、追放の脅威にさらされている。そんな今、私たちが、与えられた召命への信仰を新たにする事は優れたことである。」
【訳注:ミュレリストというのは、コンゴ・キンシャサ(コンゴ民主共和国、旧ザイール)出身のコンゴ人の革命家ピエール・ミュルル(Pierre Mulele)を支持する人々のことで、ミュルルは1961年アントワン・ジザンガを首相として反乱政府の頭となった。1963年にはクウィリュ(Kwilu)地域でマイマイの反乱(rébellion Maï-Maï)を起こした。反乱に失敗するとコンゴ・ブラザヴィル(今のコンゴ共和国)に逃亡した。反乱においては、ミュレリストたちはヨーロッパからの入植者、宣教師たちを多く殺害し、子供や孤児も容赦しなかった。ミュルルは1968年コンゴ・キンシャシャに帰国し拷問を受けて死亡。】
【1960年から1967年の間のコンゴ民主共和国の正式名称は、西のコンゴ共和国と同じ「コンゴ共和国」であったため、区別のために、コンゴ・キンシャサと呼ばれ、西のコンゴ共和国をコンゴ・ブラザヴィルと呼んだ。1967年にコンゴ民主共和国と改名する。1971年 - 1997年には「ザイール共和国」と名称を改めたが、1997年から再びコンゴ民主共和国となった。】
【ベルギー領コンゴでのカタンガ戦争(Guerre du Katanga)では、1962年1月1日に政府軍によってベルギー人の聖霊修道会司祭らが20名殺害された。】
聖霊司祭修道会は、コンゴ共和国(コンゴ・ブラザヴィル)で経営していた学校を没収され(1965年8月)、さらには、ハイチとギニアから追放された。
【ハイチでは、フランソワ・ドュヴァリエ(François Duvalier)の独裁の下で1961年に迫害を開始した。】
ギニアからの追放の際には、1967年5月に追放された宣教師が飛行機から降りてくるのを迎えるために、ルフェーブル大司教は、特別にローマからパリに行った。間もなく、ビアフラ戦争(1967-1970)で苦しんだ。
【訳注:ナイジェリアのイボ族がビアフラ共和国として分離させ独立を宣言したことにより起こった戦争。ナイジェリア内戦とも言う。】
1964年に総長は書簡を書いてこう言った。
「過去と現在に渡って同僚たちの耐え忍んできた苦難は、私たちの聖主との一体化と主に似たものにさせてくれるということの直線上にあることは、信仰の目には明らかな事である。」
宣教師たちが、「もし外国から来たという理由だけで迫害されるなら、彼らは殉教者と呼ばれるにふさわしい」何故なら「私たちの聖主とその教会に対する信仰だけのゆえに、彼らが宣教の地に存在するからである。」
このメッセージは、これらの大変動の中で苦しんでいる聖霊司祭修道会の司祭たちから歓迎された。こうしてコンゴ・ブラザヴィルのプワント・ノワール(Pointe-Noire)にある同会修道院長、ブルンベック(Brombeck)神父は、1965年1月8日、全面的な国有化の衝撃により、依然として混乱している目下たちに書簡を書いた。
「これらの事件に直面して、あなた方の中の多くは取るべき態度を理解しました。私たちの義務とは、平静に留まり、労働し、そして志気を保つことです。そこであなた方の一人が私にこう書き寄こしてきました。「私たちは、肉体を失った、全く霊的になった司牧職を継続します。私たちは、生活を通して示す模範と、さらに祈りと沈潜の実践により、証人としての役割を果たします。それもまた使徒職の一つです。少なくともこの使徒職に関しては、迫害者たちも攻撃する事は出来ません。
皆さんの実践的な身の立ち振る舞いに関しては、1964年10月発行の コル・ウヌム(Cor Unum:聖霊司祭修道会の内部誌)に掲載された“宣教戦略”の記事を読むように勧めます。勇気付けの補足を必要とする方々のためには、総長様の先月の゜
月の言葉」をじっくりと黙想する事を勧めます。(総会報N.717参照のこと) 各段落の内容は、現在の状況に密接な関係があります。」
【訳注:「私たちは、肉体を失った、全く霊的になった司牧職を継続します。」と言われているのは、宣教活動にとって最重要で本質的であった学校経営が不可能になってしまったことをさす。】
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