《社説①》:止まらぬ感染拡大 医療崩壊防ぐ対策早急に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:止まらぬ感染拡大 医療崩壊防ぐ対策早急に
新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない。専門家による分科会が対策の強化を政府に提言した。
今後も「ステージ3」(感染急増)の状況が続く地域では、飲食店の営業時間をさらに短縮するよう要請することや、旅行需要喚起策「GoToトラベル」の一時停止などを求めている。
専門家は現状について「全体として必ずしも新規感染者数を減少させることに成功しているとはいえない」との認識を示している。
政府は提言を受け止め、迅速な対応をすべきだ。これまでのような自治体任せの姿勢は、改めなければならない。
特に厳しい状況に置かれているのが医療機関だ。感染が高齢者に広がった結果、重症者は500人台という高い水準が続いている。
大阪府ではコロナ重症患者用の病床使用率が実質8割を超えた。
北海道旭川市では市内の2病院でそれぞれ200人を超える大規模クラスターが発生し、計50人以上が亡くなっている。
現場では看護師の不足が目立つ。大阪府や旭川市は自衛隊の看護官らの派遣を受ける。ただ最終的な手段であり、派遣可能な人数にも限りがある。
「第3波」を乗り切るには、都道府県を超えた応援要員の派遣を強化する必要がある。日本看護協会が体制作りを進めている。都道府県や医療機関の速やかな協力が欠かせない。
政府は派遣しやすい環境を整えるべきだ。協力する医療機関への財政支援の拡充が求められる。応援要員が新型コロナに感染した場合の補償制度を周知することも大切だ。
派遣によって手薄になるコロナ以外の医療をカバーするため、元看護師の復職支援も必要となる。
医療従事者は命を救う最前線に立ってきた。防護服に身を包んでの勤務は心身の消耗が激しい。感染リスクを恐れ、家族とのふれ合いもままならないという。差別も解消していない。物心両面での支援が重要だ。
政府は本来、冬に備えた体制を万全にしておくべきだった。見通しの甘さは否定できない。医療崩壊を防ぐ対策を早急に講じなければならない。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2020年12月12日 02:02:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。