今を盛りの沈丁花に潤いをもたらす春の雨 終わりが近い寒アヤメに春の雨が寄り添う
息をのむ戦いが終わってホッと一息。世界を制することの難しさ、力と力を合わせて戦うことの大切さ。
色んなことを教えた上で最高の贈り物をしてくれたWBC、ワールドベースボールクラシック。改めてその強さと爽やかさに浸っている。
テレビは甲子園選抜高校野球が雨で中止となってせいもあって、WBCの余韻放送満載。そのうち、選手団がフロリダから羽田へ帰って来ることで、迎えるファンの熱狂を伝える。選手や監督一同は、休む暇もなくお揃いのスーツに着かえて凱旋記の者会見。気の毒なほどの忙殺ぶりである。それでも、賞賛の嵐の中では忙しさもまた一つの勲章に思えていることだろう。
今日は朝からの雨。菜種梅雨とか菜の花くたしとか言われるまさに春の雨。満開の沈丁花や終わりに近い寒アヤメに、しっとり雨粒の風情を添えている。この季節は雨もまた春らんまんの主役を務めるのが心地いい。
芳香を放つ沈丁花もその盛りを終える頃、高校受験や大学の合格発表が行われる。発表の掲示板に自分の名前や受験番号が記載されていたら、胸のうちではWBC優勝以上の喜びが湧き上がっているのだろう。陽気な春とは裏腹に、掲示板に自分の名前を見出せない人は捲土重来を期すか、新たな進路を模索することになる。人それぞれである。
沈丁花の香りは、この上なく女性の白粉を思わせる甘さを持っている反面、厳しい現実を噛み締めるほろ苦さを含む香りになったりする。まさしく春の断面を見る。40数年前に初めて手掛けた随筆「春の断面」は、相当な時間を経た今も変わらず生きているようだ。ただ、人生は長い。スタートラインに過ぎない今が生涯を決めるわけではない。むしろ幅広い選択肢に前に立ったのだから、自らの可能性を試す絶好のチャンスでもあるという考え方もある。ということも書き添えたのを思い出している。
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