【解説】:直接会談頼みに限界 米朝首脳合意できず
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【解説】:直接会談頼みに限界 米朝首脳合意できず
【解説】トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による再会談の最大の焦点は、非核化の見返りとして強気の要求を突き付ける正恩氏に対し、トランプ氏がどんな見返りを与え、落としどころを見いだすかにあった。今回、トランプ氏が安易に譲歩せず、経済制裁を維持する姿勢を崩さなかったのは、非核化実現の観点からは評価されよう。だが、米朝協議が今後、一層難航するのは確実で、昨年以来高まってきた非核化の機運が一気にしぼむ危険性をはらむ。
今回の再会談で非核化について合意に至らなかったのは、「完全な非核化」を要求するトランプ氏と、非核化の見返りとして「全ての制裁解除」を求める正恩氏が、要求の核心を脇に置いてまで妥協しても、得られる政治的利益は薄いとの計算が双方に働いたのが一因とみられる。
正恩氏はトランプ氏に対し、寧辺の核関連施設の廃棄など限定的な非核化案を提示したものの、核兵器や核施設リストの申告など、非核化実現に不可欠な行動を取る姿勢は見せなかったとみられ、非核化を巡る米朝の溝は依然深い。
トランプ氏は今後も協議を続けて正恩氏に非核化を迫る構えだが、次期首脳会談は未定。実務協議が滞り、準備不足のまま直接会談で決着を図る手法には限界もある。
問題は、トランプ氏が「北朝鮮が核実験をしなければ、それでいい」と繰り返し発言している点だ。実験中止という目先の成果で満足し、完全な非核化の実現を急がない消極的な姿勢を強めれば、北朝鮮の核保有を結果的に許す事態につながりかねない。 (ハノイ田中伸幸)
=2019/03/01付 西日本新聞朝刊=
元稿:西日本新聞社 朝刊 主要ニュース アジア・世界 【北米・トランプ政権、対北朝鮮】 2019年03月01日 06:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。