【会見詳報】:緊急事態宣言下でも東京五輪開けるか、食い下がる本紙記者に菅首相は…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【会見詳報】:緊急事態宣言下でも東京五輪開けるか、食い下がる本紙記者に菅首相は…
菅義偉首相は28日の記者会見で、東京五輪・パラリンピック開催の可否を判断する基準となる感染状況について尋ねた質問に答えず、緊急事態宣言下でも五輪開催が可能と考えるか問われても「当面は宣言を解除できるようにしたい」とだけ述べた。いずれも本紙が内閣記者会の幹事社として質問した。
9都道府県の緊急事態宣言の延長を決定し、記者会見する菅首相=28日午後、首相官邸で(小平哲章撮影)
本紙は質問の際、「正面から答えなかったり、曖昧だったりする回答が多く、国民が不満を抱いている。明確に答えるようお願いする」とも要望した。しかし、菅首相から直接的な答えはなかった。宣言下での開催については再質問もしたが、首相は「(感染防止に)配慮しながら準備を進めている」と語るにとどめた。
菅義偉首相の28日の記者会見の詳報は次の通り。
■首相会見の流れ
菅首相の冒頭発言後、内閣記者会の幹事2社(各社持ち回り制)が順に質問した。続いて司会の小野日子内閣広報官が挙手した記者の中から指名し、幹事社を含め計13人が質問した。その後も挙手する記者は残っていたが、1時間1分で打ち切られた。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長も同席した。
■【冒頭発言】
◆感染状況
新型コロナ対策本部を開催し、北海道、東京都、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、岡山県、広島県、福岡県について緊急事態宣言を延長し、6月20日までとすること、埼玉県、千葉県、神奈川県、岐阜県、三重県についてまん延防止等重点措置の期間を延長して同じく6月20日までとすることを決定した。
全国の新規感染者数は、全体として減少に転じる一方、増加傾向にある地域もあり、予断を許さない。関西では感染者数の減少が続いているが、大阪、兵庫を中心に病床は逼迫し、非常に厳しい状況にある。東京では依然としてステージ4の水準にとどまっている。全国の重症者数、死亡者数は高止まりの状況が続いている。
警戒すべきは、変異株の影響だ。英国株の割合は全国で8割を超え、インド株は海外渡航歴のない方からも確認されている。強い感染力を持つとされる変異株への置き換わりが進む中で、実施される対策が感染者数の減少につながるまで、以前より長い時間を必要としている。
度重なる延長は大変に心苦しい限りだが、これからの3週間は感染防止と、ワクチン接種という二正面の作戦の成果を出すための極めて大事な期間と考えている。
◆防止策
感染防止の具体策だが、自治体と協力し、飲食店の時間短縮や、お酒やカラオケの提供の停止などを改めて強くお願いする。長きにわたり、協力をいただいている皆さまに心から感謝を申し上げ、その労苦のほどを深くお察しする。
変異株への監視を強化する。インド、パキスタン、およびネパールからの入国者に対してはこれまで入国後6日間としてきた待機措置を強化し、本日から入国後10日間に延長するなど、水際対策を徹底する。
感染を防止し、収束へ向かわせる切り札がワクチンだ。医療従事者を対象とする接種に加え、ほぼ全国の市町村で高齢者への接種が開始され、接種回数は1日に40万回から50万回になり、これまでに1100万回を超える接種が行われた。全国の大多数の市区町村で7月末までに高齢者の接種を終える予定となっている。
医師、看護師に加えて、新たに歯科医師に接種を行っていただいており、さらに救急救命士、臨床検査技師が接種を行うことができるように、また薬剤師が診断に協力いただけるよう取り組んでいる。国としてはしっかりと財政支援を行う。
1日100万回を目指して日々の接種回数を増やし、まずは希望する高齢者の接種にめどをつける。来月中には予約状況などを踏まえ、高齢者への接種の見通しがついた市町村から基礎疾患がある方々を含めて広く一般にも接種を開始する。
◆東京五輪・パラリンピック
東京五輪・パラリンピック大会については、多くの方々から不安や懸念の声があることは承知している。そうした声をしっかりと受け止め、関係者と協力しながら安全安心の大会に向けて、取り組みを進めている。テスト大会も実施され、万全の感染防止に努めている。
私たちの力を結集すれば、必ずウイルスに勝つことができる。私自身、その先頭に立って、やり遂げていく。改めて皆さまの理解と協力をお願いする。
■【質疑応答】
記者(幹事社・共同通信) 東京都や関西圏に3回目の緊急事態宣言が発令されて1カ月余り。長期化している期間をさらに延長せざるを得なくなった原因や理由をどう考えるか。宣言解除の際、対象地域をまん延防止等重点措置に移行する可能性があるか。
首相 今回の宣言により多くの都道府県で感染傾向が減少に転じており、効果が見られている。しかし、東京の新規感染者数は依然としてレベル(ステージ)4の基準より高い。大阪などでは病床が逼迫している。感染力が強いと言われる変異株の影響も考慮し、十分な時間をとって、知事の要請や専門家の意見も踏まえて延長を判断した。政府としてはまず対象地域で酒やカラオケの停止、テレワーク促進などを引き続き徹底したい。
尾身茂氏 再延長の背景には3点ある。1つは3度目の宣言で人々の慣れもあって協力が得られにくくなっている。2つ目は変異株の影響。3点目は都道府県の時短や重点措置の実施に時間が少しかかってしまった。重点措置発令が非常に重いプロセスになっているので簡略化してほしい。
昨年11月に来日し、菅首相とグータッチを交わすIOCのバッハ会長(左)=首相官邸で
記者(幹事社・東京新聞) 東京五輪・パラリンピックについて、国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ調整委員長は緊急事態宣言下でも開催できると明言した。宣言下でも開催できると考えるか。各種世論調査では今夏の開催に反対が多数だ。国民の命を守ることに責任を持っているのはIOCではなく日本政府なので、国民が納得できるよう感染状況がどうなれば開催し、どうなれば開催しないのか、具体的な基準を明示すべきではないか。正面から答えなかったり、曖昧だったりする回答が多く、国民が不満を抱いている。明確に答えるようお願いする。
首相 五輪についてのさまざまな声は承知している。指摘をしっかり受け止め、取り組んでいる。当面は宣言を解除できるようにしたい。選手らの感染対策をしっかり講じて、安心して参加できるようにするとともに、国民の命と健康を守っていくのが前提だ。
具体的な対策は3点。第一に入国する関係者の絞り込み。当初18万人来日する予定だったが、五輪が5万9000人、パラリンピックが1万9000人まで絞り、さらに削減を要請している。
次はワクチン接種。ファイザーから各選手団に無償提供されることになっている。そして国民との接触の防止だ。海外の報道陣を含めて関係者を組織委員会が管理する宿泊先に集約し、事前登録された外出先に限定し、移動手段は専用のバスやハイヤーに限定する。関係者と一般国民が交わることがないよう動きを分ける。外出、観光することはない。
こうした対策によりテスト大会を国内で4回開催した。大会期間中、悪質な違反者は国外退去を求めたい。3つの対策について組織委、東京都、政府と水際対策をはじめ国民の安全を守る立場からしっかり協力して進めていきたい。
記者(東京新聞) 宣言下でも開催できるか。
首相 テスト大会も4回開催している。こうしたことに配慮しながら準備している。
記者(TBS) 国際社会から五輪開催を危ぶむ声が出ている。
首相 外国人の観客を受け入れないことも諸外国に説明して理解を得たい。
記者(毎日放送) 国民の半分がワクチン接種を完了するのはいつか。
首相 来月中をめどに高齢者接種の見通しがついた自治体から基礎疾患のある方を含めて広く一般の国民にも接種を開始していく。
記者(読売新聞) ワクチン接種が今後、1日(当たり)100万回になる見通しはいつごろか。
首相 現在、1日40万~50万回だが、6月中旬以降には100万回に対応できる体制ができると思う。
記者(テレビ東京) 五輪を観客ありで行う場合、多くの人が東京に集まることが予測されるが、感染拡大のリスクをどう分析しているか。
首相 緊急事態宣言下でも野球やサッカーなど感染拡大防止をした上で行っており、政府はこうした点を十分に学習している。
記者(香港フェニックステレビ) ワクチン接種済みの海外の人たちを優先的に日本への入国を認めたり、ワクチンパスポートを検討したりする考えは。
首相 官房長官の下で全体の調整を行う体制を今、整えており、国内外の議論や各国の状況を収集しながら検討を進めていく。
記者(NHK) 来月20日までの緊急事態宣言の解除に当たり、ワクチン接種の進捗状況を考慮するか。
首相 解除は感染状況や医療の逼迫状況などを踏まえ専門家の意見を聞きながら総合的に判断する。ワクチン接種の進捗状況自体を解除の基準にはしていない。
記者(フジテレビ) ワクチンを接種した人はマスクを着けなくても良いとアナウンスする可能性は。
首相 ワクチンの感染予防効果は現時点で明らかになっていない。接種した人でもマスク着用などの感染防止対策は必要だ。
記者(米ブルームバーグ通信) ポストコロナの経済を考え、半導体の確保にどのような戦略で取り組むか。
首相 半導体の製造能力を確保し、競争力を上げていくために国を挙げて取り組む必要がある。政府の成長戦略の重要な1つとして考えていきたい。
記者(日本経済新聞) 薬剤師によるワクチン接種の可能性は。
首相 臨床検査技師や救急救命士には接種をお願いする方向で調整している。薬剤師には、接種の事前の段取りや予診の協力をお願いしたい。
記者(西日本新聞) 宣言延長や地域追加が繰り返され、国民が宣言を信頼しなくなっている。より強い措置が必要では。
首相 今回はワクチン接種と同時に感染防止策を行うので従来とは違う。二正面の対応で封じ込めたい。
記者(朝日新聞出版) 東京都をはじめ多くの学校で五輪を観戦する計画が組まれている。コロナ禍で子どもたちが学校行事として参加することへの見解は。
首相 児童・生徒の観戦は、コロナ拡大前に大会組織委員会が募集した。感染状況や対策を踏まえて組織委が判断すると思う。
元稿:東京新聞社 主要ニュース 政治 【新型コロナウイルスの感染拡大に伴う施策・東京オリンピック2020・パラリンピック】 2021年05月28日 23:21:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。