アケビ
野山を駆け巡って、遊ぶ子供も少なくなった。
そして、食べ物も豊かになり、おやつとしての木の実を探す子供の姿は見かけなくなってしまったように思える。
今は「アケビ」を採る人も少なく、少しその気で秋の藪に入れば、容易に手に入る。
熟すと、紫色の果皮が割れて口を開き、種ばかりの様な甘い果肉が顔を覗かせる。
甘い果肉を頬張り、種は行儀悪く、口から噴出して飛ばす。
子供はさして、喜ばなくなったが、私の様な酔狂者が喜ぶ事となる。
最近雑誌でも読んだが、山菜の本場山形県のある地方では「山形じゃアケビの中身は熊の食いもんで、
皮は人の食いもん」とあり、はたと膝を打った。
そう、人は「アケビ」の果皮を食べるのだ。採ってきて、実を取り果皮だけ残す。
その中に肉味噌を詰め、フライパンの上で焼く。
肉味噌は、挽肉、タマネギ、人参など好みの具を微塵切りにして炒める。
アケビにそれを詰め、口が開かぬよう木綿糸でグルグルと巻く。熱したフライパンに油を引き、
アケビを並べ、蓋をして蒸し焼きにする。皮の色が透き通るようになったら出来上がりだ。
皿に取り、糸を除き、掻き混ぜて食べる。アケビの新芽「木の芽」と同じ様に、ほろ苦い大人の味だ。
情報が簡単に行きわたる時代となり、食べ物には国境ばかりか、県境さえも無くなって来たようだ。