路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【東京五輪の「現場」を歩く】:(1)【新国立競技場】開幕直前の今になっても停滞感が続いている

2021-07-28 07:31:10 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【東京五輪の「現場」を歩く】:(1)【新国立競技場】開幕直前の今になっても停滞感が続いている

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【東京五輪の「現場」を歩く】:(1)【新国立競技場】開幕直前の今になっても停滞感が続いている

 本来であれば6万人の大観衆の中、開閉会式と陸上競技サッカー女子決勝が行われるはずだった新国立競技場。しかし、無観客開催が決まり、周囲はADカードを下げた外国人メディアやボランティアなど、大会関係者だけが行き交う異様な雰囲気に包まれている。

 競技場を取り巻く道路も封鎖され、9月30日までは通行止め。近隣住民からも「これは一体、誰のための五輪なのか」という困惑や怒りの声も聞こえてきそうだ。

 7月8日夜に首都圏での五輪無観客開催が決定し、一夜明けた9日。梅雨時のジメジメした空気が新国立競技場周辺を覆っていた。

新国立競技場周辺は物々しい警部(写真)元川悦子
新国立競技場周辺は物々しい警部(写真)元川悦子

 JRの最寄駅である千駄ヶ谷駅から信濃町駅方向に抜ける左手の道は、白い壁に覆われていた。東京体育館ももちろん立ち入り禁止。競技場に近づくと神宮外苑をグルリと囲む都道414号線も、大半は通行止め。通常なら、仙寿院の交差点から日本青年館前は一本道なのだが、「迂回してください」とガードマンに淡々と言われてしまった。

 汗だくになりながら大回りして、ようやく日本オリンピックミュージアム前に出たが、今度は物々しい警備のテントが立っている。

「ADのない方はここまでです」と冷たく言い放たれる筆者の傍らで、外国人記者やスポンサーカードを付けた団体が悠然と中に入り、「TOKYO2020」の大看板が掲げられた競技場の記念撮影をしている。

 五輪ファミリーと一般人の差をいきなり突きつけられた格好だ。

 気を取り直して、明治神宮野球場や秩父宮ラグビー場などがある道を青山方向に進むと、黄色のビブスを着たボランティアが数多くいる。

 が、彼らの仕事は道路を横断する人の手助けと関係者用のシャトルバスの誘導くらい。

 観客が増えた本番は誘導や道案内で忙しくなるはずだったのだろうが、無観客ではやることはない。

「今は暇ですね」と苦笑するスタッフもいたほどだ。

 今回の五輪では運営に関わるボランティアが7万人いて、うち1万6000人が観客の案内、チケットや荷物のチェックに当たる予定だった。

 大会組織委員会は彼らに別の役割を与える意向のようだが、そんな仕事があるのか。疑念は拭えない。

売れ行きは期待できそうにない(写真)元川悦子

  売れ行きは期待できそうにない(写真)元川悦子

 ◆名物ラーメン店も五輪に振り回される

 誤算といえば、近隣のショップも同様だろう。公式スポンサーに名を連ねるアシックスが開発した公式応援Tシャツを販売するファミリーマート各店では特設コーナーを設置。店内に世界各国の旗を天井に装飾するといった工夫を凝らしてムードを高めているが、商品を手に取る人は皆無に近かった。

 「本番に人が集まれば売れる」という勝算もあったのだろうが、観客は来ない。ビジネス的には厳しそうだ。

 ジャパンスポーツオリンピックスクエア内にある公式ショップも客足はまばら。

 筆者が訪れた時間帯は店員が2人だけで、某自治体関係者と目される人のグッズ大量買いの接客に追われ、最近の売れ筋商品を聞くことさえもできなかった。

 実は昨夏にも同店を訪れているのだが、「2020年2月にクルーズ船が横浜港に入ってから10日も経たないうちに人の姿が消えた。4~5月の緊急事態宣言が開けてから再オープンしたものの、お客さんは増えない」とスタッフが嘆いていたのを聞いた。

 その後、五輪本番が近づくにつれて多少なりとも期待感は高まったはずだが、開幕直前の今になっても、停滞感は続いている様子だ。

 大規模イベント時には毎回行列ができる名物ラーメン店・ホープ軒も五輪に振り回された側の代表だろう。

「五輪に向けて外国人客が数多く来ると思って英語や韓国語、中国語などのメニューも用意したけど、全く使っていない」と店員がこぼしていたのをやはり1年前に聞いた。計算していた経済効果も得られず、経営サイドは複雑だろう。

 7月23日の開会式は五輪ファミリーを1000人規模まで減らすというが、競技場内外ともに熱気を欠いた大会スタートになるのは間違いなさそうだ。

元川悦子
著者のコラム一覧
 ■元川悦子 サッカージャーナリスト
1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

 元稿:日刊ゲンダイ 主要ニュース スポーツ 【話題・東京オリンピック2020・パラリンピック:担当 元川悦子】  2021年07月19日  06:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政治の現場】:決戦の足音<11>政権奪還時の緊張感が消失、自民の力量試される時…牧原出・東大教授

2021-07-28 05:17:50 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【政治の現場】:決戦の足音<11>政権奪還時の緊張感が消失、自民の力量試される時…牧原出・東大教授

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治の現場】:決戦の足音<11>政権奪還時の緊張感が消失、自民の力量試される時…牧原出・東大教授 

 
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【政治の現場】:決戦の足音<10>野党は「コロナ収束後の展望」示せ…輿石東・元民主党幹事長

2021-07-28 05:17:40 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【政治の現場】:決戦の足音<10>野党は「コロナ収束後の展望」示せ…輿石東・元民主党幹事長

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治の現場】:決戦の足音<10>野党は「コロナ収束後の展望」示せ…輿石東・元民主党幹事長 

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【政治の現場】:決戦の足音<9>コロナ対策「奇跡生むような政策ない」…古賀誠・自民党元幹事長

2021-07-28 05:17:30 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【政治の現場】:決戦の足音<9>コロナ対策「奇跡生むような政策ない」…古賀誠・自民党元幹事長

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治の現場】:決戦の足音<9>コロナ対策「奇跡生むような政策ない」…古賀誠・自民党元幹事長

 菅首相は華やかさはないが、大変な課題が山積している中、一生懸命苦労してやっている。小泉内閣以降、メディア向けのパフォーマンスが先行したり、いたずらに善悪の対立をあおったりする「劇場型政治」が続いた。決して良いことではない。

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【政治の現場】:決戦の足音<8>首相は「言葉磨き」で的確な説明を…高村正彦・元自民党副総裁

2021-07-28 05:17:20 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【政治の現場】:決戦の足音<8>首相は「言葉磨き」で的確な説明を…高村正彦・元自民党副総裁

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治の現場】:決戦の足音<8>首相は「言葉磨き」で的確な説明を…高村正彦・元自民党副総裁

 菅首相の特性は、国民のために働く、必要なことは断固やるという思いが強いことだ。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政策・連載・政治の現場・「決戦の足音」】  2021年07月24日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【政治の現場】:決戦の足音<7>都議選で際立った立・共「接近」…国民反発でかすむ野党共闘

2021-07-28 05:17:10 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【政治の現場】:決戦の足音<7>都議選で際立った立・共「接近」…国民反発でかすむ野党共闘

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治の現場】:決戦の足音<7>都議選で際立った立・共「接近」…国民反発でかすむ野党共闘 

 党所属衆院議員は10人ながら、次期衆院選では100人擁立の目標を掲げる。党勢拡大に向け、期待を背負うのが新型コロナウイルス対応で全国区の知名度を得た大阪府知事の吉村洋文副代表だ。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政策・連載・政治の現場・「決戦の足音」】  2021年07月23日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【政治の現場】:決戦の足音<6>自公に「パイプ役」不在…連立政権、山口代表「試される場が衆院選」

2021-07-28 05:17:00 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【政治の現場】:決戦の足音<6>自公に「パイプ役」不在…連立政権、山口代表「試される場が衆院選」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治の現場】:決戦の足音<6>自公に「パイプ役」不在…連立政権、山口代表「試される場が衆院選」

 ◆[政治の現場]決戦の足音をまとめて読むならこちら

 「下馬評を完膚なきまでに覆し、痛快なる大勝利を収めることができました」

 7日、東京都内で開かれた公明党の支持母体・創価学会の幹部会。会長・原田稔の「勝利宣言」に、約1000人の学会員から割れんばかりの拍手が湧き起こった。

 その3日前の東京都議選で、公明党は出馬した23人全員が当選を果たした。過去7回の都議選で無敗だった公明だが、新型コロナウイルスの影響で学会の活動が制限され、今回は劣勢が予想されていた。

 「4議席は落とすかもしれない」。党内ではそんな声もささやかれたが、蓋を開けてみれば全員当選。「奇跡だ」。党都本部代表の高木陽介は思わず漏らした。

 だが、次期衆院選を見据えれば、手放しでは喜べない。国政で連立を組む自民党は、過去2番目に少ない33議席と「敗北」。自民が候補を複数立てて共倒れした選挙区で、公明候補が滑り込んだケースもあった。「自民の低迷で、うちが議席を拾った。衆院選は共倒れするかもしれない」(公明幹部)

                  ◎

 新型コロナ対応で批判を浴びる菅政権に、自民で相次ぐ「政治とカネ」の問題や不適切な行動が追い打ちをかける。公明には、自民の危機感が薄いように見えて仕方がない。

 公明が神経をとがらせるのが、「夜の銀座」問題への対応だ。自民では、緊急事態宣言下に東京・銀座のクラブに深夜まで滞在し、離党した衆院議員3人を巡り、衆院選前の復党論が浮上している。公明は同様の問題で、次世代のリーダー候補だった遠山清彦が議員辞職に追い込まれ、次期衆院選の出馬を断念した。

 「選挙前に復党なんてあり得ない。うちの遠山は辞職までしているのに、また問題が蒸し返される」。学会幹部は早期の復党論に不快感を示す。

 当選無効となった国会議員に歳費を返納させるための歳費法改正案を巡っても、自公の足並みは乱れた。「残念だ。次の選挙の前に答えを示すことが大切だった。自民党には一層努力してほしい」。6月9日、自民が通常国会への改正案提出見送りを決めると、法改正を求めていた公明代表の山口那津男は、公然と不満を漏らした。

 強気の公明に、自民からは不満も漏れる。

 山口は都議選後、衆院解散の時期を巡り、自民党総裁選後が「望ましいかもしれない」とテレビ番組で語った。菅内閣の支持率が低下する中、「(新型コロナ)ワクチン接種が進むことで、望ましい選挙の環境になる」というわけだ。これに対し、自民は「総裁選のあり方は自民党自らが決していく」(幹事長代行・野田聖子)と反発。「公明はどこまで口を出す気だ」。党内にくすぶっていた不平が表出した。

                 ◎

 自公で連立政権を組んでから20年超。両党にのしかかるのが「パイプ役」の不在だ。11日に96歳で亡くなった元公明東京都議の藤井富雄は、元自民党幹事長の野中広務らと太いパイプを持ち、連立政権の誕生に尽力した。かつては、藤井のように様々なレベルで両党のつながりがあった。

 官房長官時代から公明に近い首相の菅義偉は、山口に頻繁に電話をかけているが、現場レベルのパイプは細っている。風通しの悪さがネックとなり、新型コロナ対策で公明が連絡不足にいらだつ場面も目立つ。

 様々な問題を抱えつつも、両党の選挙協力は深化している。多くの自民議員にとって、「1小選挙区あたり2万票」とされる公明票は、今や当落を左右する存在だ。逆に、公明が自前候補を擁立する9小選挙区は、自民の支援がなければ当選はおぼつかない。学会の高齢化や若い世代の「活動離れ」で、国政選の公明の得票は低下傾向にあり、自民票への渇望は強まっている。

 「頑張ってください」。6月10日、菅は自民党本部で、公明の小選挙区候補予定者9人に推薦内定書と「必勝」と書いた色紙を1人ずつ手渡した。通常の推薦決定は衆院解散後で、今回は初めての試みだ。出来るだけ早く「自民推薦」のお墨付きを得て、自民支持層への浸透を図りたい公明からの強い要望だった。

 山口は今月12日の講演で、自公連立の本質をこう評した。「連立政権が長続きする理由は選挙協力。試される場が衆院選だ」(敬称略)

 ◆「組織力」の比例 減少傾向

 公明党の組織力の指標とされる比例票は、自民党との選挙協力の影響も受けながら増減してきた。

 衆院選で見ると、1999年に自民との連立政権を開始した後の2000年は776万票、03年は873万票を獲得。小泉内閣の「郵政解散」で与党に追い風が吹いた05年は898万票で過去最高だった。

 09年以降は集票力の低下に歯止めがかからず、直近の17年は697万票にとどまった。700万票を割ったのは、自公連立以降、初めてだった。支持母体の創価学会について、党関係者は「自分自身は公明に投票しても、友人に熱心に働きかけない学会員が増えた」と指摘する。山口代表は次期衆院選で比例800万票への復活を目標に掲げている。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政策・連載・政治の現場・「決戦の足音」】  2021年07月22日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【政治の現場】:決戦の足音<5>不祥事相次ぐ魔の3回生、初の試練…「足元見直せ」叱責受け奔走

2021-07-28 05:16:50 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【政治の現場】:決戦の足音<5>不祥事相次ぐ魔の3回生、初の試練…「足元見直せ」叱責受け奔走

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治の現場】:決戦の足音<5>不祥事相次ぐ魔の3回生、初の試練…「足元見直せ」叱責受け奔走 

 ◆風頼み「チルドレン」

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政策・連載・政治の現場・「決戦の足音」】  2021年07月20日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【政治の現場】:決戦の足音<4>世論の動向は気になるが、麻生氏の意向むげにできず…首相に難題

2021-07-28 05:16:40 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【政治の現場】:決戦の足音<4>世論の動向は気になるが、麻生氏の意向むげにできず…首相に難題

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治の現場】:決戦の足音<4>世論の動向は気になるが、麻生氏の意向むげにできず…首相に難題 

 原則に徹するか、温情を優先させるか――。自民党が不祥事後の対応を迫られている。

 7日夕。元農相の西川公也が党本部を訪ね、幹事長の二階俊博ら幹部の部屋を回った。次期衆院選不出馬を表明した西川は、自らの後継として衆院栃木2区から長男を出馬させるために奔走している。「しっかりやれ」。二階は、かつて二階派の事務総長を務めた西川を励ました。

 西川は昨年12月、大手鶏卵会社「アキタフーズ」前代表から現金を受け取った疑惑で、内閣官房参与辞任に追い込まれた。「政治とカネ」の問題を抱える西川だが、二階派を後ろ盾に強気だ。 

 栃木県連が実施した公募には15人が手を挙げた。その中には、西川の長男で県議の 鎭央やすお もいた。選考委員会は6月2日、最終選考に残った4人のうち、論文や面接審査の合計得点がトップだった県議(当時)の五十嵐清を後継に内定した。長男が落選したことに、西川は猛反発した。

 「地元の声が反映されていない」「事前の世論調査では息子が上回っていた」――。翌3日、党本部に駆け込み、公募に問題があったと二階に訴えた。

 2017年衆院選で落選した西川は現職議員ではないが、現在も二階派に名を連ねる。栃木県から度々上京し、党本部への「ロビー活動」を続け、テレビカメラの前に立ち、公募の不備を訴えたこともある。

 「びた一文譲るな」。派閥の最高顧問で元衆院議長の伊吹文明も、旧中曽根派時代から行動をともにする西川を支援する。伊吹は、鎭央の仲人も務めた間柄だ。

 「刷新」をアピールするはずの後継選びは、泥沼にはまった。派閥同士の争いに発展する火種もくすぶる。

 公募で選ばれた五十嵐は、県連会長で外相の茂木敏充の元秘書だ。茂木は竹下派会長代行でもあり、二階派内では「茂木が五十嵐をねじ込んだのでは」と不信感が広がる。選挙対策委員長の山口泰明は「県連の公募手続きに 瑕疵かし はない」との立場を貫くが、茂木と同じ竹下派で、表立っては動けない。

 二階派は「2人とも無所属で出馬」という落とし所を探るが、県連は不満だ。栃木2区は野党系が2回連続で議席を獲得しており、保守分裂選挙となれば苦戦は免れないからだ。

 「西川さんのところは、どうなってるの」

 首相の菅義偉は6月24日昼、首相官邸で昼食を共にした総務会長で栃木県連会長代行の佐藤勉に、こう切り出した。「複雑なんです。幹事長室で預かってもらっています」。佐藤は言葉少なに答えた。

                  ◇

 「何とか戻してもらえませんかね」

 6月中旬、副総理兼財務相の麻生太郎は、大臣室に陳情に訪れた元官房長官の河村建夫に向かって、逆に頭を下げた。河村は二階派の会長代行を務める。

 麻生の願いは、麻生派事務局長だった松本純(神奈川1区)の復党だ。松本は2月、緊急事態宣言下に東京・銀座のクラブに深夜まで滞在した問題で、大塚高司(大阪8区)、田野瀬太道(奈良3区)とともに離党に追い込まれた。それぞれ竹下派、石原派に属していた。

 党内では、次期衆院選を無所属で勝ち抜き、みそぎを済ませてから復党するのが既定路線とみられてきた。ただ、無所属での出馬は、比例選に重複立候補できないなど不利な条件が重なる。「落選して国会議員でなくなれば、復党どころではない」(麻生派中堅)。松本は自他ともに認める麻生の最側近だ。麻生は、二階や山口ら党幹部に衆院選前の復党を働きかけている。

 新型コロナウイルス対応で我慢を強いられる国民に、早期の復党がどう映るか。「身内に甘い」と批判を浴びるのは容易に想像がつく。「何の罪もない自民党の候補者たちが指弾を浴びる」(元幹事長・石破茂)と、党内では慎重論が根強い。

 「復党は今じゃない」。東京都議選の投開票を控えた6月下旬、菅は周囲にこう語った。徒手空拳で都市部の横浜で強固な地盤を築いた菅は、世論の動向に敏感だ。都議選の「敗北」で復党へのハードルはさらに上がった。それでも、政権の要の一人である麻生の意向は、むげに出来ない。

 党総裁として、どう「後始末」をつけるか。判断を誤れば、手痛いしっぺ返しが待っている。(敬称略)

 ◆自民、何度も苦い経験

 自民党は、不祥事が響き、国政選で厳しい審判を受けた苦い経験を持つ。

 1989年参院選は、消費税導入と重なるように起きたリクルート事件に、宇野宗佑首相(当時)の女性問題が重なり、強烈な逆風が吹いた。30議席減の36議席と大敗し、宇野首相は投票日翌日に退陣表明した。

 92年には、金丸信・元副総裁への5億円のヤミ献金などが発覚した東京佐川急便事件が起きた。政治不信が高まる中で迎えた93年衆院選では、自民は過半数に届かず、選挙後、「非自民」の連立内閣が発足。自民は55年の結党以来、初めて政権の座から転落した。

 「日本の国は天皇中心の神の国」発言などで批判を浴びた森内閣で臨んだ2000年衆院選では、自民は37議席減らし、過半数を割り込んだ。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政策・連載・政治の現場・「決戦の足音」】  2021年07月18日  09:23:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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【政治の現場】:決戦の足音<3>安倍と麻生に接近する岸田、二階にとって「保険」の石破…

2021-07-28 05:16:30 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【政治の現場】:決戦の足音<3>安倍と麻生に接近する岸田、二階にとって「保険」の石破…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治の現場】:決戦の足音<3>安倍と麻生に接近する岸田、二階にとって「保険」の石破… 

 昨秋の自民党総裁選で菅義偉首相に敗れた2人が、「ポスト菅」への足がかりをつかもうともがいている。

 「『3A』そろい踏みであります」

 6月11日、衆院議員会館の一室。岸田派(宏池会)を率いる岸田文雄は、声をうわずらせた。ひな壇の岸田の左右には、「3A」と称される前首相・安倍晋三、副総理兼財務相・麻生太郎、税制調査会長・甘利明が居並んだ。

 岸田が主導した「新たな資本主義を創る議員連盟」の設立総会。「私、1K(岸田)から議連の趣旨についてお話しさせていただきたい」。岸田は軽口をたたき、150人近い議員の笑いを誘った。

 総裁選後に無役となり、発信の場が減った岸田は、議連に並々ならぬ意欲で臨んだ。こだわったのが安倍政権の中枢を担った「3A」の結集だ。岸田は3人のもとに足しげく通い、参加の承諾を取りつけた。安倍とは2週間に1回ほど会っている。 

                 ◇

 前回総裁選から、岸田の戦略は変わらない。安倍の意向が反映される細田派(96人)と麻生派(53人)の支持に狙いを定める。

 岸田は政策面で安倍との距離を縮めようと、腐心している。4月には、安倍が前向きな敵基地攻撃能力の検討を柱にした外交・安全保障に関する提言を公表した。「軽武装・経済重視」の伝統を重視してきた宏池会はハト派色が強い。

 「宏池会の伝統とちょっと違う気がします。誰かに言われたんじゃないですか」。岸田派事務総長代行の三ツ矢憲生は安倍の影を感じ、食ってかかると、岸田は「安倍さんから直接言われたわけじゃない」と否定した。「ハト派路線と安全保障の現実路線は矛盾しない。『中国様様』では、国民は宏池会についてこない」。岸田は周囲に語る。

 麻生との接近の代償に、宏池会の前任会長である古賀誠との関係は冷え込んでいる。麻生と古賀は共に福岡を地盤とし、激しい政争を展開してきた。「出る、出ると言うばかりでは不安だ、という人も派内にいる。信念がなければ政局にしちゃいけない」。5月11日、事務所を訪れた岸田に、古賀は厳しい言葉をぶつけた。

 ツケを払ってまで安倍と麻生に接近する岸田だが、2人が「菅支持」という現実は変わらない。安倍は5月3日のテレビ番組で、菅の総裁再選支持を明言した。大型連休明け、岸田は安倍の事務所を訪ね、「再選支持ということですか」と念を押した。安倍は「うん」と短く返した。

 「『1K』は、孤立のKみたいだ」。険しい道のりに、時に弱音が漏れる。

                ◇

 岸田以上に苦境にあるのが、前回総裁選で3位に沈んだ元幹事長の石破茂だ。

 6月24日、党本部幹事長室。石破は、幹事長の二階俊博に、石破派衆院議員の八木哲也への次期衆院選での「特例」適用を求めた。八木は73歳。3回連続で愛知11区で敗れ、比例復活で当選している。党の内規では原則、次は比例重複の立候補は認められない。石破は「とにかく立派な人なので、よろしく頼みます」と懇願した。

 総裁選で敗れて以降、石破には遠心力が働いている。離脱者が相次ぎ、石破派は17人に縮まった。「面倒見が悪い」と評される石破が幹事長室に駆け込んだのは、さらなる目減りを避ける狙いも透ける。

 石破は、安倍内閣時代は安倍批判を繰り返した。「党内野党」の立場は国民の人気につながった一方、同僚議員からは「無責任だ」と不興を買った。菅内閣では政権批判を封印しているものの、存在感の低下というジレンマに直面している。

 孤立を深める石破には、二階がよすがだ。二階は「自民と敵対しているわけでもない」と石破に情けをかける。とはいえ、二階にとり、石破は、万一の時に担ぐ構えを取れる「保険」との見方が専らだ。7月8日、東京都内のホテルで開かれた石破派パーティー。来賓の二階は言い含めるかのように訴えた。「何より団結が必要だ」

 岸田、石破両派内では、次の総裁選は「1回休み」との声が広がるが、その先の保証はない。岸田63歳、石破64歳。世論調査では、「次の首相」として行政・規制改革相の河野太郎(58)、環境相の小泉進次郎(40)が上位に名をつらねる。(敬称略)

 ◆麻生氏、4度目で勝利

 昨秋の自民党総裁選は、菅義偉首相と岸田文雄・前政調会長、石破茂・元幹事長の三つどもえの構図となった。初出馬の岸田氏が2位となり、4度目の出馬だった石破氏は3位に終わった。

 石破氏は2008年、12年、18年の総裁選も戦った。安倍晋三氏を含む5人が出馬した12年総裁選では、1回目の投票で石破氏が199票で首位となった。だが、過半数を獲得できず、決選投票で安倍氏に敗れた。

 たびたび挑み、総裁の座を射止めた事例もある。01年に総裁となり、熱狂的な支持を得た小泉純一郎氏は3度目、副総理兼財務相を務める麻生太郎氏は4度目の立候補でそれぞれ勝利をつかんだ。

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【政治の現場】:決戦の足音<2>「菅再選」ともに支持なのに、安倍氏と二階氏が水面下で神経戦…

2021-07-28 05:16:20 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【政治の現場】:決戦の足音<2>「菅再選」ともに支持なのに、安倍氏と二階氏が水面下で神経戦…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治の現場】:決戦の足音<2>「菅再選」ともに支持なのに、安倍氏と二階氏が水面下で神経戦…

 割烹かっぽう 料理店での会食は、ウーロン茶の乾杯で始まった。

 6月30日夜。コロナ禍で人出の少ない東京・赤坂で、前首相の安倍晋三と自民党幹事長の二階俊博が向かい合った。二階の腹心で幹事長代理の林幹雄、安倍の出身派閥・細田派の柴山昌彦がそれぞれ陪席した。

 冗舌な安倍に対し、二階はいつものように言葉少なだった。話題は間近に迫っていた東京都議選に及んだ。「小池さんはしたたかだから、何をするかわかりませんね」。安倍は、過労で入院していた都知事の小池百合子の話を振ったが、小池と近い二階は黙ったままだった。 

 安倍と二階は、首相の菅義偉の党総裁「再選」支持で足並みをそろえる。だが、総裁選後の主導権を巡って、水面下では激しい神経戦を繰り広げている。

          ◎

 「あの何とか議連って何なんだ」

 二階は5月下旬、党本部の幹事長室で切り出した。筆頭副幹事長の山口壮が「半導体ですか」と応じ、林が「『反動隊』と言われているやつか」と合いの手を入れた。

 「何とか議連」とは半導体戦略推進議員連盟のことだ。税制調査会長の甘利明が発足させ、5月21日の初会合では安倍と副総理兼財務相の麻生太郎がひな壇に並んだ。安倍政権で中枢を担った3人は「3A」と称される。党内では、総裁選後の人事をにらんだ動きと受け止められた。「首相経験者が2人も出て何をやる気だ。もっと人を集めてやろうか」。二階は息巻いた。

 仕掛けたのが、「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)構想を推進する議員連盟。二階派衆院議員の小泉龍司らが主導する議連で、二階は会長に就き、最高顧問就任を安倍に打診した。

 合わせると党所属国会議員の約4割を占める細田、麻生両派に対し、二階派は「数の力」で劣勢に立つ。安倍を引き込みつつ、自らの影響力を誇示する「抱きつき戦術」だった。首相時代にFOIPを推進した安倍は、就任を了承。6月15日の初会合には、半導体議連の約60人をはるかに上回る約130人が集まった。

 二階の切り札が小池だ。二階と小池は、新進党、自由党、保守党と行動を共にした間柄で、小池は定期的に二階の元を訪れている。都議選の投開票翌日の5日も、二階と党本部で約40分間、話し込んだ。

 二階は「一人で自民を敵に都知事選を戦った。たいしたもんだ」と小池を評する。国政に戻るとの観測が絶えない小池は、二階にはこれ以上ない「カード」だ。8日のテレビ番組の収録では「国会に戻ってこられるならば、大いに歓迎」とエールを送った。 

                     ◎

 「いいんじゃない」

 6月7日、議員会館の自らの事務所で、安倍は、選択的夫婦別姓の慎重な議論を求める決議文に目を通すと、満足そうにうなずいた。5月下旬には、性的少数者(LGBT)への理解増進法案の党内了承を阻むよう、元地方創生相の片山さつきらに発破をかけた。

 安倍の事務所には今、議員や官僚らがひっきりなしに訪れている。持病の悪化で首相を退いたが、体調はすっかり回復し、精力的な活動が目を引く。

 安倍には、じくじたる思いがある。昨年の総裁選では、細田、麻生、竹下の3派がそろって菅支持を表明し、総裁選の雌雄を決した。だが、菅政権の「生みの親」の評は、真っ先に支持を打ち出した二階にさらわれ、人事でも二階派が厚遇された。

 半導体議連の発足をはじめ、今回は積極的に仕掛けている。「総裁選は昨年やったばかりだ。菅氏が首相を続けるべきだ」。5月3日のBS番組で早々に再選支持を表明。5月下旬には、麻生と都内で会食し、「我々で作った菅政権を支えないといけない」と確認した。

 茂木敏充(外相)、加藤勝信(官房長官)、下村博文(政調会長)、岸田文雄(前政調会長)――。月刊誌で「ポスト菅」候補を列挙してみせる姿には、キングメーカーとしての自負が見え隠れする。

 不安材料もつきまとう。「桜を見る会」の問題で、市民団体などが安倍の不起訴について、検察審査会に審査を申し立てていることだ。

 安倍と二階。その危うい力の均衡の上で、菅は政権運営を続けている。(敬称略)

 ◆「キングメーカー」絶大な力

 自民党の総裁選びでは、派閥の力を背景に絶大な影響力を持つ「キングメーカー」の意向がたびたび決め手となってきた。代表的な例が、田中角栄・元首相や金丸信・元副総裁だ。

 田中氏は金脈問題で首相を退いた後、最大派閥の田中派から総裁・首相を出さず、大平正芳、鈴木善幸、中曽根康弘の各首相の誕生を主導し、「闇将軍」と呼ばれた。田中派を飛び出した竹下登氏は、自ら竹下派を創設。首相退任後、同派は他派閥の宇野宗佑、海部俊樹、宮沢喜一の各氏を首相に押し上げた。竹下派会長だった金丸氏は「政界のドン」の異名を取った。

 2001年に首相を辞任した森喜朗氏は、森派(現・細田派)のオーナーとして力を保持。派内から小泉純一郎、安倍晋三、福田康夫の各氏が3代続けて首相に就いた。

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【政治の現場】:決戦の足音<1-2>欠け始めた「菅軍団」、政権運営は二階・安倍・麻生頼み

2021-07-28 05:16:10 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【政治の現場】:決戦の足音<1-2>欠け始めた「菅軍団」、政権運営は二階・安倍・麻生頼み

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治の現場】:決戦の足音<1-2>欠け始めた「菅軍団」、政権運営は二階・安倍・麻生頼み 

 菅義偉首相は絶句した。

 5月24日、東京・赤坂の衆院議員宿舎の一室。向き合う国家公安委員長・小此木八郎の口から、予想だにしない言葉が出たためだ。「横浜市長選に出馬します」。小此木は、菅が旗振り役を務めるカジノを含む統合型リゾート(IR)の横浜誘致を「取りやめる」とたたみかけた。「そうか、分かった」。長い沈黙の後、菅はようやく絞り出した。

 菅は、小此木の父で元通産相の彦三郎の秘書として政界に入った。菅と小此木の付き合いは45年を超す。昨年9月の自民党総裁選では、「兄弟分」として信頼する小此木を菅陣営の選挙対策本部長に据えた。

 無派閥の菅は、小此木や行政・規制改革相の河野太郎ら神奈川県選出の議員に加え、衆院の初当選同期組と無派閥議員を頼ってきた。その「菅軍団」は今、くしの歯が欠けたようだ。

 総裁選で選対事務局長として奔走した同期組の元農相・吉川貴盛、菅支持の無派閥グループをそれぞれ主導した元法相の河井克行、前経済産業相の菅原一秀。3人とも「政治とカネ」問題で議員辞職に追い込まれた。

 菅が「山ちゃん」と呼んで信頼する同期の党選挙対策委員長の山口泰明も6日、次期衆院選に出馬しないことを表明した。山口が菅に近い議員に引退を伝えると、「菅さんはどうなるんだ」とその議員は落胆した。

                 ◎

 党内基盤が 脆弱ぜいじゃく 化する菅は、党実力者への傾斜をますます強めている。

 「行ってきます」

 6月10日午後。先進7か国首脳会議(G7サミット)が開かれる英国への出発をこの日夜に控えた菅は、自民党本部4階の幹事長室を訪れた。座ったまま出迎えた幹事長の二階俊博は「水分補給をちゃんとしなきゃ」と、上機嫌で地元・和歌山県産のスイカを振る舞った。菅は、同席していた国会対策委員長の森山裕、幹事長代理の林幹雄とともに、スイカにかぶりついた。

 昨秋の総裁選で、菅は二階、森山、林にいち早く出馬を伝え、支持を得た。二階は「菅首相の生みの親」となり、菅はこの3人と赤坂の議員宿舎で月に1回は会合を開いている。 

 「会うのが何より大事だ」。そう繰り返す二階に配慮し、菅は英国から帰国した翌日夜も宿舎で会った。「各国首脳と自然と人脈ができました」と手応えを伝えると、二階は「ご苦労さん」と顔をほころばせた。

        ◎

 二階とともに、菅が軸足を置くもう一方が、前首相の安倍晋三、副総理兼財務相の麻生太郎による「A連合」だ。安倍が事実上、率いる党内最大派閥の細田派(96人)と麻生派(53人)を足すと、自民党議員の4割近くに達する。政権運営の安定には、2人の支持は欠かせない。二階との違いは、2人が政策的な結果を求めることだ。

 6月上旬、菅は1通のメモを手にした。そこには、安倍の外交に関する分析や助言が記されていた。菅は6月3日、衆院議員会館の安倍の事務所に足を運び、G7サミットに向け、30分にわたって教えを請うた。安倍は欧州各国の中国への姿勢の違いなどを解説し、言い足りない部分を人を介してメモで伝えた。

 菅はG7で、各国首脳に働きかけ、首脳宣言に台湾問題を明記させることに成功した。安倍と麻生がこだわった問題で、麻生は「菅の功績だ」と評価した。

 ただ、辞任した小此木の後任人事では、麻生への配慮が勇み足となった。菅は後任の国家公安委員長に、麻生派で同期の元科学技術相・棚橋泰文を選んだ。ところが、麻生派が推しているのは入閣経験のない別の人物で、麻生は菅からの連絡に戸惑いを隠せなかった。相談できる側近がいない菅の弱点が露呈した。

 菅政権は、二階と安倍、麻生の後押しが、総主流派体制に近い安定を生んでいる。それは、しがらみにもなる。持ち味の剛腕を自在に発揮できる日は来るのか。菅の思いを側近は代弁する。「総裁選と衆院選で勝利すれば、本格的に自分の政権になる」(敬称略) 

                 ◇

 衆院選や自民党総裁選に向け、与野党の動きが激しくなっている。秋の決戦に向けた政局の現場を検証する。

 ◆総裁選 現職敗北は1回のみ

 自民党総裁選の歴史を見ると、現職が圧倒的な強さを発揮している。出馬に推薦人が必要になった1972年以降、総裁選に挑んだ現職首相が敗れたのは1回だけ。78年総裁選で再選を目指した福田赳夫氏が、党員・党友による予備選で幹事長の大平正芳氏に敗れ、本選辞退に追い込まれた。「天の声にもたまには変な声がある」と言い残し、退陣した。

 現職の無投票再選も多い。現職に対抗馬が挑み選挙戦になったのは、78年の福田対大平を含む4回しかない。そのうち99年総裁選は、小渕恵三氏が加藤紘一氏らに勝利。2003年総裁選では、小泉純一郎氏が亀井静香氏らを退けた。最近では18年総裁選で、安倍晋三氏が石破茂氏を破り、3選を果たしている。

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政策・連載・政治の現場・「決戦の足音」】  2021年07月14日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【政治の現場】:決戦の足音<1-1>深夜メール・翌朝は電話で河野を「使い倒し」、聞こえぬ「菅降ろし」

2021-07-28 05:16:00 | 【社説・解説・論説・コラム・連載・世論調査】:

【政治の現場】:決戦の足音<1-1>深夜メール・翌朝は電話で河野を「使い倒し」、聞こえぬ「菅降ろし」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政治の現場】:決戦の足音<1-1>深夜メール・翌朝は電話で河野を「使い倒し」、聞こえぬ「菅降ろし」

 「お前はぐだぐだ言ったけど、俺の言った通りになっただろ」 

 6月下旬、首相官邸の執務室。首相の菅義偉(72)は、新型コロナウイルスのワクチン担当を務める河野太郎(58)に得意げに語った。

 記者会見する河野太郎行政改革担当相=東京都千代田区で2021年7月13日午前11時27分、竹内幹撮影

 河野らの慎重論を押し切り、菅が宣言した「1日100万回」の接種はメドがつき、ワクチン接種は軌道に乗り始めていた。日頃から直言を辞さない河野も、この時ばかりは「おっしゃる通りです」とかしこまってみせた。

 ワクチンに政権浮揚をかける菅は、突破力と発信力に定評のある河野を使い倒している。深夜にメールを送り、翌朝7時に電話を鳴らし、「どうなった」と尋ねる。首相官邸での面会は2か月余で20回。週末や平日夜、東京・赤坂の衆院議員宿舎で直接、指示を出すこともしばしばだ。

 同じ神奈川県選出で初当選同期の2人は、時に激しく言い争う。河野が「注文が厳し過ぎる」と周囲に漏らし、不仲がささやかれたこともあった。それでも、かつて自らの総裁選出馬の推薦人集めに奔走してくれた菅を支えようと、河野は駆けずり回る。

 ワクチン接種で自信を深めていた菅は、4日の東京都議選で厳しい現実を突きつけられた。ワクチン供給を巡る混乱もあり、自民党は「敗北」。「選挙の顔」として菅を不安視する見方が広がっている。

 ただ、「菅降ろし」の声は今のところ、聞こえてこない。河野を閣内に抱えていることが、菅にとって有利に働いている。

 9~11日の読売新聞社の全国世論調査では、次の首相にふさわしい自民党政治家で河野は20%でトップとなり、4%の菅を圧倒した。河野は首相への意欲を隠さない。ただ、菅の9月末までの任期満了に伴う次期総裁選では、菅が出馬する限り、手は挙げない見込みだ。

 国民的な人気を誇る環境相の小泉進次郎(40)も同様だ。菅に目をかけられている小泉は、菅再選を前提に「次の次」以降に照準をあわせる。

 皮肉にも、コロナ禍が「誰が首相でもたたかれる。菅以外に誰がいるのか」との声に力を与えている。幹事長の二階俊博(82)や前首相の安倍晋三(66)ら重鎮が、「菅再選支持」を変える気配はない。熱気なきまま、菅の再選シナリオが前進しているように見える。(敬称略)

 元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 政治 【政策・連載・政治の現場・「決戦の足音」】  2021年07月14日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【東京五輪】:「日本の組織委はうそをついていた」猛暑の五輪、海外コラムニストが批判

2021-07-28 00:01:30 | 【新聞社・報道・テレビ・ラジオ・公共放送NHKの功罪・マスコミ・雑誌】

【東京五輪】:「日本の組織委はうそをついていた」猛暑の五輪、海外コラムニストが批判

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【東京五輪】:「日本の組織委はうそをついていた」猛暑の五輪、海外コラムニストが批判 

 23日に開幕した東京オリンピック(五輪)の連日の猛暑に、アスリートのみならずメディアからも「暑すぎる」と不満の声が上がっているが、コラムニストのダン・ヴェッツェル氏が「日本の組織委員会は天候についてうそをついていた。そして今、アスリートが代償を払っている」と題するコラムをYahoo!Sportsに掲載した。

東京五輪シンボルモニュメント

Olympic monument at Odaiba from Google Maps

2019年秋には新国立競技場の近くにある東京オリンピック

 26日朝に行われた男子トライアスロンのゴールシーンは「まるで戦場のように見えた」と暑さで倒れこむ選手やトレーナーに介助される選手たちの様子を表現。

ノバク・ジョコビッチ(2019年10月2日撮影)ノバク・ジョコビッチ(2019年10月2日撮影)

 開始時間を早朝に設定したにも関わらず、スタート時の気温は30度近くまで上がり、湿度も67・1%あったと灼熱(しゃくねつ)東京の現状を紹介した。その上で、2013年に東京が開催地に名乗りを上げた際に「この時期の天候は晴れる日が多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」と主張していたことを指摘。「穏やか?理想的?」と疑問を呈し、「非常に厳しい。東京に来る前にある程度は話を聞いて覚悟はしていたが、現状は想像以上だった」とのテニス男子シングル世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)のコメントを紹介。多くのアスリートがこの過酷な状況下で競技に出場しているが、不満を抱いたジョコビッチら世界ランキング上位の一部選手から暑さを避けるため試合の開始時間を夜に変更するよう提案が出されたことにも触れている。

 2013年、招致委員会は立候補ファイルで「この時期の天候は晴れる日が多く、かつ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である」と記していた。

 コラムではこの点に言及。「日本は、それがうそであることを知っていました。彼らはここに住んでいます。東京で暮らしながら、真夏を『穏やか』『理想的』と表現する人はひとりもいません」と批判した。さらに東京では温暖化の影響で平均気温が上昇、毎年夏には熱中症で多くの死者が出ていることも紹介。「良い知らせとしては、気候はまだそこまで悪くなっていない」としつつも、64年の前回大会が、涼しい10月に開催されたことは「理にかなっていた」とした。

 過去に自身が訪れた真夏のマニラやバンコク、ジャカルタなどよりも東京は暑いとし、ここよりも暑いところは(世界最高気温を記録した)米カリフォルニア州のデスバレーとエチオピアやケニアなどアフリカ大陸東部しかないと皮肉った。

 一方、気温が高いこの時期に五輪を開催しているのは、放映権を持つ米NBCテレビが北米でアメリカンフットボールやバスケットのシーズンが始まっていないためだとし、高視聴率が期待できるこの時期に開催を設定していることにも疑問を投げかけた。(ロサンゼルス=千歳香奈子通信員)

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 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・東京オリンピック2020・パラリンピック】  2021年07月27日  16:37:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【新型コロナ】:東京都の新規感染の過去最多2848人、五輪期間中に更新

2021-07-28 00:00:50 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【新型コロナ】:東京都の新規感染の過去最多2848人、五輪期間中に更新

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【新型コロナ】:東京都の新規感染の過去最多2848人、五輪期間中に更新

 東京都は27日、新型コロナウイルス感染者が新たに2848人確認されたと発表した。

 過去最多だった1月7日の2520人を大幅に超え、前週火曜日の1387人と比べても倍増。1000人超えは8日連続となった。

 直近7日間平均の1日当たりの新規感染確認数も1762・6人になり、前週比で149・4%。専門家は21日時点で、このまま推移した場合、東京五輪期間中の8月3日に7日間平均が2598人になるとの試算を示していた。

 東京は今月12日から4回目の緊急事態宣言に入ったが、感染力の強いインド由来のデルタ株などによって感染拡大が加速しており、医療提供体制への影響がさらに深刻化している。

 元稿:日刊スポーツ社 主要ニュース 社会 【話題・地方自治・東京都・医療・新型コロナウイルスの感染拡大に伴う患者数の増減】  2021年07月27日  17:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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