先週公開された当社がロケ地になった映画「花腐し」を観に新宿まで出掛けた。
【解説】「火口のふたり」の荒井晴彦監督が綾野剛を主演に迎え、芥川賞を受賞した松浦寿輝の同名小説を実写映画化。原作に“ピンク映画へのレクイエム”という荒井監督ならではのモチーフを取り込んで大胆に脚色し、ふたりの男とひとりの女が織りなす切なくも純粋な愛を描く。廃れつつあるピンク映画業界で生きる監督の栩谷は、もう5年も映画を撮れずにいた。梅雨のある日、栩谷は大家からアパート住人に対する立ち退き交渉を頼まれる。その男・伊関はかつて脚本家を目指していた。栩谷と伊関は会話を重ねるうちに、自分たちが過去に本気で愛した女が同じ女優・祥子であることに気づく。3人がしがみついてきた映画への夢が崩れはじめる中、それぞれの人生が交錯していく。綾野が栩谷を演じ、「火口のふたり」にも出演した柄本佑が伊関役、「愛なのに」のさとうほなみが祥子役で共演。
数日前に制作担当者さんがわざわざポスターとチラシをお届け頂いた。当社のシーンがカットされていないことを確認した上で楽しみにわくわくしながらテアトル新宿の座席に腰を下ろす。過去のシーンはカラーで現在のシーンはモノクロで映し出される演出。もらい煙草と喫煙、飲酒、雨と性交シーンが何度も何度も繰り返し登場する。女性に対しての配慮・気遣いに乏しい男たちと、産みたい・堕したいタイミングが合わない女性との恋愛悲話。昭和歌謡曲が多く流れ、韓国スナックのママ役で山崎ハコが出演している。劇中登場したしゃぶしゃぶ鍋がやたら美味しそうだった。
心の準備が出来る前に当社のシーンは早々と登場する。綾野剛とマキタスポーツのシーンが当社の応接間である。綾野剛が私の座っている席の前でスタンバイし、奥の応接間へ進み、応接間のマキタスポーツがギター片手に「君は天然色」を歌うシーンが何度も何度も繰り返していたあの一年前の思い出が鮮明に蘇る。ちなみに当社のシーンは現在の設定なのでモノクロなのだが、これが実に深みがあった。
【テアトル新宿の階段に飾られていたスチール写真を拡大。奥にマキタスポーツ、手前に綾野剛が座っている】
137分の上映時間のうち、当社のシーンはほんのわずか数分であったが予想以上に長く感じられた。そしてクレジットエンドでの撮影協力に「やな瀬不動産」の文字が下から上に流れていく。通常は黒の背景に白文字であるが、本作品では途中から映像に戻り、二人のカラーのカラオケシーンに重なって登場する。それを見ながらひとりじわーと感動してしまった。改めて製作スタッフさんのお心遣いと貴重な経験に感謝しつつ、映画好きの亡母に報告した。