【韓国】:文大統領、日韓関係努力アピール 三・一独立運動100年
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【韓国】:文大統領、日韓関係努力アピール 三・一独立運動100年
【ソウル=中村彰宏】韓国は一日、日本の植民地支配に抵抗して一九一九年に起きた「三・一独立運動」から百周年を迎え、各地で記念行事を開いた。文在寅(ムンジェイン)大統領は、ソウル中心部の光化門広場での政府式典で演説し、「朝鮮半島の平和のために日本との協力も強化する」と述べ、日韓関係の改善に努力する姿勢をアピールした。
1日、ソウル市内で開かれた「三・一独立運動」100年の政府式典に参加する文在寅大統領(中)=共同
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文氏は元徴用工訴訟や慰安婦問題など、日韓関係悪化の要因となっている歴史問題について、「力を合わせ、被害者たちの苦痛が実質的に癒やされる時、韓国と日本は心が通じる真の友人になれる」と表現。昨年の演説で慰安婦問題を「反人道的な犯罪行為」としたような直接の批判は避けた。
演説では「新たな朝鮮半島体制」にも言及した。「これからの百年は、過去とは質的に異なる百年になる」と強調。南北の経済協力を進めるとともに、「統一の準備をしていく」と表明した。
ハノイで開かれた米朝首脳会談にも触れ、事実上の決裂に終わった結果を「より高い合意に進む過程だと考えている」と評価。「米国、北朝鮮と緊密に協力し、完全な合意を必ず実現させる」と意欲をみせた。金剛山(クムガンサン)観光と開城(ケソン)工業団地の再開を目指し、米国と協議する意向も示した。
このほか、元慰安婦らが参加した行進や万歳三唱の再現など、さまざまな行事が開かれた。南部の釜山では、市民団体が日本総領事館前で元徴用工像の設置を試みたが警察に阻止され、約百メートル離れた場所に像を置いた。
◆摩擦回避へ批判弱める
【ソウル=中村彰宏】文大統領は演説で、直接的な対日批判はしなかった。元徴用工訴訟や慰安婦問題などで日韓関係は冷え込んでいるが、政策の柱とする南北融和の進展が見通せない中、不必要な外交摩擦は避けたいとの思惑が見える。
「親日残滓(ざんし)の清算は、長く先送りにされてきた宿題だ」。文氏は演説で、国民にそう語りかけた。韓国で「親日」とは、独立運動家を弾圧するなど日本の植民地支配に協力した人たちを指す。日韓関係ではなく、政治的に対立する保守派勢力を意識した国内向けの発言だ。
文氏はその上で、「今さら傷をほじくり返して分裂や葛藤を引き起こそうというのではない。親日残滓の清算も外交も、未来志向的でなければならない」と主張した。
日韓関係について「朝鮮半島の平和のために日韓の関係も強化する」と述べ、関係改善に意欲をみせる一方、「被害者たちの苦痛が実質的に癒やされる時、韓国と日本は心が通じる真の友人になれる」と暗に問題の解決を要求。元慰安婦や元徴用工、世論への配慮もにじんだ。
演説の後半は、「新たな朝鮮半島体制」の構築に向けた意思表明に費やした。経済政策の失敗で支持率が低迷する文政権にとって、南北融和が最重要課題。これ以上の外交問題を抱えることは政権運営上、得策ではない。国民大の李元徳(イウォンドク)教授は「政権にとっても国民にとっても、南北関係が最も大事な問題。日本への関心は薄い」と指摘する。
米朝首脳会談の事実上の決裂で、南北融和はさらに見通せない状況となったが、演説文をつくる段階で、すでに日本を刺激する表現は避けるとの判断があったという。
文氏は演説を通して独立運動の意義を説きながら、南北の経済協力や南北統一にも言及。「南北関係の発展が米国と北朝鮮、日朝関係の正常化につながり、北東アジアの新たな平和安保秩序として広がっていく」と強調した。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 国際 【アジア・朝鮮半島・韓国】 2019年03月02日 06:15:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。