【私設・論説室から】:パラ選手をうちに招こう
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【私設・論説室から】:パラ選手をうちに招こう
「来日するパラリンピック競技選手の皆さんを、家庭にお招きしませんか」。建築家の吉田紗栄子(さえこ)さん(75)が、こんな呼び掛けをしている。お茶を飲みながら、楽しく語らう。「お茶プロジェクト」と名付け、日本の家庭と障害のある外国のアスリートを結ぶ社団法人を立ち上げた。
子どもたちが障害について知ることができ、選手の側も日本人の暮らしを垣間見られる。「偏見や差別をなくす機会にしましょうよ。言語や文化の違いも乗り越えて、共生社会への第一歩に」と思いを語る。
吉田さんは大学三年だった一九六四年、東京パラリンピックで通訳ボランティアを務めた。日赤の「語学奉仕団」だ。代々木の五輪選手村が障害者用に改築されるのを見て、建築の世界に開眼。卒業後、バリアフリー設計のパイオニアになった。
もし、車いすの選手が築十五年のうちのマンションに来たらどうなるだろう? まず玄関に段差がある。廊下の幅もギリギリか。あの狭いトイレは使えないのでは…。
「臼井さんが年を取り、足腰が弱った時、考えなければならないことよ。すべての人に共通する問題。それを考える機会にもなるでしょ」。吉田さんがほほ笑んだ。
プロジェクトの問い合わせは「64語学奉仕団のレガシーを伝える会」へメール=goho.legacy64@gmail.com=で。 (臼井康兆)
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【私設・論説室から】 2018年11月14日 06:10:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。