ブータン 南部国境プンツォリンのルンタと艶やかなツマベニチョウ。
ブータンでは国民の75%がチベット仏教を信じており、これがブータンの国教とされています。そのためブータンを旅行するといたるところにチベット仏教の気配を強く感じます。街の近くでとりわけ目に付くのが川や谷あいにびっしりとかかっているルンタという布。
洗濯したおしめを干しているわけではありません。れっきとした宗教的祈祷布で、多くは色あせていますがよく見ると五色あって経文がぎっしりと書かれています。五色は自然界の5要素を意味しており 青は空、白は雲、赤は火、緑は水、黄色は大地を表します。
この旗がハタハタと風にたなびくことで、お経を読むのと同じ功徳に授かれるといい、ただマニ車を回すだけでお経を唱えると同じ功徳があるという、チベット仏教独特の省エネ仮想読経思想に由来するものだと感じます。
さらに、ルンタがハタハタと風にたなびくと有難いチベット仏教の教えが風にのって遠くまで伝わって行くとも考えられているようです。
超仏教国ブータンでは、仏教の教えが強く浸透し、殺生を極端に嫌います。大きな象にも小さなアリにも命があって輪廻転生思想により来世では自分はアリに生まれ変わっているかもしれないからだというわけです。しかし家畜などのお肉は大好きなので、何かたくみな説明があるのかもしれません。
私はチベット仏教にはあまり興味はなく自然、特にブータンの蝶類に強い興味があったわけで、当初手当たり次第に蝶を採集する私たちを見て、ガイドやブータンの人たちは明らかに眉をひそめているのを感じました。
現在、私の手元には当時採集した多数のブータン産蝶類の標本がありますが、その後しばらくしてブータン国内で採集した生物標本は蝶も含めて国外持ち出しを禁止する法律ができています。従って、私のブログに登場するブータン 産蝶類標本はそういった法律制定以前のものであることを、あらかじめお断りしておきます。その様な気配をしばしば感じたため、1990年代から、私はブータン では生態写真撮影や手のひら写真がなんとなく増えていたのでした。
川にかかるルンタの旗があまり目につかなくなった頃、色々な蝶が現れてきました。
川に沿ってツーンっ、ツーンと大きくつんのめる様に飛んでいるツマベニチョウはプンツオリン郊外では稀ではありません。これらは日本産とあまり変わったところはなく原名亜種 Hebomoia glaucippe glaucippe に含まれるのでしょう。
メスシロキチョウ Ixias pyrene familiaris のオスも、生きている個体は展翅標本と異なりみずみずしく美しい。この個体は翅表の黄色調がやや明るい。
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