【社説①】:第3次補正予算 急を要する支援確実に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:第3次補正予算 急を要する支援確実に
政府はきのう、本年度第3次補正予算案を閣議決定した。一般会計の追加歳出は約21兆8千億円で、うちコロナ禍を受けた追加経済対策の経費は19兆円余となる。
来週決める来年度予算案にも10兆円程度の対策費を計上する予定で、政府は1~3月に対応する3次補正と合わせた「15カ月予算」として切れ目ない支援をうたう。
感染再拡大に歯止めがかからず、医療体制が逼迫(ひっぱく)し、医療従事者の疲弊も限界に近づいている。人手不足に苦悩する保健所も多い。
日銀が発表した12月の企業短期経済観測調査(短観)では、今後の景気動向に慎重な見方が強いことが浮き彫りになった。資金需要が高まる年度末にかけて倒産や失業の連鎖が起こる懸念も拭えない。
いま求められるのは、予算を速やかに執行し、支援を必要とする先に滞りなく届けることだ。
だが臨時国会は与党の延長拒否で閉じられ、予算審議が行われるのは年明けの通常国会になる。支援がまたも後手に回りかねない。政府は状況に応じて予備費の残りを使い、臨機応変に対処すべきだ。
補正予算案は、医療機関向けの交付金増額など感染拡大防止策に約4兆3千億円を計上した。
一方、防災・減災のための国土強靱(きょうじん)化や政権肝いりの脱炭素化関連といった、追加経済対策の中でも感染防止や雇用維持とは直接関係のない費用や、防衛費3800億円強も盛り込まれた。
補正予算は本来、災害復旧など緊急性の高い施策を手当てする。今回は感染対策がそれに当たる。
コロナ後に向けた成長戦略や災害への備えは重要だが、補正予算に入れるのは筋違いだろう。そこに投じる国費が感染対策を大きく上回るのも疑問を禁じ得ない。
急を要す施策だけなら予備費で賄える規模であり、補正を編成せずとも迅速に執行できたはずだ。
15カ月予算の名の下に、査定が甘くなりがちな補正を本予算の一部として使い、歳出を膨らませる―。安倍前政権下で繰り返された補正を抜け穴に使う手法まで、菅義偉首相は踏襲するのか。
3度の補正編成で本年度の新規国債発行は112兆円超に膨らみ、過去最大を大幅に更新する。コロナ禍で歳出が増えざるを得ないからこそ、政策の中身を吟味し、無駄を排除することが欠かせない。
これまでのコロナ対策には相次ぐ不正受給や不透明な外部委託が問題視されたり、使い残しが出たりした例もある。政策内容に加え運用面の徹底検証も求められる。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2020年12月16日 05:05:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。