路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【社説①】:優生手術救済 被害者置き去りは駄目だ

2019-03-16 09:01:55 | 【人権・生存権・同性婚・人種差別・アイヌ民族・被差別部落・ハンセン病患者】

【社説①】:優生手術救済 被害者置き去りは駄目だ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:優生手術救済 被害者置き去りは駄目だ

 与野党が主導する形で動いたのはいいとしても、内容は不十分で被害者の納得は得られそうにない。確かな救済につなげるために、各党は法案を修正した上で国会に出すべきだ。

 旧優生保護法の下で障害者らに不妊手術が行われた問題で自民・公明の合同ワーキングチーム(WT)と野党を含む超党派議員連盟が救済法案をまとめた。4月初旬に共同で国会に提出し、月内の成立、施行を目指すという。

 優生手術を巡っては全国の7地裁に計20人の被害者が国家賠償請求訴訟を起こしている。国の行為による被害の救済策は、判決が出てからまとめるのが普通のやり方だ。判決の前に与野党が立場を超えて法案取りまとめを進めたこと自体は評価できる。

 問題は中身だ。盛り込まれた救済策は腰が引けている。

 第一に、誰が被害者に謝罪するかの問題だ。法案には「われわれは、それぞれの立場において、真摯(しんし)に反省し、心から深くおわびする」とある。「われわれ」は誰なのか、はっきりしない。

 被害者はかねて国による謝罪を求めている。手術が議員立法に基づき行政主導で進められた経緯を踏まえれば、国の謝罪を求めるのはもっともだ。

 与党WT座長の田村憲久自民党政調会長代理は「『われわれ』の中には国会と政府が色濃く入っている」と言う。ならばはっきり「国と国会」と書くべきだ。

 第二に補償の金額だ。同様の手術を国民に対して行ったスウェーデンの例を参考に、320万円の一時金を支給する。

 スウェーデンの補償は20年ほど前のことだった。他国の過去の例を今に適用するのは無理がある。

 強制的に手術を施され、子どもを持てない体にされた苦しみは、金で償うことはできない。それでも、政府と国会の誠意を感じてもらえる金額にすることは必要だ。被害者は裁判で1千万円以上の賠償を求めている。

 法案にはほかに、▽旧法の違憲性に触れていない▽被害の認定機関が厚生労働省に置かれ、第三者機関になっていない▽5年の期限がある―といった問題がある。このまま法案の提出、採決と進むようでは、国会は被害者を改めて裏切ることになる。

 早ければ5月にも仙台地裁で最初の判決が出る見通しだ。判決が旧法の違憲性を認め、賠償でも被害者に応えることも考えられる。与野党は裁判の行方を見守りながら法案見直しを進めるべきだ。 (3月16日)

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 ニュースセレクト 社説・解説・コラム 【社説】  2019年03月16日  09:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:NZ銃乱射 非道な犯罪の背景に何が

2019-03-16 09:01:50 | 【事件・未解決事件・犯罪・疑惑・詐欺・闇バイト・旧統一教会を巡る事件他】

【社説②】:NZ銃乱射 非道な犯罪の背景に何が

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:NZ銃乱射 非道な犯罪の背景に何が

 ヘイトクライム(憎悪犯罪)とみられる事件がニュージーランドで起きた。

 南島の最大都市クライストチャーチにある2カ所のイスラム教礼拝所(モスク)で複数の人物が銃を乱射した。少なくとも49人が死亡、多数の負傷者が出ている。

 アーダン首相は、過激な思想を持った容疑者による「テロ攻撃」と断定した。警察はオーストラリア人ら3人の身柄を拘束し、うち男1人を殺人容疑で訴追した。非道な犯罪の動機は一体何なのか。解明を急いでほしい。

 金曜日の礼拝の最中で、二つのモスクには子どもを含む300人ほどの信者がいたという。目撃情報では、乱入した容疑者は迷彩服姿でヘルメットをかぶり、自動小銃を発砲した。足に弾倉を備えていたとの証言もある。

 実行犯を主張する男が反移民を訴える74ページの声明文を残していたとされ、使用した車には手製の爆発物が積み込まれていた。身に着けたカメラで襲撃の様子を生中継していた容疑者もいた。計画的犯行なのは明らかだ。

 近年はフランスやドイツ、英国で、移民系の若者や難民保護申請者らによる銃乱射や自爆テロ、トラックで群衆に突っ込むといった事件が続いている。逆に排外思想が広がり、各国でモスクやユダヤ教会堂を標的にした憎悪犯罪も相次いでいる。

 ニュージーランドの人口は480万人で、イスラム教徒は1%ほどを占める。ほとんどがアジア系で、数百人の先住民も交じる。目立つような憎悪犯罪は見られなかったものの、2001年の米中枢同時テロ以降、反イスラムの傾向がわずかながら強まっていたとの指摘もある。

 欧州を中心に、アジアや太平洋の島嶼(とうしょ)国、中南米、中東、アフリカからさまざまな民族が集まる移民国家だ。イスラム教徒も科学や人文の研究、スポーツ、芸術をはじめ各界で活躍している。

 アーダン首相は「犠牲になったのは難民や移民かもしれない。私の心は巻き込まれた人々とともにある」と述べている。事件で社会の亀裂が深まることのないよう十分な配慮を求めたい。

 繰り返される憎悪犯罪が、米政権に象徴される一国主義、移民や少数派の人種に社会問題の要因を押し付ける排斥主義の顕在化と無縁であるとは思えない。

 多様性を認め合い、共存への強い意思を示すことが自由な民主社会を守る道であることを、いま一度確認したい。 (3月16日)

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 ニュースセレクト 社説・解説・コラム 【社説】  2019年03月16日  09:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:「平成」公文書 公開延期は密室性高める

2019-03-16 09:01:40 | 【公文書・国民の知る権利・国民共有の知的資源・情報公開・権力者による隠ぺい】

【社説①】:「平成」公文書 公開延期は密室性高める

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:「平成」公文書 公開延期は密室性高める

 秘密主義を押し通すつもりなのか。

 1989年1月に元号を「平成」に改めた際の過程を記した公文書の公開が、延期される見通しになった。

 本来は3月末が保存期限で、4月には原則公開されることになっていた。政府は5月1日の改元への影響を懸念し、1年以上先送りする方針という。

 公文書管理法施行令などで、公文書の保存期間は「最長30年」とされる。保存期限を過ぎた文書は国立公文書館などに移され、個人情報や国の安全性に関わる文書以外は原則公開される。

 ただし、所管する行政機関の判断で、廃棄や保存期間の延長も選ぶことができる。

 新元号は4月1日に閣議決定され公表される。その時期に前回の詳細な経緯が明らかになれば、静かな環境での元号選定作業に影響を与える可能性があるとする。

 前回の選定過程の大部分は分かっていない。考案者も明らかになっておらず、どんな論議がされたのかも不明だ。

 それなのに政府は今年2月、平成改元時の手続きを踏襲して新元号を選定すると決めている。前回の選考過程を第三者が検証しないままでは、前例踏襲を決めた根拠を国民が知ることはできない。

 本来は政府が今回の選定手続きを決める前に、前回の過程を公開するのが筋だ。当初の期限通りに公文書を公開するべきである。延長方針は認められない。

 政府が改元を国民不在で進める意向なのは明らかだ。

 新元号の原案に対する意見を聞く有識者懇談会は、公表当日に開催される。時間は40分間程度しかない見通しだ。

 しかも各界から選ばれた参加者には原案が当日示され、その場で意見を求められる。これでは国民の声を聴いたというアリバイ行為にしかならないだろう。

 元号は国民の生活に根深く関わる。前回の決定過程を明らかにせず、今回も密室で決めるのでは、国民の知る権利が侵害される。

 政府の判断で公文書の保存期限を延期できるのも問題だ。

 保存期間中は情報公開請求があっても、政府の判断で開示を拒むことができる。その上、保存期間を自由に延長することができれば、政府に都合の悪い情報を隠し通せる。

 公文書管理法には、行政文書は「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」とある。公開は政府の義務であることを忘れてはならない。 (3月15日)

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 ニュースセレクト 社説・解説・コラム 【社説】  2019年03月15日  09:06:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:ワンセグ裁判 受信料の在り方論議急げ

2019-03-16 09:01:35 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【社説②】:ワンセグ裁判 受信料の在り方論議急げ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:ワンセグ裁判 受信料の在り方論議急げ

 テレビを視聴できるワンセグ機能付きの携帯電話を持つとNHKと受信契約を結ぶ義務が生じる、とする判断を最高裁が示した。

 自宅にテレビがなくても受信料を払う必要が出てくる。影響は大きい。

 ネット時代の受信料について議論を深めなければならない。

 ワンセグとは携帯端末向けのテレビ放送のことである。10年余り前に始まった。基本的に、地上波と同じ内容を放送している。

 受信料を既に払っている人は、ワンセグ端末を持っても新たに契約を結ぶ必要は生じない仕組みになっている。裁判は、自宅にテレビを持たず受信契約を結んでいない人のうち、ワンセグ端末を持つ視聴者に対し、契約を結ぶよう求めてNHKが訴えていた。

 NHKを受信できる「設備を設置」した者は「受信についての契約をしなければならない」―。放送法64条だ。

 裁判では、ワンセグ端末を持つことが「設備の設置」に当たるかどうかが争点になった。

 今回最高裁が一括して判断を示した4件の訴訟のうちの1件でさいたま地裁は、「設置」と考えるのは「無理がある」としてNHKの訴えを退けている。この裁判の控訴審と、他の3件の一審、二審ではいずれも契約義務が認められ、NHKが勝訴した。

 そして今度の最高裁の決定だ。ワンセグ問題に法的には決着がついた形になった。

 ただし、放送法の規定は携帯端末が普及していない時代に定められた。若い人を中心に自宅にテレビを持たない人が増える一方、スマホやカーナビで放送を見る人が多くなっている。放送法の規定が時代に追いついていない。

 政府はこの国会に、番組のインターネット常時同時配信をNHKに認める法案を出している。ワンセグに加えてネットでもテレビ放送を見られるようになる。NHKはネット配信でも受信料を徴収したい考えだ。受信料制度はさらに変容を迫られる。

 ネット時代の公共放送の在り方は世界共通の課題である。ドイツは2013年、受信料制度を廃止して全ての世帯から「負担金」を集める仕組みにした。不払いには罰則がある。税金に近いやり方だ。仮に日本で導入しようとしたら激論になるだろう。

 受信料には制度疲労が目立つ。NHKの公共性を確保しつつ、経営基盤をどう整えていくか。憲法が国民に保障する「知る権利」にも関わる重要な問題である。 (3月15日)

 元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 ニュースセレクト 社説・解説・コラム 【社説】  2019年03月15日  09:05:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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