夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

子供の頃 観て好きだった映画さん

2015-07-24 16:18:34 | 映画
例によってーと 打とうとしたら「霊に寄って」と変換された・笑
霊が寄る
夏らしいけど ちょっと遠慮したい^^;


さて 例によって BSプレミアム 今日は1956年のアメリカ映画「バス停留所」でした

モンタナの牧場からロデオ大会に出場するためにアリゾナ州のフエニックスへやってきたカウボーイのボー(ドン・マレー)は 歌手のチェリー(マリリン・モンロー)に一目惚れする
しかし女性に接したことのないボーの言動は乱暴で 

けれどー


詳細は観て楽しんでいただくー(手抜き^^;)として

好きなのはラスト近くなんです

成功を夢見ながら 男のおもちゃになってきて 生活に疲れているチェリー

荒っぽいけどボーの純朴さを好ましく思うようにもなってきます
でも 自分の荒れた過去を思うと 身が縮むようでもあるのです

ボーの荒っぽさは 女性に触れたことすら一度も無く どういう態度をとればいいのかもわかっていなかったせいもありました


道路が通れるようになり バスも出発できます

それはボーとの別れも意味します

カウンターに座り暗い表情のチェリー


ーふしだらな生き方をしてきた女なのーいっぱいの男を知ってるーと告白

付き添いの男性のバージ(アーサー・オコンネル)から 男をたくさん知ってる女だと言われたーなどと答えるボー


だから あなたには似合わない女なのーとチェリーは言いたいんです


いよいよバスが出発の準備


ボーがチェリーの傍へ来ます

バージが言うんだ 君はたくさん男を知っている
俺は女を知らない
2で割れば丁度良くなるって

その過去が今のチェリーをつくっている 今のお前にホレてるーとボー

チェリー「そんな優しい言葉 初めて聞いたわ」

ボー「一度 ふられたのに口説くのには勇気が要る」

チェリー「勇気は要らないわ まったく必要ないわよ」

ボー「今は勇気のかけらもない だから 心のままに話すぞ 一緒に来てほしいと前より強く思ってる」

チェリー「行くわ! あなたとだったら どこへでも行くわ!」

ボー「本気か?」

チェリー「ついていく 本当よ うそじゃない ずっと一緒」

ボー「夢みたいだ」


そして建物の中にいる人たちも笑顔

ボー「彼女と結婚する!」

チェリーはその居合わせた人々に笑顔を向ける「あんなに優しい男性(ひと)だったなんて」


ボー「牧場に天使が来る」



ずっとボーについていてくれたバージは モンタナに帰るバスに乗らないと言います「わたしが居なくても大丈夫だろう」

チェリーも「バージ 一緒に来て あなたが大好きよ」

ボーも力づくでバスに乗せようとまでしますが バージの決心は固いのでした
「牧場の(自分の)荷物は 若い衆にやってくれ」

ーじゃあな 別れはつらいー

そこでボー チェりーが薄いコートしか着ていないのに気付き「そんなコートじゃ凍えるぞ」
自分の上着を脱いで チェリーに着せ掛けます
その優しさと上着の温かさにチェリー なんともいえず嬉しそう

そして自分のスカーフをボーの首に巻きます


バスに乗って 手を振るボーとチェリー

見送るバージほか バス停留所の人々も笑顔

そして男性の声で歌が流れます
「何もかもあげるよ 家も 結婚指輪も この俺も 結婚してくれるなら」


マリリン・モンローはセクシーなだけーとか 大根とか悪く言う人々もいて そのことをマリリン・モンローは気に病んでいたそうです

けれど「バス停留所」での表情一つひとつ 仕草 視線 
ちゃんと演技力ある 役柄に説得力をもたせられる女優さんであったと思います


無骨なカウボーイと ツキも無かった歌姫の

この映画を観た子供の頃 なんてロマンチックなのだろうーと思いました

随分と久しぶりに観ましたが

やっぱり いいなーって思います

ボーに付き添うバージ役のアーサー・オコンネルがまたあったかで

主役の二人だけでなく 共演の方々もいいのです


おおらかさと 夢があります



恩田陸著「クレオパトラの夢」 (双葉文庫)

2015-07-24 09:51:55 | 本と雑誌
クレオパトラの夢 新装版 (双葉文庫)
恩田 陸
双葉社




{アジアの西の果て、荒野に立つ直方体の白い建物。一度中に入ると、戻れない人間が多くいるらしい。
その「人間消失のルール」を解明すべくやってきた男たちは、何を知り得たのか?
人間離れした記憶力を持ち、精悍な面差しで女言葉を繰り出す、魅惑のウイルスハンター・神原恵弥(かんばら めぐみ)を生み出した記念碑的一作}
(本の帯からの抜粋です)
そのシリーズ第一作が「MAZE(メイズ)」


続く第二作が本作「クレオパトラの夢」です

シリーズ第三作は「ブラック・ベルベット」


本作は裏表紙の紹介によれば
{北国のH市を訪れた神原恵弥。
不倫相手を追いかけていった双子の妹を連れ戻すという名目の裏に、外資製薬会社の名ウイルスハンターとして重大な目的があった。
H市と関係があるらしい「クレオパトラの夢」と呼ばれるものの正体を掴むこと。
人々の欲望を掻きたててきたそれは、存在自体が絶対の禁忌(タブー)であったーー。
謎をめぐり、虚実交錯する世界が心をとらえて離さない、シリーズ第二作!}



ーなによこれ、寒いじゃないのー
この感想は容姿端麗な男性のもの 
主人公の神原恵弥は 留守がちの父親を除き 女性ばかりの家族で育ち 違和感なく女言葉で考え 話すのだ

まずは これに慣れなくてはいけない

恵弥の妹の和見がまた一筋縄ではいかない女性で 作中その言動に恵弥は振り回される


和見の不倫相手の若槻博士は クレオパトラの夢の鍵を握る人物であったが 恵弥と会う前に死んだ

本当に事故死ーなのだろうか?


姿を消す和見


和見の部屋に押しかけてきた防衛庁の男達


そして和見の部屋と 若槻博士の死んだ家が火事になる



過去にもH市であった大火事
若槻博士が持っていた古い地図


恵弥に話しかけてきた若槻博士を知るという多田


続く何者かによる尾行


若槻博士の未亡人の実家のこと


時に変装もして動く恵弥



姿を消していた和見と再会した時から 謎は解け始める




クリスマスをまたぐ12月下旬の物語

雪は降る


寒いのは苦手の恵弥が解いた謎はー



舞台はたぶん北海道 札幌に函館にーと地名をあてはめながら




作家の三浦しをんさんによる解説も楽しいです



登場人物の個性だけで 読めてしまう一冊でもあります

帰宅してお昼ご飯を食べながら

2015-07-23 08:59:35 | 映画
BSプレミアムで「サンダーボルト」(1974年 アメリカ映画)を観ました

サンダーボルトはクリント・イーストウッドの役名です

有名な強盗犯という役柄

のどかな田舎町の教会へ停まる車 レッド(ジョージ・ケネデイ)が下りてきます
いつもの仏頂面 

場面変われば 中古車店 足をひきずるように歩く若者ライトフット(ジェフ・ブリッジス)
試しにエンジンかけろよーと店主に言われ 「義足だから乗りこなせるかどうか」などと言う会話のあと 急に発進
新古車の派手なトランザムを まんまと盗んでいきました

教会の中には神父姿のサンダーボルト 
ぺたんと撫でつけた髪形も聖職者のいでたちも全く似合っておりません

教会に入ってきたレッドは銃をぶっぱなしー

サンダーボルトは走って逃げます

ちょうど走ってきたライトフットの車に飛びついてー

追っかけて来るレッドの車


バンバン撃たれるトランザム -ああ なんてもったいないー・笑


初対面の二人はいつしか意気投合
ま そこは色々ありますが


有名なサンダーボルトと知ったライトフットは感激です


50万ドル隠しておいた建物は無くー
じゃあ もう一度強盗やろうよーって話になって その強盗のための資金を働いて稼ぐ男達
大金目標に レッドと相棒(ジェフリー・ルイス)も加わってー


強盗するために マトモに働く発想が何処かおかしい
妙にのどか


その計画のためのあれこれも面白いですし
二度も被害に遭う男も気の毒です


で 些細なことから破綻 レッドの相棒は死に

凶暴な本性むきだしにレッドはライトフットとサンダーボルトに襲い掛かり

殴るわ 蹴るわ

よくぞ二人が生きていたーと思うくらい


車と大金持って逃走のレッド

しかし警察に見つかり

レッドは獰猛な犬に食い殺されます

凶暴な男は より凶暴な犬に遭遇したのでした

「最悪な死に方だ」
と警官が言います



ヒッチハイクで車の荷台に乗せてもらったサンダーボルトとライトフット

おろしてもらって見回すとー
なんと見覚えのある建物が!

もう無いと思っていた小学校

記念建造物として移築されていたのです


広い道路を横切り校舎の中に入ると見学客 夫婦らしき二人

妙な雰囲気に二人が出ていくと
ライトフットが外の見張りをして
サンダーボルトは黒板の裏に隠してあった50万ドルを見つけました


移築されたのにーそのまま あったのですね



サンダーボルトは新車のキャデラックを買って運転して戻ります

待っていたライトフットを拾ってー

ライトフットは山の向こうに行こうかーと
しかし話しているうちに様子がおかしくなります


ガンガン レッドに蹴られた後遺症からか ライトフットは大金は得たものの死んでしまいます


車を停めて ライトフットのー相棒の死を知るサンダーボルト


この時ジェフ・ブリッジスは20代半ば


1930年生まれのクリント・イーストウッドは44才あたり



なんともいえない表情になったサンダーボルトは 助手席にライトフットを座らせたまま 運転します
ドライブを続けます

その場面にかぶる歌の歌詞が いいです

夢見た大金は得たけれど 死んでしまったライトフット

そのライトフットを失ったサンダーボルト




この時代 片方が死ぬ映画 結構あったよねーなんて そこも懐かしく思い出しながら

監督はマイケル・チミノ氏



この時代の映画は{懐かしさ}が勝ちます


それぞれの俳優さんの若さも


あ カリー役というゲイリー・ビジーさん うっかり見過ごしてしまいました

もっと真剣に観ていれば よかった^^;



空き箱 大好きなんです

2015-07-23 08:53:40 | ペット
予約しておくと発売日の一日前に届くモノらしい





ポスターの特典付きで届いていた

長男は倖田來未さんのフアンです


それが入っていた空き箱を 長男が部屋の隅に置いていてー

「自分のモノよね」と入ったのが 瑠奈さん






「文句ある?」と 言いたげです

ピエール・ルメートル著「死のドレスを花婿に」(文春文庫)

2015-07-23 00:53:57 | 本と雑誌
死のドレスを花婿に (文春文庫)
ピエール・ルメートル
文藝春秋



「その女アレックス」より先に書かれた物語


殺人犯として逃避行を続けるソフイー
しかし彼女はかつて 愛する夫がいてその子供を妊娠しており 幸せな結婚生活を送っていた


全ては偏執的に彼女を狙う男フランツの為に始まった


そのことを ソフイーは 逃亡に利用するつもりで フランツと結婚してから知る


この男が 愛する夫の命を奪った
ばかりかー


ソフイーは復讐を誓う




ソフイーを殺す目的で追い続けたフランツだが いつしか彼女を心のどこかで愛しー







誰だってソフイーのような目には遭いたくないだろう
全部奪われたらー


「その女アレックス」との共通点は 犠牲者の反撃



訳者あとがきと千街晶之氏の解説をまず読んで 買うか(読むか)どうか判断されるといいと思います

独特の クセのある作風の作家さんですので
好き嫌いは分かれると思います



「鼠喰らいの家 終焉」

2015-07-22 20:58:17 | 自作の小説
育った家は普通だと思っていた

そんなに大きな問題にならないだろう

いつか慣れるはずだと
深刻に考えたくなかったのかもしれない

迂闊といえば 確かに迂闊な話だった


嫁を取る話が出て

気になる娘がいたのだ




父から譲り受けた部屋で見つけた亡き母の写真

大振袖姿で困ったような笑顔のーその写真の裏に 父の字で「与えられた娘」とあった
別にある婚礼の時の写真が無ければ それが母の写真とは気付かなかっただろう

かしこまった表情の父の横で緊張した母


母はわたしを産んで 間もなく死んだ
わたしの物心がつく前に
生きた母の姿を見たことは無い

父に尋ねると「あれは 弱って死んだ」
とだけ言った


その母によく似た少女を見つけた時は嬉しかった


足腰の鍛錬と言っての遠歩き


それで見つけた優しい少女
汗を拭いてると「喉が渇いているの」
そう言って 摘んでいた木苺をくれた

家では見ることのできない自然な笑顔

その少女が女学校を卒業し戻ってきていることを知っていた


その娘が嫁にほしいと言うと 祖母はひどく嫌な顔をした
母親代わりの父の従姉は言う
「良いじゃありませんか 新しい血を入れないと濁りますでしょ」



話をとりもつ人間とその娘の両親とその娘は家に来た

しかし 娘の調子が悪くなったとかで 会う前に帰ってしまい 病気になって とてもこのようなお屋敷の嫁にはなれないー
そう断りの返事が来た



少しして祖母のしたことを知った
祖母は他に嫁にしたい娘が 親戚筋にいて
壊したのだ

試験だーと父の従姉には言ったようだが


「目の前で 鼠を食べてあげたのよ 震えあがってね 根性の無い娘だこと」
そう 祖母は笑っていた


そうか
 そうか

ならば 要らぬ

鼠を食らう家の方が 異常なのだ
それを家風とする方がー



わたしは鼠を食らうまいとした
だがー

食べないでいると飢えたようになる

こんな体になってしまっているのだ


この家で育つ間に


普通の人間では無い 化け物だ


野鼠を食う猫や鼬や狸や狐

あのモノらと変わらぬのだ

あさましい

おぞましい



外の家から来た母も だから生きられなかったに違いない

この家ではー


化け物の家

絶えた方がいい


嫁は だから 要らぬ

子など作らぬ



祖母へのあてつけの思いもあった

失恋の苦しさもあった



やがて あの娘の母親が亡くなり 葬儀に来ていると聞いた


見にいかずにはいられなかった
会えないかと



墓地に出かけて あの娘そっくりの -娘を見た

あの娘の娘なのだと聞いた


ああ あの娘は幸せになったのだ



諦めと ほっとした思いと なんともいえぬ寂寥とー



その少しあとに 祖母が死んだ

譫言を言いながら

脅えたような苦鳴と

ひどく恐ろしいモノを視(み)たような死に顔だった




一族の者は少しずつ減っていき

父の従姉も病気になった
祖母と同じように 譫言を繰り返す
その言葉の中には わたしの母への詫びもあった

ー好きだったというなら 食べればよかったのよ 鼠くらい  弱いから負けたのではないの
お門違いだわ
ああ ああ 許して 赦してちょうだいー

父の従姉は 父が好きだった
祖母に言われて 父に女性を教えた

嫁いできた母が妊娠し 父と居室を別にさせて 


父には 母は子供を産むモノに過ぎず
母は孤独と絶望のうちに死んだのだ
座敷牢に閉じ込められて


そんな目にあったのは 母だけではなかった

一族のうちに 合う年頃の美しい娘がいなければ もしくは新しい血を入れるために 時々外から嫁を迎えた

大概の娘は 鼠を食らうことに耐え切れなかった

子供を産んだ娘は死んでいく
座敷牢の中で


新しい血と跡継ぎと 美しさ

なんという人でなしの一族



父の従姉が苦しんで死ぬと 父は言った
「お前が終わらせるのか」

この家をー



そういうことになる


従姉の葬儀の後で 父は首を吊って死んだ



その夜 風が強く吹き始め 間もなく落雷があった

屋敷を取り囲むように火が拡がった

業火というのか


燃える炎はとても綺麗な色をしていた

葬儀で屋敷に居た一族の者たちはー迫る炎に怯えて逃げ惑う


木の葉のような形のモノが一族に飛びかかっていた

その木の葉のようなモノにはしっぽがある


燃える鼠

火に追われたものか それが屋敷に逃げ込んできたか


いや

鼠は炎と共に復讐にやってきたのだ



さあ 来い
鼠よ

受け入れよう
その火を

わたしも焼き尽くせ



だがー 鼠は来ない



息は苦しいが 

ーああ 煙にやられたか


足に力が入らなくなり へたりこむ


薄ぼんやりと誰かがいるのが 見えた


通せんぼをするように 両手を広げて鼠を防いでいる
鼠は近寄れない


それは ああ 母だ
若くして死んだ母

わたしよりも若い


母はわたしに笑いかけた


母がわたしの手を取る


ー一緒に行こうー


はい おかあさん



「夢は覚める・・・」

2015-07-22 19:27:45 | 自作の小説
夢のようだった・・・・・


山之森のお嫁様になれるなんて

山之森の若様は それは美しい顔をしていて背も高くて


婚礼が終わって 夜 布団にその人の腕が伸びてきた時も ずっと目を瞑って震えていた


子供が産まれるまで 幸せでいられた


「跡継ぎを産むのが一番の仕事です ほかのことは それから覚えたらいいのです」

夫の従姉という女性が そう言って「わからないことは聞いてください」


離れで産気づき そのまま出産


「これは この家の仕来りなのです」
一週間後 乳母に子供を渡すように言われた

「親戚筋の乳母が この家の家風を 後継ぎが赤ん坊のうちから教えていくのです」

それから「ゆっくり お体 おいといなさい」
親切だった従姉は離れていった



夜ー



ふふふ・・・・ふふふ・・・・・

女の密やかな笑い声が聞こえる
妙に淫らな響きの


ある夜 その声を確かめたくなった

その声は あろうことか 夫との部屋として与えられた座敷から聞こえてきていた



ー若く美しい奥様が恋しくはならないの?ー
ー  -

ーいけない人ね 離れで寂しくしていてよ -


それは優しくしてくれた従姉の声

ーこれで新しい血も入ったことだし ねえー


それ以上 聞いていられなかった 部屋に逃げ帰ろうとして こわばる足がつっかかり 音を立ててしまった

「誰っ」
恐い声が聞こえた

そこには白い猫
障子が開いて 夫の従姉は猫が咥えているものを見つけた

「あら スズや 良いコだこと 持ってきてくれたのかえ 賢いコだね お前は」

従姉は猫の口から それをつまみあげた

「-さん いらない 美味しそうよ」

「-」

「あら いいの こんなに美味しそうなのに」

従姉は生きたままの鼠を口の中に放り込んだ


部屋に戻り 布団にくるまり ガタガタ震えていた


「-さん いらない」
と従姉は言った

ということは 夫も食べるのだ 鼠を
まるで おやつのように

この体に その鼠を食べる口が触れたのだ
鼠を掴む指がー


あああっ


その悍ましさ


美しい夫の顔が 従姉の冷たく整った顔が 鼠のよにすら感じられる

自分の産んだ子供すら化け物のように




翌朝 従姉が離れに来た
「お加減が悪いのですって」


そしてガタガタ震える様子を見て 優しい笑顔で言った
「昨晩 見ましたね 」


それは 鼠を狙う猫のような目だった


「そろそろ家風に慣れても良い頃です  特別なおやつを差し上げましょうね」


従姉は籠に入った二匹の鼠を置いて行った



次の日には また二匹

「この家の嫁になるなら 食べないと 飢饉の折りには 何を食べても生き延びる その心構えが必要なのです」


毎日毎日 従姉は鼠の入った籠を置いていく

それ以外の食べ物も飲み水ももらえなかった


籠の中の鼠は干からびて死んだ

従姉は怒る
「食べ物を無駄にするなんて」



いくらお腹が空いても どうしてもー鼠を食べることはできなかった


座敷が汚れたから掃除をするーと座敷牢に移された


牢の中には 何も無い





格子のはめられた丸い窓一つあるばかり


だけど鼠が届けられなくなって ほっとした



もう幾らも生きられないことは分かっていたし

それは むしろ嬉しいくらいだった


子供の声が聞こえてくる
楽しそうだ


「ほらほら おやつですよ」
従姉の声

見なくてはーそんな思いにせかされるように 柱に縋って窓の外を見た

振り返る幼い子供


その口に 嬉しげに 鼠を咥えていた


ーああ あのコも化け物になってしまう
おかしなものにされてしまう


これ以上見たくなくて 体を支えた柱と一緒に命も手放した

きっと ずっと 悪い夢を見続けているのだ


ただ それだけなのだ

そう 思いながらー







「昔の話」

2015-07-22 13:16:38 | 自作の小説
「・・・逃げて帰ったんよ・・・」と 祖母が笑った

山火事で ある場所が燃えたーとそんなニュースが話題になった時だ

「そう言えば お母さん 昔 縁談があったんですよね」と母が言って


「この娘(こ)は よくそんな古い話を覚えていたこと」と祖母が受けた


「だってお母さん 子供心にもとても怖い話でしたもの」

それは蒸し暑い夏の昼下がり

祖父は兄と弟を連れて釣りに出ていて

母がかき氷を作って 私たちは台所と続いた食堂にいた
祖母は椅子の方が動くのにラクで
私は課題図書を読んで

母は昼食のあと 夕飯の素麺のダシや具をこさえていた

まとめて作っておいたら楽だからと

その続きで かき氷を作ってくれたのだ


父のいない昼間は エアコンかけて食堂で過ごすことが 特に夏は多かった

庭に面した窓の前には揺り椅子があり 食堂の椅子に座っているのに疲れると 祖母はそちらへ移る


続きを促すような私の表情に 祖母は少し苦笑い



「山の上の村にね 大きな屋敷があって そこの若様は近くの村の若い娘たちが 今ならきゃあきゃあ言うような存在だったー」

そんなふうに 祖母は話し始めてくれた


女学校を卒業して村の行事に時々参加するようになった祖母を嫁にほしいーと その若様が言っているー
それで祖母と祖母の両親が山の上の大きな屋敷に招かれた



「あんまり大きなお屋敷で 迷子になってしまってーそしたら廊下の端から おばあさんが こう手をまげて おいでおいでと呼ぶものだからー」

だから だから そちらへ行ってしまったのだ


織の紬の着物を着た老女は 「お腹空いておりますね」とほほ笑んだのだ

ほほ笑んで 何かを祖母の掌に乗せようとした


その小さなものは生きた鼠だった・・・


一歩二歩 後ずさりする祖母に そのおばあさんは言った
「この家の者には これがおやつ このように美味しいものを食べられないような贅沢者では この家の嫁はつとまりませんよ」
そして 鼠を口へするりと入れた
二度三度 噛んだだけで飲み込む

口の端から 鼠の血が零れた




祖母はどうにか 方向転換し そのおばあさんの前から逃れて 両親と連れて行ってくれた人を見つけて
気分が悪いから連れて帰ってほしいと懇願し

「なんとか断ってほしいと 泣いて頼んだわ」


祖母は熱を出したそうだ
その熱は十日近くもひかず 「病弱だから 嫁には出せない」
あのような大きなお屋敷は嫁としてとりしきれる体でも気性でもない

それを理由に断わってもらったそうだ



それから区画整理に暮らす家がかかったりしたこともあって 祖母と家族は町へ出た


その町で祖母は祖父と出会い結婚し 祖父の幾度かの転勤で しだいに故郷は遠のいた




「かき氷が食べられなくなってしまうわね だけど この話には続きがるのよ」と 今度は母


私にとっては ひいおばあちゃんになる人が亡くなり その葬儀で祖母は母を連れて実家へ戻った

母は若い時分の祖母によく似ているそうだ

特に娘時代は生き写しだったとか



墓掃除に墓地へ行った母は見知らぬ男性から声をかけられる

「-さん」

それは祖母の名前だった

「-は 母の名前ですが?」

怪訝げな母に 相手の男は棒立ちになり
「ああ すみません あんまりよく似ておられたものだから お嬢さんでしたか」


と 何処からか走ってきた鼠が 男を恐れるように方向を変えて逃げるように去った


「鼠は とても苦手なんです」と母 「こんなところは母親に似たようです」と続けた



男はとても残念そうに「そうですか」

「おかあさまによろしく」と言って立ち去ろうとする

誰なのか尋ねた母に 男は言った「昔 ふられた男です」



それで母は 後になって祖母に尋ね どうやら縁談の相手だったらしいことを知る

「なかなかにね いい男だったわよ 昔の言葉で白皙の美青年ーかな」



鼠を食べる家
それを祖母は誰にも確認しようとしなかった
それほど 恐ろしかったのだ


もしかしたら そのおばあさんはぼけていたのかもしれないけれど

若い祖母は 怖かったと言う


そのお屋敷のある村一帯が山火事になった

「もう一度行きたいような 絶対に行ってはいけないーそう思うような場所」
と祖母は話をしめくくる



私は古いアルバム取り出して 若い時代の祖母の写真を眺める

昔の言葉で言うならー臈たけた美女

切れ長の瞳は黒目勝ちで



その若様とやらが 嫁にほしいと思ったのも頷ける

でも その若様が もしもどんなにいい男でも 生きた鼠は食べられない


せっかくのかき氷は全部溶けてしまった
残念


京極夏彦著「鬼談」 角川書店

2015-07-22 00:56:29 | 本と雑誌
鬼談 (角川書店単行本)
京極 夏彦
KADOKAWA / 角川書店



「幽談」「冥談」「眩談」に続く「-談」シリーズ第四弾になるそうな


「鬼交」
「鬼想」
「鬼縁」
「鬼情」
「鬼慕」
「鬼景」
「鬼棲」
「鬼気」
「鬼神」


いささかエロスも含むもの しかしそれは妄想とも受け取れる

また奇奇怪怪な問答が続くもの

雨月物語からの再構築された話

異界の生き物ようなー

顔を半分隠して追ってくる女


考えてはいけないモノ


強いがゆえに腕を切られる子供



不幸な事件から狂った父親


口を開けている 何か恐ろしいもの


気が付かなければ 恐ろしくはない

気にして考え出すと どんどんどんどん恐ろしくなる



ならば忘れていけばいい

ならばそれは無いものなのだ



それでも考えるだろう


鬼とは 鬼などとは



京極夏彦ならではの理屈のこねまわし
いや理屈で遊ぶというか


どんと!構えて読めば さほど恐ろしくはありませぬ

書かれたものは 書けるものはー
恐ろしくはないのです

されど回覧板ーと思いつつー

2015-07-21 22:43:24 | 子供のこと身辺雑記
外出しようとしたら 今年の隣保長の近所の奥さんに話しかけられた
「今 Tさんとも話していたのだけど S(私のこと)さんのお隣のBさんとこで いつも回覧板が停まるの
で大事なお知らせも間に合わなくなるから それで 次からBさん抜きで回してくれる
Bさんには私から話しておくから 
Bさんが納得したら もう回さなくていいーってメモを郵便受けに入れておくからー」


Bさんには小学生から幼稚園まで子供さんが3人 仕事もしているようで留守が多い
回覧板や連絡も読まないみたいで 回した回覧板がまた戻ってきていることもある
あと回覧板を子供さんに回させているからか 郵便受けでなくて ぽんと門から地面へ回覧板が投げたように置かれていたりもしてた

回覧板を回す順番は隣保長さんのお宅の位置により 変わるので
春の連絡を読んでないと わからなかったりします
以前は年に一度 引き継ぎで隣保が集まってのお茶会もあったのですが 各家の時間が合わず メモを回すやり方に変わりました

仕方ないから黙って一軒向こうまで 次の家まで回覧板を入れに行ったりもしてたけど

Bさんから回ってくる時には 回覧板が3コ一緒だったり いつの回覧板!?と思う内容のものも


私は黙っていたけれど 他の家で「回覧板が役に立ってない」とか 問題になってたようです

だけど ちょっとご近所なのに悲しいかな

全部で7軒の隣保なのに

これが原因でぎくしゃくしないといいのですが

Bさんが越してきたのは 8年くらい前で 

事情があって更地になったお隣に家を新築してのこと


今年の隣保長さんは はっきりした性格の人なので この8年間の我慢がーでちゃったかな

いつまでも引っ越してきたばかりだから分かりません
なんて言い訳もとおらないし


お隣さん 悪い人ではないのだけれど

かぼちゃ ごろりん

2015-07-21 09:37:36 | 子供のこと身辺雑記
南瓜の葉は大きいからほこってると 何処に実がついてるか分からなくなってしまって^^;

犬が飛び込んだりしたら ああそこに実がー

おお いっちょまえについたんだーと気がついたりします

朝 庭に降りたら
かぼちゃ ごろりん
茎から離れていたので 拾ってきました

もとは埋めた生ゴミから生えて育った南瓜です





やはり生ゴミから生えたじゃがいもを囲むように 南瓜のツルと葉っぱが繁っていて そろそろ掘ったら ジャガイモもできていそうです

湊かなえ著「サフアイア」 (ハルキ文庫)

2015-07-21 00:53:57 | 本と雑誌
サファイア (ハルキ文庫)
湊かなえ
角川春樹事務所




「真珠」
たぬきに似た顔の若くない女と 男が会話している
その場所がどこかは書かれていない

この会話は何のためなのか 多少イライラしながら読み進んでいくことになる
今はたぬきのような顔にたるんだ体つきなのに やたら若いころは綺麗だったの 子供のころはかわいかったのーなどと自慢げに話す女


そして女が放火犯だとわかる
男の素性も

男は 女の仮面をはがすー

しかし男は男の事情もかかえている
それはー幸せなものではないー



「ルビー」
実家の近くに立った特殊な施設
そこで暮らす人間と懇意になった両親と妹
妹の話を聞くうち 姉は気づくことがありー
姉の話から妹も気づく

気づかないほうがーよかったかもしれないー




「ダイヤモンド」
踏まれそうな雀を助けた男のところに 恩返しをしたいと女の姿で雀がやってきた
男には美人の婚約者がいた
雀は 男が騙されていると言う

男を騙した女は死んだ
そして警察が男を呼び出す

雀は本当に存在したのだろうか




「猫目石」
猫を助けてくれた一家に親切ごかしに告げ口する女

家族それぞれの秘密を 教えられた家族はー
女はひき逃げにあって死んだ

自業自得か それともー




「ムーンストーン」
夫の暴力に耐えていた妻は 夫が子供にまで暴力をふるおうとした時ー子供を守ろうとしてー反撃
夫は死んだ
その妻を救う為に現れたのは

彼女が正義感から手をさしのべた女性だった

ー親友とはー 自分が命がけで守りたいと思う人のことだー
学生時代の気持ちのままに 立ち上がり救いにきてくれたのだ




「サフアイア」「ガーネット」
前後編というか 二つで一つの物語
死んでしまった恋人と その恋人がしてしまった仕事
そして残されて生きていく女性の物語



この本を読みながら 目を上げてテレビを観たらー湊かなえさんが出ていた
SMAPの番組です

ふうむーと この{たまたま}な出来事を面白く感じました

「告白」の映画では松たかこさんが演じた 生徒に復習する教師の役を 男性で演じるならば木村拓哉さんにしてほしいと リクエストされてました

他の作家ゲストは 西加奈子さんと又吉直樹さん
SMAPのメンバーを それぞれ文で表現してました 


文庫本の解説は児玉憲宗(こだま けんそう)氏

{湊かなえさんの小説はおもしろいが、後味が悪いという声を聞くことがある。
このせちがらい世の中、ストレスが溜まることの多い日常から、少しだけ離れ、小説の世界に浸ることで、幸せな気持ちになって、元気を取り戻したい、
感動を得て、また明日から頑張ろうという気持ちになりたいというのだ。
そんな人に会うと、すぐさま体育館の裏に呼び出し説教したくなる。
確かに、最近の小説には、清々しい結末、感動的な結末が待ち構えている作品が少なくない。

しかし、よく考えてほしい。人間には喜怒哀楽、さらには、この四文字では表せない複雑な感情を抱く生きものだ。
にもかかわらず、苦しい部分、つらい部分を避け、醜い部分をオブラートに包んでしまったお行儀の良すぎる小説など、なんの意味を持つというのか。
イミテーションの宝石の輝きに魅せられているようなものではないか。

湊かなえさんは、文字だけでは言い表せない人の感情を、物語を通じて表現する作家であり、心の奥底に潜んだ闇の存在を我々に気づかせてくれるのである}


などと 書かれている


作家の作風は変わっていく

著者がこれからどういう作品を書いていくのか それはわからない


定義づけせず 読みたいものを選び 取捨選択していくのも 読み手側の楽しみ


私は毒のある小説も {お行儀のよすぎる小説}も どちらも好きだ


もしも体育館の裏側に呼びだされたら 無視する・笑

自分の本の趣味を説教などされたくない

好きな本を読めばいいと思うから

そんなことで 体育館の裏側へ こそこそ呼び出しはしない

意味がないものなどない
好きか嫌いかーそれだけだ

自分の趣味をおしつけるなんて それこそ「おせっかい」
おおきなお世話

私が興味あるのは これから湊かなえさんが どのような作品を書いていかれるか
そちらのほうだ

「ひきょうなる遺産」2

2015-07-20 20:25:17 | 自作の小説
兄は姿を消した

いっぷう変わった祖父からの兄と私への遺産

それを見にいったあと 兄は志望を変えた

医学部へと

それから獣医をめざすのだと


「考えたら あのワライグマとか達は病気になったら そのまま死ぬしかないんだ どうにかしてやりたい」

兄は あの生き物達に憑かれてしまったようだった


兄が無事に獣医となり 私たちが子供の頃から家の生き物を診てくれた 動物病院に就職した頃 母が死んだ


乗ったバスが事故で 中に小さな子供が残っていて
母はいったんは外に出たのにー その子供を助けに戻って その子供を火からかばって 致命的な火傷を


その小さな子供の両親は同じ事故で死んでて 祖父母という人間たちが母を見舞に

母は苦しい息の下から こう笑った
「麻酔がきいているから お医者様と看護師さんのおかげで痛みはないんです
お孫さんにやけどがなくてよかった 
どうか ご無事に育ちますように」


母はいつもは自分で運転していたのに 眼科の検査がある日で その日に限ってバスを利用した



母は私と兄のことを案じながら亡くなり

父にはこう言った「さっさと再婚なさいね」



すっかり寂しそうになった父


そして母が助けた子供の祖父母は ちょっと大きな会社の会長さんとかで ひどく責任を感じ何かと気にかけてくれて

まるで親戚のような間柄になって


母が助けた女の子は私にやたらとなついてー


その女の子の叔父になる人が 私の夫になった




私が結婚して 一人目の子供が生まれた頃

兄は この世界を捨てた


孫を猫かわいがりするようになった父は 再婚することなく死に


私の子供たちもそれぞれに結婚してー



兄がいなくなってから ずいぶんと長い時間が過ぎた



一枚の葉書が届き 私は兄の死を教えられる


「オンジン シス   」



長い時間 兄は字を教えたのだろう
時間は十分にある



兄は 幸せだったのだろうか




今になれば祖父が兄と私を あの場所の相続人にした意味が分かる気がする


夏休みの宿題も 夏休みが始まる前から片づける計画的な兄はリアリストに見えたけど 本当のところは夢を追う人だった

そして私は 夢物語を追うようで現実も忘れない人間




この二人が必要だったのだ


孫の中の一人を私は あの場所の相続人に決めている

一度 見せておこうと思う

あの場所を

葉書が届いたのだから まだ人の言葉を話す生き物は残っているのだろう


あの場所を訪ねて 兄がどのように生きて死んだのか 話を聞きたいと思う


父もこの世にはいない
夫も死んだ

私も 少しくらいは 夢を追ってみてもいいだろう


あの場所の最後の一匹が死んでしまうまで 見守ってあげたい

近畿もやっと梅雨があがったとか

2015-07-20 20:12:41 | 子供のこと身辺雑記
途端に無茶苦茶暑い!--;

そしてエアコンの効きが悪くなってきています


それも一つでなくて 長男の部屋のとか複数・・;

うわあ・・・・・です


大体 購入が似たような時期
買い替えも同じころーとなるのです







万両の花です
これが赤い真ん丸のかわいい実になります





姑の家の裏庭には栗の木があって その丸い実がぽとんと落ちていました

で この実を見ると 形から阿寒湖のマリモを思い出します



いがいがが茶色になるまで あまり落ちないといいな