少し長めの栗色の髪で長身 精悍な面構えのオランプと金色の髪を結い上げたディアネージュが連れ立って歩く姿は似合っており 人目を引いた
黒髪に黒い瞳のイリアッドは多忙なオランプの束の間の休息を微笑ましく眺めた
ーあの二人はもっと一緒に過ごすべきなのだ
仲の良い様子を見ればダイレントも諦めがつくだろうー
イリアッドもディアネージュに憧れた一人ではあったが 自分に全く脈が無いことも自覚していた
本心を見せないオランプについても 用心深さ・慎重さからきているとそう捉えている
何しろ自身ですらどういう人間か分からない
本当に記憶を失っているのであれば 誰に対しても距離を置きたくなるだろう
王やディアネージュ姫の厚意を悪用し嵩に着ることもない
イリアッドはダイレントのオランプへの反感
いや恐らく憎しみが他人により利用されまいか それを案じていた
元々陽性で単純な人間だったはずのダイレント
捻じ曲がる時には素直に曲がり続けてしまうのか
宮殿の庭園で佇み思いに沈むイリアッドの近くを ディアネージュの侍女のアマーネとマリアッドが通りかかる
「イリアッド様 こんばんは」「こんばんは」
二人は両腕で覆いをかけた篭と盆をそれぞれが持っていた
「やァ こんばんは マリアッド アマーネ その包みはどうしたの」
「姫様が どうせオランプ様は食べはぐれているでしょうから多めの夜食を届けてーって」
慎ましく頭を下げるアマーネの言葉に茶目っ気たっぷりに付け加えるマリアッド
「わたし達はお使いです」
「そう言えば!」イリアッドが少し大きな声をあげる
「こっちも食べはぐれていたな
見た所 量はたっぷりありそうだし 御相伴に預かろう」
アマーネとマリアッドはくすくす笑う
「では 極秘情報を差し上げます
揚げパンは具が3種類 へそに胡桃がのっているのは甘いお菓子ふう
楕円形のは炒めた角切りお肉がたっぷり まあるいのはお野菜と卵
スープも野菜とお肉から
果物も色々 食べやすくむいて切ってありますから」
イリアッドとダイレントとソロクレスが共に成長してきたように アマーネとマリアッドもディアネージュの近くで十年ばかり暮らしている
特にマリアッドは金の髪と緑の眼の持ち主で いざという時にはディアネージュの身代わりができるように少女の時に選ばれた
黒い髪に水色の眼のアマーネもマリアッドも今ではすっかり主人の気性を呑みこんでいる
「オランプ 差し入れをたかりに来たぞ」
部屋に入ってイリアッドがふざけると 食べ物の量を見てオランプは目を丸くしてみせた
「姫にはわたしが十人前の胃袋を持つと思われたか
有難う 重たかったろう マリアッド アマーネ すまなかったね」
「ダイレントも呼ばないか 東の控えの間に詰めているあいつもろくなモノ食ってないぞ きっと」
イリアッドの言葉にオランプも頷く
「アマーネ ダイレント様を呼んできて ここはわたしがお世話してるから」
マリアッドの言葉にアマーネは頬を染める
アマーネは長い事ダイレントに片想いをしているのだ
イリアッドは小声でマリアッドに言う「相変わらず 後押し作戦?」
「あら!何の事でございましょう」
大きな瞳をくるくる動かしにっこりするマリアッド
その明るさはイリアッドの心を和ませる
きびきび動く姿も好ましいものだった
いささかむっつり入って来たダイレントも懐かしい好物に表情を和らげる
「なるほど 独り占めさせるテはないな」
「だろ・・・」と笑うイリアッド
「良かったダイレント殿 これについて教えてもらいたいと思っていたんだ」
オランプの見せた書類にダイレントは眉を潜めたが
「なるほど この通りなら危ないな」と頷く
ダイレントにとって困った事に一人の人間としてのオランプは嫌いな相手ではないのだ
ディアネージュの夫でなければ ディアネージュが選んだ男でなければ
黒髪に黒い瞳のイリアッドは多忙なオランプの束の間の休息を微笑ましく眺めた
ーあの二人はもっと一緒に過ごすべきなのだ
仲の良い様子を見ればダイレントも諦めがつくだろうー
イリアッドもディアネージュに憧れた一人ではあったが 自分に全く脈が無いことも自覚していた
本心を見せないオランプについても 用心深さ・慎重さからきているとそう捉えている
何しろ自身ですらどういう人間か分からない
本当に記憶を失っているのであれば 誰に対しても距離を置きたくなるだろう
王やディアネージュ姫の厚意を悪用し嵩に着ることもない
イリアッドはダイレントのオランプへの反感
いや恐らく憎しみが他人により利用されまいか それを案じていた
元々陽性で単純な人間だったはずのダイレント
捻じ曲がる時には素直に曲がり続けてしまうのか
宮殿の庭園で佇み思いに沈むイリアッドの近くを ディアネージュの侍女のアマーネとマリアッドが通りかかる
「イリアッド様 こんばんは」「こんばんは」
二人は両腕で覆いをかけた篭と盆をそれぞれが持っていた
「やァ こんばんは マリアッド アマーネ その包みはどうしたの」
「姫様が どうせオランプ様は食べはぐれているでしょうから多めの夜食を届けてーって」
慎ましく頭を下げるアマーネの言葉に茶目っ気たっぷりに付け加えるマリアッド
「わたし達はお使いです」
「そう言えば!」イリアッドが少し大きな声をあげる
「こっちも食べはぐれていたな
見た所 量はたっぷりありそうだし 御相伴に預かろう」
アマーネとマリアッドはくすくす笑う
「では 極秘情報を差し上げます
揚げパンは具が3種類 へそに胡桃がのっているのは甘いお菓子ふう
楕円形のは炒めた角切りお肉がたっぷり まあるいのはお野菜と卵
スープも野菜とお肉から
果物も色々 食べやすくむいて切ってありますから」
イリアッドとダイレントとソロクレスが共に成長してきたように アマーネとマリアッドもディアネージュの近くで十年ばかり暮らしている
特にマリアッドは金の髪と緑の眼の持ち主で いざという時にはディアネージュの身代わりができるように少女の時に選ばれた
黒い髪に水色の眼のアマーネもマリアッドも今ではすっかり主人の気性を呑みこんでいる
「オランプ 差し入れをたかりに来たぞ」
部屋に入ってイリアッドがふざけると 食べ物の量を見てオランプは目を丸くしてみせた
「姫にはわたしが十人前の胃袋を持つと思われたか
有難う 重たかったろう マリアッド アマーネ すまなかったね」
「ダイレントも呼ばないか 東の控えの間に詰めているあいつもろくなモノ食ってないぞ きっと」
イリアッドの言葉にオランプも頷く
「アマーネ ダイレント様を呼んできて ここはわたしがお世話してるから」
マリアッドの言葉にアマーネは頬を染める
アマーネは長い事ダイレントに片想いをしているのだ
イリアッドは小声でマリアッドに言う「相変わらず 後押し作戦?」
「あら!何の事でございましょう」
大きな瞳をくるくる動かしにっこりするマリアッド
その明るさはイリアッドの心を和ませる
きびきび動く姿も好ましいものだった
いささかむっつり入って来たダイレントも懐かしい好物に表情を和らげる
「なるほど 独り占めさせるテはないな」
「だろ・・・」と笑うイリアッド
「良かったダイレント殿 これについて教えてもらいたいと思っていたんだ」
オランプの見せた書類にダイレントは眉を潜めたが
「なるほど この通りなら危ないな」と頷く
ダイレントにとって困った事に一人の人間としてのオランプは嫌いな相手ではないのだ
ディアネージュの夫でなければ ディアネージュが選んだ男でなければ