モンゴルのテネデウスウスバシロチョウ Parnassius tenedius
モンゴルのテネデウスウスバシロチョウ Parnassius tenedius はウランバートル近郊のTerelji 、北部のフブスグル湖周辺、アルハンガイの山地などで少ない記録がある。
調査は極めて不十分でモンゴルにおける分布の実体像は不明。
Terelji産♂裏面
早春の蝶で個体数も少ないためか、採集例、観察記録ともに少ない。
Terelji産♂表面
Tereljiでは1995年5月14日1♂ 伊藤亮氏採集(新鮮) ,1995年7月2日1♀ 浜田史郎氏採集(やや汚損した未交尾個体)、
1996年5月20-21日4♂♂(新鮮ーほぼ新鮮)、および他に3個体目撃の記録がある(矢崎康幸・矢崎和子)。
また50Km East of Ulan Bator にて1992年6月1-2日2♂♂ 細谷宏氏採集(多少汚損)の記録もある。
2002年6月21 ~22日、矢崎康幸、菱川法之氏はフブスグル湖西岸波打ち際を低く飛翔している6♂♂を確認しているが汚損個体が多かった。
アルハンガイのソバガラハイルハン山山麓(約2000m)のガレ場では2002-6-24~25 に大井伸一、佐藤國男、樋口輔三郎氏らの調査隊が 8♂♂2♀♀を採集しているが他に汚損個体も見られたという。
これらの数少ない確実な資料より推定するとモンゴルヘンティ山地、アルハンガイの山地、フブスグル湖周辺での発生は5月中旬より始まり、
恐らく5月下旬~6月上旬が盛期、汚損した♀は7月上旬にも見られるということになろうか。
Terelji産♂裏面
Tereljiの5月中旬は、沢筋や湿地の日陰では厚い氷がはっており、気温が下がれば雪が降るので、しばしば防寒コートが必要となる。
Terelji産♂表面
草原は見渡す限り殺風景な枯れ野原のようで、山の南向き斜面には黄色のオキナグサの花、キジムシロの黄色い花、岩場にはエゾムラサキツツジの濃いピンクの花がわずかに見られる。
モンゴルの早春に枯れ草の中から黄色いオキナグサ。
Terelji産♂裏面
テネデウスウスバの飛翔は緩やかであると述べられることが多いようだが必ずしもそうではない。
標高1800m前後の山頂付近の広大なガレ場をさっそうと飛翔する姿は印象的である。
早春の松の若葉を背景にふわりふわりと飛ぶ様は、天女の舞いを思わせる。
Terelji産♂表面
赤色斑紋のまったく消失した個体( f.nigroocellata ). Terelji の広大なガレ場を飛翔していた個体。
表面
裏面。
どこかを目指し、一直線に飛ぶ個体もある。
伊東氏の採集した1♂は赤いネットに一直線に飛んできたという。浜田氏の採集した1♀は、白いネットに一直線に向かってきたという。
筆者も遠くからガレ場に置いてある白いネットにまっすぐ向かってきた個体を目撃している。
モンゴルにおける食草や幼生期、成虫の吸蜜植物などは良く調べられていない。アルタイ山脈などでは 食草として Corydalis capnoides 、成虫の吸蜜植物として Iris humilis が知られている。
幼虫は夏までに蛹化し、蛹越冬で翌年春に羽化するという。
To be continued.
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