山百合が咲いた。何年ぶりに見たのか思い出せない。昨年まで何年かに渡り、支柱を立てて刈り取らぬように倒れぬようにしたのも裏目に出て、ことごとく持ち去られてしまった。
花期を前にして掘り取っても「枯れるだけ」と言うのが判らないらしい。今年は「絶滅した」と割り切って放置したのが幸いしたみたいだ。
ただ若い山百合だから背丈も花も小振りだ「百花繚乱」「咲き誇る」なんて形容とは無縁な大きさだけど、やはり存在感がある。
何より、近くになると山百合特有の香りが鼻腔をくすぐるのが懐かしい。少年時代には頭痛の種になるほど嗅いだ香りだ。この株の横には大きい茎が花とつぼみを着けて倒れていた。地際に食害を受けて折れてしまったのだが、その部分は黄変していても上部は生きていて小さいながらも花を着けている。「頑張れ山百合!」そんな気分だ。
でも一方では、歌の文句でないけれど「匂い厳しい山百合の触れてみろよと、あの魅惑」なんて雰囲気もある。里山ではあるが深山幽谷に迷い込んだ気分もするのだ。