北海道昆虫同好会ブログ

北海道昆虫同好会は北海道の昆虫を中心に近隣諸国および世界の昆虫を対象に活動しています。

シロベニヒカゲの出現機序の推定 シロベニヒカゲ物語 その六

2016-01-09 12:19:49 | シロベニヒカゲ
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シロベニヒカゲ物語 その六

シロベニヒカゲの出現機序の推定

当初、シロベニヒカゲは♀ばかりで移行型にも気づいていなかったので性染色体性劣性遺伝であろうと考えていた。

しかしシロベニヒカゲ♂の発見や移行型の存在から、それでは説明できなくなった。

とはいえ、発生地が狭い範囲に局限され、約 1%の頻度で出現することから、やはり遺伝的な原因の関与も考えられるが詳細は不明である。

1995年にシロベニヒカゲ2♀♀から多数人工採卵して飼育してみたが50頭ほどが年内羽化し、すべて通常型ベニヒカゲであった。

興味深いことに、2005年8月10日にシロベニヒカゲの産地からほど近い西別岳で同様のコヒオドシの白化型1♂が採集されており、その色調は驚くほどシロベニヒカゲに酷似している。

シロベニヒカゲのような白化型がコヒオドシのみならず、さらに他の蝶類においても発見されることがあればこの地域に特有の現象と言えるかも知れない。

清里峠から西別岳にかけてはとても霧が発生しやすく気温の寒暖の差が著しい。

この微妙な日内温度差が蛹化直前の終令幼虫や、羽化間近い蛹内での橙色色素の形成を妨げている可能性はないだろうか。

下がシロベニヒカゲ。

下がシロベニヒカゲ。

下がシロベニヒカゲ。

下がシロベニヒカゲ。

下がシロベニヒカゲ。





一瞬、エゾツマジロウラジャノメの♀?に見えたりするシロベニヒカゲ。


               この項、続く。



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シロベニヒカゲへの移行型の存在   シロベニヒカゲ物語  その五

2016-01-07 20:55:53 | シロベニヒカゲ
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シロベニヒカゲ物語  その五

シロベニヒカゲへの移行型の存在

普通型ベニヒカゲから前翅表の橙色斑が脱色しつつある1♂2♀♀が採集されており移行型とでも言うべき個体かも知れない。

ただ、これらが本質的にシロベニヒカゲと直接の関連があるかどうかは不明である。


下がシロベニヒカゲへの移行型♂。




この♀は左上翅表の橙色斑が脱色しつつあるシロベニヒカゲへの移行型。




上は通常型キタベニヒカゲ♀  下が シロベニヒカゲ♀




  この項、続く。


シロベニヒカゲの性比   シロベニヒカゲ物語  その四

2016-01-04 20:51:54 | シロベニヒカゲ
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シロベニヒカゲ物語  その四

シロベニヒカゲの性比

シロベニヒカゲはほとんどすべてが♀であり、当初♀のみと考えていたが、ついにシロベニヒカゲ2♂♂が採集され、少ないながら♂のシロベニヒカゲも存在することがわかった。

下がシロベニヒカゲ♂と思われる個体。

これらはとても小型な♂(前翅長20mm)で矮小型といってもよい大きさであった。

性標はしっかりと目立ち北海道産ベニヒカゲ(E.neriene)の特徴をよくあらわしている。

これらの他にも、その後同様のシロベニヒカゲ1♂が採集されている。

下がシロベニヒカゲ♂と思われる個体。






ヨツバトウヒレンで吸蜜中の通常型キタベニヒカゲ♂

手にとまって汗を吸う通常型キタベニヒカゲ♂




ヨツバトウヒレンで吸蜜中の通常型キタベニヒカゲ♀。


          この項、続く。



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シロベニヒカゲ発生頻度   シロベニヒカゲ物語 その参

2015-12-31 14:53:42 | シロベニヒカゲ
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シロベニヒカゲ発生頻度






手前がシロベニヒカゲ♀。 むこうが通常型ベニヒカゲ♀。ヨツバトウヒレンで吸蜜中。



たとえば1999年8月14日(晴れ)、♂の盛期が過ぎ♀が多い時期だが ベニヒカゲ36♂♂170♀♀を採集した。


おびただしい数のキタベニヒカゲのなかにシロベニヒカゲが散見された。
 


通常型キタベニヒカゲ♀。ヨツバトウヒレンで吸蜜中。




このとき新鮮なシロベニヒカゲ5♀♀を採集している。



シロベニヒカゲ♀。ヨツバトウヒレンで吸蜜中。


ベニヒカゲ総採集数の2.4%がシロベニヒカゲであったことになる。


通常型ベニヒカゲは♂の汚損個体が多く♀も破損個体がみられ、この時は新鮮個体しか採集していないので通常型ベニヒカゲの実採集総数はもっと多い。



従って実際のシロベニヒカゲの出現頻度はさらに低く、1%前後かと推定している。


         この項、続く。




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シロベニヒカゲの運命  シロベニヒカゲ物語  その弐

2015-12-29 20:56:12 | シロベニヒカゲ
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シロベニヒカゲ物語  その弐

シロベニヒカゲの運命

シロベニヒカゲは1991年の発見以来、発生数に変化はあるものの、2007年まで、ほぼ毎年採集されてきたが2008年には発見できなかった。






発生地は100m四方ほどの極めて狭い地域であり周辺一帯に飛ぶおびただしい数の通常型ベニヒカゲの中に散見される形で採集されてきた。



これらベニヒカゲ発生地は当初はチシマザサやスゲのほか、豊富なヨツバトウヒレンなどをまじえた亜高山帯を思わせる背丈の低い植物が主体の特異な草原的環境であった。


近年、発生地付近に急速な環境変化がおこり、広範に背の高いクマザサが広がりはじめ、食草と思われるスゲ類や重要な吸蜜植物であるヨツバトウヒレンなどがクマザサの下に埋もれてしまうようになってきた。

そのためベニヒカゲ個体群も発生数が激減しはじめ、それにともないシロベニヒカゲも激減してきた。

おそらくこれら個体群は早晩時間の経過とともに消えてゆくものと思われる。

このようなベニヒカゲ発生地の盛衰は北海道各地でよくみられてきた現象である。

           
                この項、続く。



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