《社説②》:がん患者の緩和ケア 誰もが受けられる体制を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説②》:がん患者の緩和ケア 誰もが受けられる体制を
終末期のがん患者の半数以上が、心身の苦痛を感じている。国立がん研究センターの調査で、そんな実態が明らかになった。
亡くなった患者の家族約5万4000人がアンケートに答えた。
「からだの苦痛が少なく過ごせた」「おだやかな気持ちで過ごせた」という患者は、それぞれ4割台にとどまった。からだや精神面の痛みを訴えていた人が、半数を超えるとみられる。
がんに伴う苦痛は、患者の生活の質を左右する。診断時から、薬などを使って緩和するケアを提供することが大切だ。
日本の取り組みは遅れていたが、2006年に成立したがん対策基本法に、緩和ケアの推進が盛り込まれた。
医療従事者向けの研修が始まり、地域の中核となるがん診療連携拠点病院に専門のチームが作られるなど、体制作りが動き出した。
だが、いまだに整備の途上にある。課題の一つが、多様な痛みに対処できる専門知識を持つ医療者が少ないことだ。
がん患者の痛みは、さまざまだ。薬だけでは抑えられないケースや、関節痛、床ずれなど、がん以外が原因の場合もある。これらは見逃されやすい。
うつ状態や不安などの精神的な苦痛を和らげるサポートも、十分とはいえない。
拠点病院とそれ以外の病院で、ケアの内容に格差があることも問題だ。重要性が広く共有されず、ノウハウが行き渡っていない。
最近は、地元の医療機関や自宅で療養する患者が増えている。地域医療全体の底上げが急務となっている。
拠点病院の連絡協議会は、地域での緩和ケアの連携を強化するよう厚生労働省に要望した。
政府は、拠点病院が域内の他の病院を支援したり、患者や家族に地元で受けられるケアに関する情報を提供したりする仕組みを、早急に整えるべきだ。
がんの治療は進歩し、5年生存率が向上している。緩和ケアの重要性は一層増している。
日本では、2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる。痛みに悩む患者を減らすため、誰もが必要なケアを受けられる体制の実現が求められる。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2022年04月08日 02:01:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。