マタタビ
作る人も居なくなった山裾の畑跡に、
何株かの手入れもされず半ば野に帰った“マタタビ”がある。
その蔓の下で、ある年山芋を探していて、地面に落ちている花マタタビを見つけた。
或る種の蜂が卵を産み付けた物だと言う。翌年時期を見計らって採りに行った。
形のよい俗に男と呼ばれるものは既に取られた後だったがそれは、狙いどおり残されていた。
数十粒であったが念願のものが思いがけず身近で手に入り嬉しかった。
早速塩漬けにして一週間程経って口にしたが普通のマタタビと違うのはその歯切れの良い、口当りだった。
マタタビを漢方薬として使う際は「木天蓼」と言う名前でこの花マタタビを珍重すると言う。
我家の裏にも何本かのマタタビが植えてある。マタタビは雌雄異株で一本では実が付かないと聞く。
何年かに渡り知人に、苗を貰っては植え、貰っては植えてみたが、中々根付かなかった。
原因は分っていた。猫である。
植える度に、思わぬ幸運に大喜びで、擦り付いていたに違いない。
家にも近所にもしばらく猫の姿が見えなくなった頃に、根付き何時の間にか実を付けた。
二升ほどの十分自家用に足りる量がなってくれる。