その先輩とは二十歳の頃に初めてお会いしたのでもう30年近いお付き合いである。
私より10歳年上で20歳そこそこの私にネオン街の歩き方を教えて頂き、今でも月一度は飲みに行き、これまで旅行にもたくさん出掛けた数少ない親しい先輩のひとりである。非常に紳士的な方で普段は敬語で私に話しかけられるものの、杯を重ねる度に言葉遣いが変わり、終盤は解読不能の状態になる可愛い面と、豪快に散財する半面、帰りは必ず終電では帰る真面目な面がある方である。
その先輩に2月終盤、病気が見つかった。「3月から10日間入院する」とのメールを最後に連絡がつかなくなり、何度か連絡するものの返信がなかった。その間に色々なことを勝手に想像してしまう。よくよく考えれば万が一の事があった場合、私の耳に入る確率は少ない環境であることに気が付く。携帯やパソコンの普及は家人や従業員を経由しないダイレクトに連絡が付く点はとても便利だが、繋がりが乏しくなることを痛感する。
先日駄目元で再度携帯へ連絡をするが、やはり留守番電話になってしまった。とりあえずメッセージを残すと、しばらくして本人からメールが届いた。治療中であるものの経過は順調の文字にひと安心するが、当分の間はお酒は控えるとのこと。無事であれば何よりである。世の中では「頑張っている人に頑張れは言わない」と言われて久しいが、私は頑張れって言葉は好きだ。だからあえてエールを贈ります。
頑張って
投薬中は禁酒とのことなので、晴れてまた美味しいお酒を一緒に飲める日を楽しみにします。