《社説①》:ワクチン担当相の人事 「最悪の事態想定」どこへ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①》:ワクチン担当相の人事 「最悪の事態想定」どこへ
「最悪の事態を想定する」との意気込みはどこへいったのか。
岸田文雄首相は3月末で、堀内詔子ワクチン担当相を退任させた。兼務していた五輪担当相の設置期限が切れ、閣僚を1人減らす必要があったためだ。
新型コロナウイルス対策で新設された担当相は、ワクチンの確保や自治体への配分、国民への啓発に加え、省庁間や自治体との調整にもあたる要職だ。感染が収束しない中、司令塔を交代させる人事は疑問である。
五輪担当相の期限が切れることは事前に分かっていたはずだ。にもかかわらず、昨年10月に岸田内閣が発足した際、首相はワクチン担当相と兼務させた。
組閣では女性や若手の抜てきをアピールし、初入閣で政治手腕が未知数の堀内氏を起用した。
だが、オミクロン株が拡大する中、堀内氏は国会で要領を得ない答弁を繰り返し、力量不足を指摘する声が与党からも出ていた。
退任させることを前提に、身内の岸田派から当選回数の少ない堀内氏を登用したのではないか。そもそもポストの重要性を認識していたのか疑わしい。
菅義偉前政権では行動力に期待して河野太郎氏が充てられた。省庁に命じて強引に接種を進めた手法に批判も出たが、ワクチンを重視する意図はうかがえた。
岸田政権では3回目接種の初動に手間取り、感染の「第6波」に間に合わなかった。最悪の事態を想定するどころか、ワクチン戦略が不十分だったと見られても仕方あるまい。
感染の再拡大を防ぐためには接種の推進が欠かせない。「まん延防止等重点措置」は解除されたが、新規感染者数は高止まりし、増加に転じる地域もあるからだ。
ワクチン担当相は松野博一官房長官が兼務することになった。現役世代の3回目接種を進めるとともに、4回目に向けた自治体との調整が急がれる。
だが、内閣の要である官房長官は多忙なポストだ。北朝鮮による日本人拉致や在沖縄米軍基地の問題も担当している。松野氏は「いずれも政権の最重要課題」と話すが、こなし切れるのか。
今回の人事で、ワクチン対応の停滞を招くことは許されない。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月01日 02:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。